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金銭問題に苦しんだ晩年のロビン・ウィリアムズ。子供への遺産は別個に確保

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト

長年にわたって人々を笑わせてくれたロビン・ウィリアムズは、見えないところで、金銭的な悩みを抱えていた。彼の自殺を受けて、大人気コメディアンが直面していた複雑な事情が浮上してきている。

ウィリアムズの人気が頂点に達したのは、「フック」「アラジン」「ミセス・ダウト」「ジュマンジ」などを立て続けに大ヒットさせた90年代前半。しかし、ここ15年ほどの間に、彼の映画でヒットしたものは、助演を務めた「ナイト・ミュージアム」シリーズや、ごく小さな役で出演した「大統領の執事の涙、」またアニメ映画「ハッピー・フィート」だけ。一方、二度の離婚は、彼に3000万ドルの出費を強いた。資金繰りのため、昨年はナパ・バレーに所有する640エーカーの農場を3000万ドルで売りに出したが、買い手はついていない。「Parade」紙へのインタビューでそのことに触れたウィリアムズは、「今の僕には、もうそんなゆとりはないから」と語っている。

昨年秋、テレビの新番組「The Crazy Ones」に主演したのも、経済的な理由。番組の出演料は、一話あたり16万5000ドル。映画とテレビの境目が昔と比べて薄らいできているとはいえ、大物映画スターがテレビにレギュラー出演するというのは、やはりプライドの妥協が必要とされたはずだ。派手な宣伝のおかげもあり、初回は好調だったが、回を追うごとに視聴率は低下。1シーズン目は最後まで放映されたものの、今年5月、テレビ局は、2シーズン目を製作しないとの決断を下している。

ウィリアムズが最近撮影した映画で、まだ公開されていないものは4本。そのうち「ナイト・ミュージアム3」は予定どおり今年12月に北米公開されるが、残り3本はインディーズ映画で、アメリカの配給もついていない。「Parade」紙のインタビューで、ウィリアムズ自身が「このテレビ番組のオファーを受けないとしたら、ほかの選択肢は、興行成績に応じてギャラが払われる低予算映画に出るか、スタンドアップのショーで各地を回るかしかない」と語っていたように、これらのインディーズ映画のギャラは、かなり低かったと思われる。

しかし、3人の子供たちに遺すお金は、早いうちから、別個に用意していた。TMZ.comによると、2009年に特別の口座を作るにあたり、子供たちが浪費することを心配したウィリアムズは、「21歳になった時、自分の分け前のうちの3分の1を使っていい。25歳で残りの半分、30歳で残り全部に手を出していい」という条件をつけたそうだ。ウィリアムズの子供は31歳、25歳、22歳。口座にいくらのお金が入っているか、また、子供たちがいくら使ったのかは、明らかになっていない。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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