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【BMWメディア向け試乗会レポート】エンジンによる乗り味の違いを楽しめる、個性が際立つ3台

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
BMW Motorrad メディア試乗会

先頃、富士スピードウェイにてBMWモトラッド主催のメディア向け試乗会が開催された。

今年発表された2017モデルなどは未だお披露目されてはいなかったが、その代わり現行モデルの走りを存分に味わうことができた。

BMWは単気筒から直列6気筒まで多彩なエンジンを揃えた、国産以外では珍しいメーカーでもある。ということで、今回はエンジンレイアウトの違いに着目した、ショートインプレッションをお届けしたい。

F800R

パラレルツイン特有のリニアな扱いやすさが光る

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BMWではロードスターに分類されるミドルクラスのスポーツネイキッドモデル。2015年にマイナーチェンジされた新型は出力を3psアップの90psに、ミッションのギヤ比を変更。フロントフォークが成立から倒立タイプへ、外装も特徴的だった異形ヘッドライトから端正な1灯式が採用されている。

また、ASC(トラクションコントロール)とESA(電子制御サスペンション)を組み合わせたセーフティパック仕様が新たに加えられるなど、ほぼ全面的に見直されている。

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エンジン形式は水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ798cc。シリンダーが横に2本並んだ通称パラレルツインで、回転数とともにパワーが直線的に立ち上がるリニアな出力特性が特徴だ。

振動も少なく回転フィールも滑らかで、スロットルを開けたときのパワーの出方が予測しやすいのも並列2気筒のメリット。つまり扱いやすいエンジンなのだ。エンジンそのものは初期型から変更されていないが、マップやミッションの改良により全域で力強さが増している。

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アルミツインスパーフレームとテレスコピック式フォーク、チェーンドライブなどモーターサイクルとして正統的な車体構成と200kgちょっとのライトウエイトによる、軽快で素直なハンドリングが持ち味。通勤からツーリング、サーキットライディングまで幅広く楽しめて、大型バイクのエントリー層にもおすすめのBMWである。

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S1000XR

スーパーバイク直系の圧倒的な直4パワーが魅力

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最近のBMWでは最も品揃えの厚いアドベンチャーのセグメントに属するロードスポーツモデル。スーパーバイクS1000RRのエンジンとシャーシをベースに、ロングストークのサスペンションと快適装備が与えられたマルチパーパス(多目的)ツアラーと言っていいだろう。

ちなみにBMWでは今までになかった新たなカテゴリーとして”アドベンチャースポーツ”と名付けている。

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エンジン形式は水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ999cc。シリンダーが横に4本並んだ通称インラインフォーで、回転数とともにパワーが2次曲線的に立ち上がる高回転型の出力特性が特徴だ。スーパーバイク直系のテクノロジーが注ぎ込まれたエンジンは、ピーク160psに抑えられてはいるものの、その加速は強烈そのもの。

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よく動く長い脚とも相まって、直線加速ではジェット機が離陸する感覚でス~ッっとフロントが浮いてくる。サウンドも直4らしく甲高いレーシーな響きだ。車体は大柄で重心も高いが、ホイールは前後17インチということで、ハンドリングはロードスポーツ的な俊敏性も兼ね備えている。

電子制御もフル装備で、4種類のライディングモードにダイナミックESA(電子制御サスペンション)、コーナリングにも対応するABSやトラクションコントロール、シフトダウン時にも作動するクイックシフターなど至れり尽くせり。安全・快適でどこでも速い、まさに言葉通りのスーパーマシンだ。

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R1200GSアドベンチャー

溢れ出るトルク、乗り味は見た目以上に軽快

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BMWのアドベンチャー・セグメントの頂点に君臨するフラッグシップモデル。STDモデルのGSをベースに30リットル大容量タンクや大型スクリーン、エンジンガードを装備。ストローク長を20mm延長した前後サスペンションにクロススポークホイールが与えられるなど、高速巡行性能とオフロードでの走破性を一段と高めたアドベンチャーツアラーの王道を行くモデルである。

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エンジン形式は空水冷4スト水平対向2気筒DOHC4バルブ1169cc。2本のシリンダーが対向する形で水平に並んだ通称フラットツイン(ボクサーとも呼ばれる)で、低中速トルクに厚いフラットな出力特性が特徴だ。

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BMWが頑なに守り続ける伝統的なエンジンレイアウトは力強い鼓動感があり、縦置きクランクが故に倒し込み方向への動きは見た目以上に軽快である。

2013年登場の新型から従来の空油冷に代わる空水冷方式となり、ピークパワーも15psアップの125psに。どの回転域からでもアクセルひとつで湧き上がるパワーバンドの広さはそのままに、高回転域での伸び切り感も楽しめるようになった。

空冷時代よりは軽くなったとは言え、260kgに達する車重と900mm近いシート高に加え、懐に鎮座するビッグタンクの存在感はライダーに否応なくプレッシャーをかけてくるが、一旦走り出してしまえば大船に乗った安心感と優越感にどっぶりと浸れる。

乗り心地の良さとオフロードでの走破性もGSより一枚上手。ただ、乗りこなすには相応の腕と体力も求められるだろう。

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今回の試乗を通じて、エンジンレイアウトによって乗り味も大きく変わるものだとあらためて実感。「バイクはエンジンでキャラクターが決まる」と昔から言われているが、それを体で理解することができた。これを知ることで、バイクの楽しさがさらに深まると思う。

皆さんも機会があれば、ぜひエンジンを味わってみてはいかがだろう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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