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中国圏が増えたハリウッド大作イベント。さすがに『攻殻機動隊』は東京! 世界の「インフルエンサー」集結

斉藤博昭映画ジャーナリスト
劇中でメインキャラのバトーが乗る車も展示。内装はすべてブルー

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』がハリウッドで実写化。香港やニュージーランドでの撮影も完了し、ついに2017年に公開される。作品はまだ完成していないが、これから公開に向けたプロモーションの第一歩として、『攻殻』が誕生した日本でのイベントが、11月13日に開催された。場所は、東京・日の出のタブロイド(かつて新聞社の印刷所だった貸倉庫)。

期待をアゲる衣装やガジェット

会場内に足を踏み入れると、今回の『GHOST IN THE SHELL(原題)』の撮影で使われた車やガジェット、衣装やコンセプトアートが展示されている。荒巻役で出演したビートたけしが「プロダクションデザインがすばらしい。オレの映画、100本分くらいの予算がある。映画は総合芸術だと実感した」と語ったとおり、原作や、押井守監督のアニメ版を忠実に再現しようとした苦心が見てとれる。

スキニーマンの銃(左下)には漢字も。中央はバトーのショットガン
スキニーマンの銃(左下)には漢字も。中央はバトーのショットガン
劇中で大暴れする「青い芸者」。顔の部分が開いて恐ろしい内部があらわに…
劇中で大暴れする「青い芸者」。顔の部分が開いて恐ろしい内部があらわに…
コンセプトアート。『ブレードランナー』を彷彿とさせる
コンセプトアート。『ブレードランナー』を彷彿とさせる

続いて、ルパート・サンダース監督、ヒロイン、少佐役のスカーレット・ヨハンソンビートたけしがステージ上に現れ、映像のクリップも流されながら、トークを行った。ステージには上がらなかったものの、会場には本作に出演した桃井かおり(スカーレット・ヨハンソンとの重要なシーンに登場)、福島リラ(激しいアクションも披露しているらしい)、さらに押井守の姿も。(一応)日本人の主人公(草薙素子)にハリウッドスターを起用したことで、一部のファンから非難の声も上がっていた本作だが、サンダース監督はスカーレットが適役だったことを力説(まぁ、サイボーグですからね)。また、たけしは日本語、スカーレットは英語のセリフだったとのこと。共演シーンではどんな演出がなされているのか、さらなる憶測も広がる。

少佐役のスカーレット・ヨハンソンは14年ぶりの来日
少佐役のスカーレット・ヨハンソンは14年ぶりの来日
荒巻役のビートたけしは「スカーレットにカンペを持ってもらった」と会場を笑わせた
荒巻役のビートたけしは「スカーレットにカンペを持ってもらった」と会場を笑わせた

この日は海外からも多くの取材陣が集められていた。その数は、約75人。ジャーナリストも含まれているが、その多くは「インフルエンサー」と呼ばれる人たちだ。SNSやブログ、You Tubeなどで多数のフォロワーをもち、その影響力は半端じゃないインフルエンサー。とくに『攻殻』のような作品では、マニアに向けた発信において絶対不可欠な人たちだ。

インフルエンサーたちが会場で大熱狂
インフルエンサーたちが会場で大熱狂

会場を盛り上げるインフルエンサー

東京で行われたこのイベントだが、仕切っているのは『GHOST IN THE SHELL』を配給する、パラマウント・ピクチャーズのアメリカ本社。つまりパラマウント本社が、世界各地のインフルエンサーを東京に「招待した」のである。本来、東京でこうしたイベントが行われる場合、日本のマスコミや関係者で埋め尽くされるはずなのだが、今回は海外の取材陣が多数を占めるという異例の光景となった。

近年、こうしてインフルエンサーを集めて映画のイベントを行うケースは増加している。ハリウッド映画のプロモーションで、各国のマスコミを集めてキャストやスタッフが取材に応じる機会を、業界内で「ジャンケット」と呼ぶが、インフルエンサーのみのジャンケットもあるという。

さらに、ここ数年、中国のマーケットを重視するハリウッドでは、大作のジャンケットやイベントを中国圏で行うケースが多い。最近では『ドクター・ストレンジ』が香港で、『デッドプール』が台北で行われた。しかし、さすがに『GHOST IN THE SHELL』は、日本人キャストも多く出演しているので、東京というチョイス以外は考えられない。12月に東京で開催されるコミコンとタイミングを合わせたかったようだが、さすがにそれは難しかったらしい。

この日のイベントでの映像やインタビューからは、オリジナルのファンの期待を裏切らない作りに徹していることは明らかになった。しかし、完成作が観られるのは、まだしばらく先。来年、春の公開でその真価が問われることになる。

『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』

2017年4月、日本公開

配給:東和ピクチャーズ

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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