Yahoo!ニュース

アマゾンがファストファッション業界に参入!ユニクロとGAPを超える日はやってくるのか。

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
アマゾンはついに小売に飽きたらずプライベートブランド衣料販売に乗り出した(写真:ロイター/アフロ)

米国アマゾンのファストファッションブランドの立ち上げ

米国アマゾンは2016年2月下旬、突然、自社のプライベートブランドから、衣類・靴・ジュエリー・時計を販売すると発表しました。

静かなスタートだったとはいえ、7つのもプライベートブランドを投入する力の入れようです。米メディアのいくつかは「そっと」スタートした(そっと=quietly)と書いていますが、しかし脅威も感じさせます。

Launched with little fanfare, the brands are: Franklin & Freeman, Franklin Tailored, James & Erin, Lark & Ro, North Eleven, Scout + Ro and Society New York.

出典:WWD.com

新たなブランドは、「Franklin & Freeman」「Franklin Tailored」「James & Erin」「Lark & Ro」「North Eleven」「Scout + Ro」「Society New York」です。

実際にamazon.comで確認しますと、ファストファッション各社を意識したのは明確で、手頃感を出しつつも現代的なデザインとなっています。

実際の品揃えを見てみると

アマゾンが立ち上げた新ブランドは、どういうものなのか。

みなさんも確認してみてください。なお、当然ですが、下のリンクはアフィリエイトではありません。純粋なリンクとなっています。

・「Franklin & Freeman」:紳士靴。60~70ドルくらい。

・「Franklin Tailored」:ビジネスマン用スーツ類。上下で260ドル、ネクタイ30ドル以下。

・「James & Erin」:女性向け。GAP、H&Mを意識か。シャツ20ドル以下。

・「Lark & Ro」:同じく女性向けだがナチュラルテイスト。ワンピース・ドレスが約60ドルなど。

・「North Eleven」:女性物アウター。スカーフ、手袋も。スカーフ40ドル強、手袋47ドル。

・「Scout + Ro」:子供向け衣料。Tシャツ10ドル等。

・「Society New York」:女性向けキレイ目系ラインアップ。ただ価格は低めで、ドレス62ドル等。

ぱっと見た目、アマゾンとはわからないブランド名となっています。これが「そっと」したスタート(そっと=quietly)だったのかわかりませんが、品揃えは悪くないように感じます。

アマゾンはプライベートブランド衣料に本気か

1800SKU(SKUとは色や種類を別々に数える管理単位のこと)を揃える船出だったようです。アマゾンは体制づくりを急いでいるようです。マーケティングのプロ、ブランドマネージャー、調達マネージャー、仕入れ担当者など、求人に奔走しています。

In recent weeks, Amazon has been looking to build its private label team , with job openings listed for a head of marketing and senior brand manager, senior sourcing manager and senior merchandiser to staff the Amazon Fashion Private Label unit.

出典:WWD.com

これまでファストファッション各社は、アマゾンに出店することの良し悪しを議論してきました。アマゾンの圧倒的な販売力は魅力とはいえ、顧客リストはアマゾンにたまります。

アマゾンへの出店は各社に委ねられていますが、今回はアマゾンが直接、自分たちの販路を活用したアプローチといえます。ファストファッションはすでに強力なライバルがしのぎをけずっていますが、各社ともネット販売に強いイメージはありません。そこをネットの世界からアマゾンが殴りこみをかけています。

これに先立つこと、アマゾンはリアル書店を400店ほどオープンさせると報道されました。

Amazon Plans Hundreds of Brick-and-Mortar Bookstores, Mall CEO Says

Online retail giant considers opening up to 400 bookstores, expanding Seattle experiment

出典:The Wall Street Journal

そこで、米国のメディアは、かなりうがった感じで、「書籍よりも対面販売が重要な衣料を取り扱うために、リアル店舗が必要だったのではないか(大意)」、と報じています。また、それはアマゾンが単なるネット上の企業であることを捨て、世界中の小売業に闘いを挑もうとしているのだ、と解釈すべきなのでしょう。それが真の意味でのオムニチャネル化を推進することになるかもしれません。

アマゾンは衣料をどのように販売するか

しかし、新ブランドを立ち上げたからといって、そして圧倒的な販売力をもつからといって、安穏とはしていられません。冷静に考えれば、アマゾン・アパレルブランドの成功あるいは頓挫を見守ることになるでしょう。

それにしても、アマゾンから衣服を買った後に、このようなメールが来たらどうでしょうか。「そろそろ、糸が解けているだろうから、買い換えたらどうだ」とか。あるいはIoT付きで「そんなに着るんだったら、色褪せも進行するから、次はこれにしろ」とか。

ありえそうで怖いんですけれども。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

坂口孝則の最近の記事