Yahoo!ニュース

間もなく(9月2日)日本でもサービス開始。Netflixを試してみた!

斉藤博昭映画ジャーナリスト

日本では10月10日公開の『マイ・インターン』という映画に、こんなシーンがある。

アン・ハサウェイのヒロインが、ベッドの横にいる夫に話しかける。

日本語字幕では「映画でも観る?」になっているのだが、実際は「Netflixでも観る?」と聞いているのだ。

それほどアメリカでは、「家で映画を観る」といえば「Netflix(ネットフリックス)」、が常識となりつつある。

既存サービスとの大きな違いはある?

現在、世界50カ国で6500万人もの会員を擁するNetflixだが、基本の使い方は、日本でも利用者が広まっているHuluU-NEXTdTVなどと同じ。月額料金を払えば、PCやスマートフォンなどインターネット接続デバイスでコンテンツが基本的に見放題というシステムだ。今回、9月2日の日本でのサービス開始を前に、Netflixを先行体験する機会をいただいたので、早速、試してみる。

選んだ作品を中断し、時間をおいても、その中断した箇所から再生され、連続ドラマの場合も、次のエピソードが自動的に再生される。画面下部のタイムコードを表示すると、日本語字幕の位置がずれる…などなど、基本仕様はHuluと変わらない。使いやすさの点で、目新しさはないかもしれない。逆に言えば、Huluなどのユーザーは、違和感なくNetflixも使えることになる。試しに同じ作品(『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』)で比較してみたところ、画質、音質もHuluとNetflixはほぼ同等。字幕も同じ原稿を使っている。ひとつ違うのは、タイムコード表示時に字幕位置がずれる際、英語と日本語の字幕が同時に出るシーンで、Huluは両者が重なって英語が見えなくなるのに対し、Netflixは位置がずれて両者が見える点だ(細かい部分ですが…)。

そうなると比較になる対象は、提供作品の量と内容である。海外作品に強いHulu、日本のコンテンツが揃い、料金も安いdTV、数が豊富で、アダルト作品や電子書籍も配信されるU-NEXTと、それぞれの料金システムや、使用するデバイスによって、ある程度の棲み分けがある。ではNetflixはどうなのか?

オリジナルドラマの訴求力がカギに?

オレンジ・イズ・ニュー・ブラック
オレンジ・イズ・ニュー・ブラック

膨大だといわれるNetflixの提供コンテンツ数だが、日本で配信される具体的な数や、料金システムは、まだ発表されていない。というわけで、現時点でNetflixが強くアピールしているのが、オリジナルコンテンツ。まず以前から気になっていた「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」を視聴してみた。2013年にシーズン1が全米で始まり、すでにシーズン4の製作も決まっている人気ドラマだ。日本ではamazonのインスタント・ビデオでシーズン1を観られるが、シーズン1全話のパッケージを観るとなると、高画質で6240円、標準画質3120円かかる。

「オレンジ〜」は、簡単に言ってしまえば、女子刑務所ドラマである。脱走モノなど男性刑務所を舞台にした映像作品は多数あるが、女性となると『ブロークダウン・パレス』や韓国の『親切なクムジャさん』、カルト的な女囚映画など、意外に少ない。最近は作られなくなったが、日本では泉ピン子が主演する「女子刑務所東三号棟」シリーズがある。ちょっと下世話な感じが魅力だった同シリーズだが、この「オレンジ〜」も、いい意味で、その下世話感が満点! のっけから女同士の嫉妬やいじめ、派閥争いが怒濤のように展開し、女子刑務所モノを観たい人への「つかみ」は完璧。刑務所内に渦巻くドロドロのドラマに、ヒロインの恋人も絡む刑務所外のドラマは、「次にどうなる?」と期待感を過剰にあおる作りで、エピソードが終わるたびに「次のエピソード開始まで、あと何秒」と表示されると、ついつい先を観たくなる。「オレンジ〜」の場合、LGBTのトピックを、センセーショナルではなく、真摯に正面から扱っている点も評価したいところ。センセーショナルといえば、描写に関しては、物語に合わせてかなり強烈なシーンも出てくる。このあたりは期待どおり。

続いて観始めたのが「デアデビル」。こちらは全米でも今年の4月にシーズン1が配信されたばかりなので、「早くも観られる」という感慨が強い。盲目の戦士である主人公を象徴するように、冒頭から比較的、ダークで落ち着いたムードなのは「オレンジ〜」とは対照的。映画でいえば、クリストファー・ノーランの「ダークナイト」シリーズに近いテイストか。『アベンジャーズ』を始めとしたマーベル・シネマティック・ユニバース作品との、今後のリンクを予想しながら観る楽しみ方もできる。

「ハウス・オブ・カード 野望の階段」で、高い製作レベルを証明したNetflixオリジナルの作品群が、日本にどこまでアピールするのか。そしてNetflixで先行配信される「テラスハウス」新作など、日本独自のコンテンツがどこまで広がるのか。料金体系や正式な提供コンテンツ数も気になるが、満を持して日本でのサービスを開始するので、Netflixは、あらゆる要素で勝算を考えているはずである。

(c) Netflix. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

斉藤博昭の最近の記事