「実現した夢」2017大阪・東京モーターサイクルショーから見たトレンドとは…
先週末に大阪、そして今週末は東京で開催されている国内最大級の2輪展示会、モーターサイクルショー。各メーカーから市販予定の最新モデルや近未来のコンセプトモデルが煌びやかに会場を彩りキャンペーンガールが笑顔で華を添える、バイク愛好家にとっては心ときめく年に一度のビッグイベントだ。
そして今年の出展内容を俯瞰してみて、ふと頭に浮かんだ言葉、それは「実現した夢」である。
未来が現実になった最新スポーツモデル
我々ライダーは常に夢を見ている人種だ。
ひと昔前、いやふた昔前は、市販バイクが400km/hを超える速度で走るなど到底考えられなかったし、2スト時代のWGP 500ccマシンのパワーが150馬力程度だった頃、たとえ200馬力のマシンが作れたとしても、人間が乗りこなせるはずはないと思っていた。
それが現在では、カワサキのH2Rが400km/h超えのレコードを公道であっさりと達成するし、ホンダのRC213V-Sは“公道を走れるMotoGPマシン”という夢を本当の形で実現してしまった。これが昨年までの話だ。
ただ、これらのウルトラマシンは価格的にも実用面でも、一般ライダー目線からは遠い存在だった。しかし、昨年から今年にかけて国産メーカーを中心に、現実的な価格と性能を備えたスーパースポーツが次々に登場してきた。
ホンダの新型CBR1000RR/SPや、スズキの新型GSX-R1000/Rなど、MotoGPマシン開発で培われた電子制御テクノロジーとノウハウが投入された最新スーパースポーツは、200馬力のパワーとレーシングマシン並みの性能を一般ライダーが楽しめる領域にまで広げてきた。
もちろん、こうした新世代のマシンの先鞭をつけたヤマハ・YZF-R1や、カワサキ・ZX-10R、そしてBMW・S1000RR、ドゥカティ・1299パニガーレ、アプリリア・RSV4など輸入車勢も含め、最新の電子制御の力によって、超人でなくてもこうしたスーパーバイクを安全に走らせることができるようになってきたのだ。
つまり、これは「実現した夢」なのだ。
それは、オフロードの分野でも同じだ。かつては極一部のエキスパートしか操ることを許されなかった大型アドベンチャーモデルも、電子制御技術やエンジンと車体設計の進化により、一般ライダーでもダート走行を楽しめるようになってきた。
DCTを装備したホンダ・新型アフリカツインや、電子制御サスペンションとコーナリングABSを備えたKTMの新型アドベンチャーシリーズを始め、BMW・R1200GS、ドゥカティ・ムルティストラーダ1200などもその例だろう。
あの頃への憧れを形にしたネオクラシック
もうひとつのトレンドとしては、ネオクラシックの台頭が挙げられる。近年、行き過ぎた性能主義への反動から、“古き良き時代を懐かしむ”傾向に拍車がかかり、世界中でネオクラシックブームが巻き起こっている。
ネオクラシックとは、50年代~70年代のバイクのデザインを現代風に解釈し、当時のトレンドや若者文化のテイストを取り入れた、ライフスタイルに寄り添ったモデルたちである。
こうしたモデルに強いのは、やはり伝統とカルチャーに歴史を持つ海外勢だ。
BMWは、新たなヘリテイジモデルとして、70年代のフラットツインを現代に再現した「BMW R nineT Pure」と「BMW R nineT Racer」という美しいシリーズを展開。
ドゥカティは、かつての名車、900SSのコンセプトを蘇らせた「SuperSport /S」の他、世界的ブームである「スクランブラ―」をベースにした、新シリーズ「Scrambler Cafe Racer」や「Scrambler Desert Sled」などを追加発表している。
トライアンフの「ボンネビルボバー」や「ストリートスクランブラー」を含めた新型クラシックシリーズもその一例だろう。
そしてイタリアの老舗、モト・グッツィからもV7シリーズ誕生50周年を記念した、「V7 III」の特別モデルが発表される。
かつての名車や憧れのモデルを今の技術で蘇らせられたら、と熱心なバイク好きなら、一度は思ったことがあるはず。古き良き時代へのノスタルジーや、憧憬を形にしたのがネオクラシックである。その意味では、これらもまた「実現した夢」なのだ。
是非この週末は、夢の欠片を探しに東京モーターサイクルショーに出かけてみてほしい。