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ひとり当たり12万5000ドル(約1500万円)相当。オスカー候補者がもらう、おみやげ袋の中身とは?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト

オスカー授賞式当日、候補者とプレゼンターに渡される、ギフトバッグの中身が発表された。過去13年間、オスカーのギフトバッグを担当してきたL.A.のマーケティング会社ディスティンクティブ・アセッツによると、今年のバッグの価値は、12万5000ドル以上とのこと。昨年は8万5000ドル、その前の年が4万5000ドルだったことを考えれば、毎年、豪華さに磨きがかかっているのは明らかだ。

ギフトの中には、バッグにとても入らない物も多数。ディスティンクティブ・アセッツは、エニグマ・ライフの創設者オレッシア・カンターに来てもらって、今年のホロスコープを見てもらい、夢の分析をしてもらえる2万ドル相当のギフト券を今年の目玉と呼んでいる。ほかに、1年分のレンタカー(2万ドル、)豪華列車によるカナディアン・ロッキーの旅(1万4500ドル、)トスカーナのリゾート3泊分(1,500ドル)などがあるが、すべてが高額商品とは限らず、お菓子類や小物類、お酒など、100ドルに満たないアイテムも多数入っている。

昨年のアイテムでは、日本のウォーキングツアー(1万5000ドル、)ヘアトランスプラント(1万6000ドル、)家庭用の水浄化システム(4,895ドル)などが話題を集めた。2013年には、オーストラリアへの旅(1万2000ドル、)ヒースロー空港でのプライベートVIPサービス(1,800ドル、)ヴァンパイア・フェイスリフト施術($5,000)などが含まれている。ギフトバッグに入ってくるアイテム数は、毎年、およそ50個。

このギフトバッグは、アカデミーが公式に渡すものではない。2006年に、これらの高額なギフトは所得の一部となり、税金の対象になるとIRS(税務署)の勧告を受けてから、アカデミーはいっさい関わらなくなっている。

それでもギフトバッグが衰えないのは、自分の商品をトップスターに使ってほしいと願う会社が後を絶たないからだ。商品をギフトバッグに入れてもらうために、各ブランドは、ディスティンクティブ・アセッツに対して、最低4,000ドル、最高2万ドルの料金を払う。そうすることで、確実にセレブに自分の商品を手渡すことはできても、使ってもらえるかどうかは、また別問題だ。2012年には、インテリアデザイナーが自宅改装のコンサルティングに使える1万ドルのギフト券を提供したが、実際に利用したのは、ジェシカ・チャステインひとりだったという。2万ドル相当の価値があるアフリカのサファリツアーを何度もギフトバッグに提供してきたプレミア・ツアー社も、利用者はマリサ・トメイひとりだけだったと明かしている。

そもそも、オスカー授賞式に出席するのは、一般人よりずっとお金を持っている人たち。さらに、普段からいろいろな人たちからプレゼントされることにも慣れてもいる。そうわかっていながら、彼らの目に留まるチャンスに賭けて、ブランドはお金を投資し続ける。華やかなイベントの裏には、やや皮肉ともいえる、現代のビジネス事情があるのだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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