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日常をスタイリッシュに楽しむために、スズキ「GSX250R」が挑む「新たなテーマ」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
SUZUKI GSX250R

スズキから新型ロードスポーツモデル「GSX250R」が登場、4月17日から日本市場で発売されることになりました。

今週行われた発表会での情報なども踏まえてこのモデルの実像をお伝えできればと思います。

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軸足はあくまで日常域

GSX250Rのプロダクトコンセプトは「街乗りにおける日常的な扱いやすさを持つ、スタイリッシュなスタンダードスポーツバイク」。

これを実現するために、既存のGSR250シリーズの優れたパッケージングを受け継ぎつつ、走りの魅力を高め、フルカウルのスポーティな外観が与えられたとのこと。

つまり、軸足はあくまでも“日常域”にあるわけです。

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スズキのスポーツモデルのフラッグシップと言えば、GSX-R1000を頂点とするGSX-Rシリーズですが、こうしたサーキット性能を重視した戦闘的なモデルとは明確に立ち位置を分けるために、あえてネーミングも「GSX-R」ではなく「GSX」としています。

GSRの良さをさらに引き出したエンジン

エンジンはGSRの水冷並列2気筒SOHC2バルブ248ccをベースに改良を施し、元々持っている低中速トルクを向上。市街地やツーリングでの最適な出力特性を実現しています。

細かい部分ではシリンダーヘッドやピストンの改良によるフリクションロス低減、吸気バルブやカムシャフト形状の最適化、新型スパークプラグの採用などにより、最高出力24ps/8000rpm、最大トルク2.2kgf-mを実現。

表記としてはGSRと同等ですが、実測値としては僅かに上回るスペックを獲得しているとのことです。

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また、クラス最高レベルの燃費性能に加え、燃料タンク容量を15リットルに増やすことでワンタンク500kmを走破する航続距離も実現しています。

モチーフはアメリカンGTカー

多くのユーザーの目を引くのは、やはりスタイリングでしょう。

「市街地をスポーティに駆け抜けるアスリート」をイメージとし、GSX-Rの要素を取り入れた外観としながらも、4輪で例えるなら“スーパーカー”ではなく“アメリカンGTカー”をモチーフにしたデザインでまとめ上げているそうです。

スポーティだが大柄でマッシブ感があり、ホイールベースの長さを生かした安定感のある美しいシルエットにもそれは表れています。開発者の話では「ひと目見てメチャクチャかっこいい!」と思ってもらえることを最優先して作り込んだデザインとのことです。

面発光LEDがフロント周り、リア周りを演出

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ディテールを見回してみると、複雑なレイヤー構造のサイドカウルや、フロントポジションランプとテールランプに用いられた面発光LED、フルLCD仕様の多機能インストルメントパネル、そしてバンク角を稼ぐための異形断面形状を持った伸びやかな2-1エキゾーストシステムなどの装備からもスポーティな高級感が伝わってきます。

ちなみに音質にもこだわり、スポーティかつ心地よいサウンドとしているそうです。

▲リアにも面発光LEDを配置
▲リアにも面発光LEDを配置
▲昼間・夜間でも視認性の高いネガ液晶メーターを採用
▲昼間・夜間でも視認性の高いネガ液晶メーターを採用

スポーティかつ快適なライポジ

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実車に跨ってみましたが、ライポジは大柄でゆったり感があり、ハンドルもセパレート形状ではありますが比較的高めでスポーツツーリングに最適な感じです。

シートは前後が分離したタイプですが、それぞれ適度にクッション性があって疲れにくそう。

シート高は790mmとGSRより10mm高めですが、タンクが絞り込まれているため実際の足着きはGSRより良い感じです。

GSX250Rの真価とは

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今回発表されたGSX250Rは、乱暴な言い方をすれば「GSRの車体とエンジンにGSX-Rの外観を被せたモデル」と言えるかもしれませんが、細かくスペックを見ていくと前述のエンジンの改良以外にもキャスター角がやや立てられ、車重も同じフルカウルのGSR250Fに対して11kgも減量されています。

また、前後サスペンションも専用セッティングが施され、ホイールも新設計の軽量タイプを採用。ブレーキディスクもペタルタイプに強化されるなど細部に至るまで手が入っていることが分かります。

ここまでやるなら、何もGSRがベースでなくてもよかったのでは……という疑問が湧いてきますが、開発陣の考えでは全員一致で「GSRの素材としての優れた資質を生かす」ことになったそうです。それは、扱いやすいエンジンと安心感のあるハンドリング、乗り心地の良さや優れた燃費性能など、すべてのライダーが求めている基本性能の高さです。

一石を投じるモデルとなるか

もちろん、ライバルを凌駕するハイスペックマシンを開発する案もなかったわけではないですが、そこでの開発コストが「価格」に跳ね返ることや、「先鋭化」によってユーザー層を逆に狭めてしまう可能性なども考慮した結果、このコンセプトに行きついたそうです。

Ninja250やYZF-R25、そして国内デビューを控えるCBR250RRなどハイスペック化の一途を辿る250スポーツクラス戦線において、一石を投じるモデルになれるかどうか、GSX250Rの真価が問われることになりそうです。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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