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どうなる、2017年度のバイク動向!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

2017年もいよいよ本格稼働。ということで今年のバイク動向を大胆予測してみたいと思います。

バイクの使用環境の整備がどこまで進むかに注目

バイクの使用環境の面で変化の兆しが見られます。1980年代から全国で始まったバイクの「免許を取らない、買わない、乗らせない」の“三ない運動“を撤廃する動きがここ数年、各自治体で活発化しています。“三ない運動”はバイク事故の増加を抑える一定の効果はあったと思いますが、一方で「バイク=社会悪」的なマイナスイメージの助長につながった面もないとは言い切れないでしょう。結果として、長期的にみるとバイク市場のシュリンクという現状を招いた遠因にもなっているかもしれません。

「バイクは危ないから青少年から遠ざける」という従来の消極的・短絡的な考えから、「リスクについて学んで正しい乗り方を身に着ける」という積極的な安全教育へ、若年層からの交通教育の徹底へと方向転換すべき時期に来ていると思われます。

二輪の交通教育に取り組む高校も出てきた
二輪の交通教育に取り組む高校も出てきた

100万台実現に向けて正念場の年に

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また、原付二種をはじめとした二輪の免許取得の簡便化についての議論も、昨年に続き今年も続きそうです。

都市部におけるバイク用駐輪場の確保や高速料金の適正化なども含め、2020年の東京オリンピックに向けてこうしたバイクの使用環境の整備がどこまで進むかが注目されます。

業界目標である「2020年までに100万台」を掛け声だけで終わらせないためにも、ファン領域における若者層の取り込みや小排気量車のビジネス利用を活性化させていくことが必須と思われます。五輪まであと3年半。残り時間を考えても、今年は正念場と言えるでしょう。

国産スポーツモデルの巻き返しに期待

▲久々にフルモデルチェンジを敢行した「CBR1000RR/SP/SP2」
▲久々にフルモデルチェンジを敢行した「CBR1000RR/SP/SP2」

今年は国産スポーツモデルの当たり年になりそうです。特に最先端テクノロジーを結集した1000ccクラスのスーパーバイクに注目です。

その筆頭は久々のフルモデルチェンジを果たしたホンダの「CBR1000RR」でしょう。MotoGPマシン「RC213V-S」をベースに開発した総合的電子制御システムを新たに採用し、車体の大幅な軽量化とエンジン出力向上が図られ、ピークパワーは191.76psまで高められています。

さらにクイックシフターやブレンボ製ブレーキ、オーリンズ製電子制御サスペンションを装着した「SP」、そしてマルケジーニ製鋳造ホイールを装着した究極のサーキットバージョン「SP2」が控えています。

また、「サーキット最速」を掲げるスズキのフラッグシップ、「GSX-R1000」に待望のニューモデルが登場します。こちらもMotoGPマシン「GSX-RR」の技術をフィードバックした完全新設計となり、6軸センサーと慣性計測装置によるモーショントラックシステムを導入。

走る、曲がる、止まるを高次元で統合的にコントロールするなど最先端スペックが与えられています。最高出力202ps、重量200kgということで、パワーウエイトレシオは1.0を切る凄まじさです。

▲2016インターモトで発表された最新型「GSX-R1000」
▲2016インターモトで発表された最新型「GSX-R1000」

他にも2016年度スーパーバイク世界選手権王者のカワサキ「ZX-10R」や、鈴鹿8耐でも圧倒的な強さで2連覇を達成したヤマハ「YZF-R1」も含めた、国産の新世代スーパーバイクの巻き返しに期待しましょう。ここ数年来、輸入ブランドの高性能化に対して遅れを取っていた感のある国産メーカーですが、ようやく本来の地力を発揮してくれそうです。

250ccクラスに再ブームの予感

▲2017年4月に発売される「GSX250R」
▲2017年4月に発売される「GSX250R」

もうひとつ、今年の新潮流として250ccクラスの台頭にも注目したいところです。世界的にはスモールモデルに位置付けられるこのクラスが活性化しています。

今年国内デビューを控えているモデルとして、ホンダから最強クォーターの呼び声も高い「CBR250RR」やダカール・ラリーマシンを彷彿させる「CRF250 RALLY」、スズキからはストリートスポーツ「GSX250R」とアドベンチャーモデル「V-Strom250」が予定されています。

また、250cc超になりますが先のEICMAでも発表されたカワサキのマルチパーパス「Versys‐X 300」や、BMW初のスモールネイキッド「G310R」とその派生モデルであるアドベンチャーモデル「G310GS」など、魅力的なスモールモデルが続々投入されるはずです。

250ccクラスは欧州などの先進国では若者向けのエントリーモデルとして、また使い勝手の良い街乗りモデルとして人気が高く、東南アジアではハイエンドモデルとして憧れの存在です。80年代のレプリカブームなど、かつて日本でも一大旋風を巻き起こした“ニーゴー”の復活が期待されます。

▲インドネシアですでに発売開始、国内投入が予定される「CBR250RR」
▲インドネシアですでに発売開始、国内投入が予定される「CBR250RR」

ライダー移籍が気になるMotoGP ウイングレット禁止の余波は…

▲ドゥカティに電撃移籍を発表したロレンソ選手
▲ドゥカティに電撃移籍を発表したロレンソ選手

注目のMotoGP 2017ですが、今年はチーム間での選手の入れ替えが激しく、マシンの完成度に加えライダーとのマッチングの良し悪しがひとつ勝負を分けるポイントになるでしょう。

ホンダは昨年度チャンピオンのマルケスと負傷から回復したペドロサの盤石の体制。ヤマハで昨年ランキング2位のロッシとコンビを組むのは、ドゥカティに電撃移籍を発表したロレンソに代わって昨年スズキでランキング4位を獲得した若手最有望株のピニャーレス。入れ替わりにドゥカティからスズキに移籍してくるイアンノーネの活躍にも期待したいところです。

ウイングレットが全面禁止されるMotoGP
ウイングレットが全面禁止されるMotoGP

また、本年度からはウイングレット(ダウンフォースを得るための小さな翼状のパーツ)が全面禁止になるため、マシンのカウル形状も昨年とはだいぶ変わると予想されます。空力を稼ぎながらダウンフォースを得るためにどんなギミックが登場するのかも興味は尽きないですね。そして、2017ダカールラリーも制して16連覇中のオフロード界の巨星、KTMがいよいよMotoGPクラスに本格参戦するなど楽しみが広がります。3月26日の第1戦カタールGPが待ち遠しいですね。

2017年もバイクに関する様々なニュースを幅広い視点でお届けしたいと思います。

今後ともよろしくお願いいたします!

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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