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ゴジラに続け!新キングコングの全貌が明らかに。この春、さらに怪獣映画も

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『キングコング:髑髏島の巨神』より

昨年の『シン・ゴジラ』の大ヒットは、怪獣映画ブームの復活というわけではないものの、このジャンルに新たなポテンシャルがあることを証明した。

そのゴジラ熱が冷めないうちにとばかり、ライバルともいえるモンスターの新作が登場する。キングコングだ。映画史を振り返っても、これまで何度もエピック的な作品を生んできたキングコング(1933年のウィリス・オブライエンによる特撮、2005年のピーター・ジャクソンによるモーションキャプチャーなどなど)。なぜまた新たに……という理由は、2020年にゴジラとコングが直接共演(対決?)する映画の公開が予定されているからだ。

製作は『パシフィック・リム』『GODZILLA』などのレジェンダリー・ピクチャーズ。2019年には『GOZILLA』の続編も公開され(モスラも登場するらしい!)、コングとゴジラのシリーズは、レジェンダリー・ピクチャーズにとっても一大プロジェクトになっている。

根源的本能をくすぐる巨獣たちのビジュアル

さて、日本は3月25日公開となる『キングコング:髑髏島の巨神』の完成度はどうなっているか。これが、怪獣映画ファンには“萌え萌え”の仕上がりになっていた! キングコングが過去最大のサイズ(31.6m)で登場するのはもちろんだが、コング以外の巨獣キャラのすばらしさに、いちいち感嘆させられる。往年のゴジラシリーズの『怪獣総進撃』や、「ウルトラマン」の「怪獣無法地帯」のように、巨獣オンパレードの展開が、(男女で区別するのはよくないものの、傾向として)男のコの根源的本能をくすぐりまくる。

出てくる巨獣たちの特徴やデザインが、いちいち心をざわめかせるのも魅力。単にサイズが巨大な水牛などもいるが、脚が竹のようなクモや、水中に潜む巨大な何か、やたらと凶暴な鳥の軍団、擬態して襲いかかる生物など、髑髏島に足を踏み入れた人間たちを容赦なく襲う不気味さ、恐ろしさは尋常ではない。それらの造形は、宮崎駿のアニメなど最近の日本作品からの影響も感じられるが、先述したような「ウルトラ」シリーズや、もっと言えば「仮面の忍者 赤影」あたりの、クラシックな怪獣・妖獣も思い出させ、怪獣映画の王道を極めているのだ。舞台が未開の島だけに、『パシフィック・リム』よりも“野生感”に満ちているのも特徴。

ジャングルで調査隊を襲う、この巨大生物は……?
ジャングルで調査隊を襲う、この巨大生物は……?

タイトルの「巨神」が示すとおり、キングコングの立ち位置は島の神=ヒーロー要素濃厚である。とはいえ、過去のキングコング映画のように、彼が人間の美女と恋におちる展開は(あからさまには)ない。そして人間のキャラクターも、好戦的な者、コングに友好的な者、「地球空洞説」を唱える者、生物学者などきっちり個性が描かれ、しかもメインキャスト約10人がほぼ同列に扱われている。有名スターだから「犠牲にならない」という掟は通じない(相変わらずのサミュエル・L・ジャクソンの役回りなど映画ファンへのアピールも申し分なし)。余計な人間ドラマによって、ストーリーの勢いがそがれないのも『シン・ゴジラ』と共通。あくまでもコングや巨獣が主体になっている作りが、怪獣映画として潔い!

キングコングは、ピーター・ジャクソン版と同じくパフォーマンス・キャプチャーで映像化されており、人間のキャラを演じるトビー・ケベル(『猿の惑星:新世紀』でもコバ役でキャプチャー演技を経験)も協力しているという。

オマケ映像まで、怪獣ファン(とくに日本人!)へのサービス精神に大満足です!

万里の長城が築かれた理由は、なんと……

そして時を同じくして、レジェンダリー・ピクチャーズによる作品がもうひとつ。『グレートウォール』が、4月14日、公開となる。

万里の長城を舞台に、監督はチャン・イーモウ、主演はマット・デイモンという、何やら歴史ロマンの香りも漂う顔合わせだが、これが人間vs謎の怪獣というアクション大作。しかも敵の数は、数十万という単位! 個体の大きさは5mほどだが、軍団になって万里の長城を攻め立ててくるのである。その壮観は、衝撃を通り越すレベル。人間たちの戦術もこれまた斬新で、チャン・イーモウ、北京五輪開会式のごとくの豪華スペクタクル演出! 『キングコング〜』とは一味違う、モンスターパニック映画の醍醐味を感じられるはず。

マット・デイモンも必死に謎の怪獣と戦います!
マット・デイモンも必死に謎の怪獣と戦います!

レジェンダリー・ピクチャーズは2016年に中国の大連万達グループに買収されたので、『グレートウォール』もキャスティグも含めて中国の観客へのアピールが濃厚ではある。

さらに4月1日には、アニメだが『レゴ(R)バットマン ザ・ムービー』が公開。キングコングらモンスターキャラが複数登場する。4月21日には、今年最大の話題作のひとつ『美女と野獣』も公開。「野獣」と「怪獣」の違いはあるが、人間を超えるクリーチャーの活躍が、この春、スクリーンを賑わせることになる。

『キングコング:髑髏島の巨神』

3月25日(土) 全国ロードショー

配給/ワーナー・ブラザース映画

(c) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

『グレートウォール』

4月14日(金) 全国ロードショー

配給/東宝東和

(c) 2016 UNIVERSAL STUDIOS

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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