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トライアンフが2017モデル発表会を開催! 伝統的で新しい「ボバー」と「スクランブラ―」が登場!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
トライアンフ2017ニューモデル発表会

今週、都内でトライアンフの2017モデル発表会が開催され、初春より発売される水冷ボンネビルシリーズの2つのニューモデルが公開された。伝統の中に新しさを織り交ぜた、トライアンフのブランド戦略が見えてきた。

■BONNEVILLE BOBBER

ミニマルかつ野性味あふれるホットロッドカスタム

BONNEVILLE BOBBER
BONNEVILLE BOBBER

ボンネビルボバーは1940年代の「トライアンフ ボバーカスタムスタイル」の血統を受け継ぐモデルで、ベースとなったボンネビルT120から不要なパーツをそぎ落とした、ミニマルかつ力強いスタイリングが特徴。

ブリティッシュ・ホットロッド(直線加速を競うゼロヨンレースマシン)をデザインコンセプトに、シンプルなロー&ロングなスタイル、ワイドフラットバー、専用タイプのフューエルタンクにワイヤースポークホイール、幅広のリアホイールなどがフィーチャーされている。

エンジンは T120系の水冷並列2気筒270度クランク1200ccの高トルク型エンジンをベースに、さらにミドルレンジのトルクを増大させることで、カテゴリー最強レベルの加速を実現。スタイリングだけではない走りの実力も備えられた。

一方で現代のマシンらしく電子制御も盛り込まれ、ライド・バイ・ワイヤによる2モード(ROAD、RAIN)の選択が可能。新世代のABSや切替式トラクションコントロールを搭載するなど、安全性とコントロール性もレベルアップしている。

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そして、T120との大きな違いは、古典的なハードテイルスタイルを採用していることだろう。

ハードテイルとは、かつてリヤサスペンションが一般的ではなかった時代のスタイルで、フレームによって衝撃を吸収していた構造。その当時のバイクのシルエットを生かすため、ツインショックではなくあえてモノショックとし、どの角度からも見えない場所(シート下の奥)に設置している。一見すると、リヤサスペンションを持たない古典的なシルエットに見えるようにこだわって作られている。つまり、見た目はクラシカルだが、乗り心地は現代的というわけだ。

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また、ライディングポジション調整式のシングルシートを装備し、ライダーの身長やライディングスタイルにアジャスト可能となる新しい機構も取り入れた。

ファクトリーカスタムを表したブロンズ製1200HTエンジンバッジや艶消しエンジンカバー、ブランドマーク入りタンクキャップなど、上質感あふれるディテールも魅力だ。

▲Bonneville Bobber ジェットブラック
▲Bonneville Bobber ジェットブラック

■STREET SCRAMBLER

スタイリッシュに進化した現代のスクランブラ―

STREET SCRAMBLER
STREET SCRAMBLER

もう一台は昨年発売されたストリートツインをベースに開発された、ストリートスクランブラーである。

スクランブラ―とは、元々は砂漠や荒れ地を走るために改造されたレース車両のこと。そのイメージを現代に再現するために、専用シャーシと長いリアショック、走破性を高める19インチのフロントホイールとメッツラー製デュアルパーパスタイヤ、クロススポークホイールを採用。

スタンディングポジションを可能にするアップライトなワイドハンドルバーが新たに採用されている。

エンジンは高評価を受けているストリートツイン系の、水冷並列2気筒270度クランク900ccの高トルク型エンジンをベースに、さらに低~中回転域のトルクと出力を大幅に向上させ、街乗りや軽いオフロード走行に最適化している。

最も特徴的なのはスクランブラ―の象徴とも言える、車体サイドにマウントされた新設計のステンレス製ツインエキゾーストシステムだろう。ヒートガードを備えたメカニカルなデザインと独特の鼓動感あふれるサウンドが存在感を主張。性能面でも従来の空冷スクランブラ―を上回る走りのパフォーマンスを実現している。

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ロックキャップの付いたエレガントな燃料タンク、Triumphマークとエンジンバッジが光る形状の美しいブラックのエンジンカバー、ユニークなガンメタル仕上げのエンジンバッジ、艶消しアルミ製タンクロゴエンブレムなど、新型ボンネビルシリーズにも共通するプレミアム感も魅力だ。

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また、他のボンネビルシリーズ同様、ライド・バイ・ワイヤによる切り替え式トラクションコントロールや切り替え式ABS、トルクアシストクラッチなどにより安全性とスムーズな操作性を確保。

防犯性を高めるエンジンイモビライザーやシート下USB充電ソケットなどユーティリティも充実させるなど、現代にマッチした仕様となっている。

▲STREET SCRAMBLER コロシレッド&フローズンシルバー
▲STREET SCRAMBLER コロシレッド&フローズンシルバー

往年のカスタムスタイルを現代に再現する手法がトレンドに

トライアンフモーターサイクルズジャパンの野田一夫社長が自らプレゼンテーション
トライアンフモーターサイクルズジャパンの野田一夫社長が自らプレゼンテーション

「ボバー」や「スクランブラ―」しても、元々は若者たちが生み出したカスタムスタイルが源流となっている。

ロンドンのACECAFE(エースカフェ)に夜な夜な集まった若者たちが熱狂したカフェレーサーなどと同様に、そぎ落とし系の「ボバー」はドラッグレースの原型となるホットロッドに影響を受けているし、「スクランブラ―」はロードバイクを不整地に持ち込んで腕比べをしたスクランブルレース(と呼ばれた)用の改造車から生まれた。

こうした往年のカスタムスタイルを現代に再現する手法によって、50年代~60年代のカルチャーを懐かしむエンスーな熟年世代や、逆に新鮮味を感じる感性豊かな若者世代へアプローチする手法が、最近のモーターサイクル業界のトレンドとなっている。

その意味で、トライアンフは圧倒的なネームバリューを持つ「ボンネビル」ブランドを持っていることは有利だ。そして事実、その伝統の名を冠したモデルラインを幅広く展開することでブランドイメージをさらに高める、巧みな戦略によって世界中で業績を伸ばしている。

新しい3気筒スポーツモデルの展開も含めて、今後もトライアンフの動きに注目していきたい。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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