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野生動物との交通事故を避ける秘策とは

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
(写真:アフロ)

先週は二週連続で北海道へ出張だったため、本州とはやや異なる交通環境の中でいろいろな体験ができました。ということで、前回に続いて北海道ネタです。

北海道では「鹿笛」が必須!?

移動のためにレンタカーを借りたのですが、バックミラー付近に見慣れないパーツが付いていることに気づきました。

そして、社内には「鹿笛搭載車」のステッカー。調べてみると、その大手レンタカー会社では、この春から北海道で展開しているすべてのレンタカーに鹿避けのための「鹿笛」を搭載していることが分かりました。

北海道は自然が多く美しい景色が人気の観光スポットですが、一方で野生動物と接触リスクも高いとのこと。

なかでもエゾジカなどの大型動物との接触による被害は大きく、重大事故になるケースもあるのだとか。同レンタカー会社の中だけでも鹿との接触事故は年間30件ほど発生しているとのこと。

そこで、試しに鹿笛を試験導入してみたところ、接触事故発生件数が減少したことから全車導入へと踏み切ったそうです。

▲風圧によって音が鳴る鹿笛
▲風圧によって音が鳴る鹿笛
 ▲「鹿笛搭載車」のステッカー
▲「鹿笛搭載車」のステッカー

動物にだけ聞こえる周波数

鹿笛は走行中の風圧によって音が鳴る仕組み。といっても、音は人間には聞こえない周波数であるため、人間は騒音として感じることはなく動物だけに効果があるのだとか。海外ではDeer Warningと呼ばれるもので、森林地帯の多いカナダなどでは一般的なツールのようです。

基本的に動物を威嚇したり脅かしたりする性質の音ではなく、動物達をその場に立ち止まらせることで衝突リスクを低減するためのものです。犬の訓練用に「犬笛」というものがありますが、これも人間には聞こえない高周波を発するもので原理としては同じようなものかと。

実際に北海道の道を走っていると、キタキツネが餌をもらいにクルマに近づいてくることもしばしば。以前、知床方面をツーリングしたときは、クルマにはねられたとみられる大きなエゾジカが道路脇に横たわっている姿を見て心を痛めました。

開発が進み、かつては人間が立ち入らなかった場所にも道路が通ることで、本来の野生動物の聖域が侵されていると考えると複雑な思いです。

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ワインディングでイノシシに遭遇

私も以前、北海道ではないのですが、静岡県の山中をバイクで走行中にイノシシに遭遇したことがありました。

夕暮れ時、辺りは薄暗くなり始めている中、雑誌の撮影のためスーパースポーツモデルを走らせていました。カーブを抜けて長い直線を加速しているとき突然、山の斜面から転がり出てきたいくつかの塊を発見。

最初は落石か、と思いましたが次の瞬間、それがイノシシの一団と分かりました。口から心臓が飛び出す、というのはまさにこのこと。

とっさのフルブレーキングで前転しそうになりつつ、そのうちの1頭と接触。

けっこうな衝撃にハンドルを取られましたが、何とか転倒は免れました。後で考えるとイノシシは家族だったのでしょう。当たったのはまだ小さな個体で、辛うじて少し回避できたのが幸いでした。

でも、あれが大きな親イノシシや鹿だったらどうなっていたか……。想像するだけでも身の毛がよだちます。ちなみに、そのイノシシ家族はそのまま道路を横切って森の中へと消えていきました。野生は逞しいものだと、妙に感心したのを覚えています。

北海道への旅には、お守り代わりに

件の鹿笛ですが、安いものなら数百円程度から販売されています。両面テープで簡単に取り付けられるし、きっとバイクにも有効なことでしょう。「動物注意」の看板付近は特に速度を落とすなどの気遣いが必要なことはもちろんですが、北海道への旅を考えられているライダーの方々には、お守り代わりにぜひおすすめしたいアイテムかと思います。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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