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任天堂の岩田社長死去のニュースにアメリカが反応。「リスクを恐れない」「記者をリラックスさせる人」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト

任天堂の岩田聡社長が11日、55歳の若さで亡くなったことは、アメリカでも大きく取り上げられた。「ハリウッド・リポーター」「ヴァラエティ」などハリウッド業界サイトは、岩田氏の業績をつづった訃報を掲載。「ワシントン・ポスト」紙は、マイクロソフトXboxのフィル・スペンサー、ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(アメリカ)のショーン・レイデンら、業界関係者の追悼コメントを報道した。

「ロサンゼルス・タイムズ」紙は、14日版で、訃報欄に半ページの大きさで取り上げたほか、文化面のトップでも、大きな追悼記事を掲載している。追悼記事を書いたトッド・マーテンズは、岩田氏を故スティーブ・ジョブスと比較し、「野心にあふれるリーダーだった。彼は10年先までビジョンをもっていたため、彼を失ったことの大きさが本当に感じられるのは、何年もたってからになるだろう」と誉め称えた。また、リスクを恐れない人で、普段ゲームをしない人たちにもアピールするよう重視していたとも振り返っている。2012年の発売以来、世界で950万台しか売れていないWii Uも、まさにその姿勢を反映する製品で、「個人的お気に入り」と絶賛。「普段ゲームをしない友達には、プレイステーションやXboxではなく、Wii Uを渡す。Wii Uのゲームは30秒もあれば理解できるし、マリオが猫に変身した時に笑顔を見せない人に会ったことがない」とマーテンズ。「任天堂の社長を13年以上務めた岩田氏から学ぶべきレッスンをひとつだけ挙げるなら、ゲームに興味のない人を取り込む努力をやめてはいけないということだろう」と締めくくっている。

「タイム」のサイトは、13日付けで、マット・ペッカムによる「任天堂の岩田社長は、どうして重要だったのか」という記事を掲載した。小見出しは、「自ら実務に関わる、ゲーム界の数少ないエクゼクティブ。」ペッカムは、今年春、岩田氏を独占インタビューしており、今年6月にもE3(L.A.で開かれる世界最大のコンピュータゲーム見本市)で会うことになっていたが、岩田氏の病状の悪化でかなわなかったという。「春に電話インタビューをした時、岩田氏はいつもどおりユーモアのセンスたっぷりで、私の質問に明るく対応し、奥深い答をくれた。彼はよく笑い、それにつられて私たちも笑った。岩田氏は、記者をリラックスさせるコツをよく知っていた。答えることが許されない質問をされても、ほかの企業のリーダーと違い、誠意ある態度で謝ってくれたものだ。それに、彼は、楽しいエピソードなど、何かおもしろい話を加えることもしてくれた。彼は、そのすばらしい業績でいつまでも人々の記憶に残るだろうが、私はきっと、彼の温かさと、他人と接する時の優しさを、何よりも強く覚えているだろう」(ペッカム。)

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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