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“白すぎるオスカー”批判を受け、アカデミーが早くもルール変更。女性とマイノリティ会員を2倍に

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
候補者が白人だらけとの批判を受け、アカデミーは早くも改革案を発表した(写真:ロイター/アフロ)

アカデミーが、早くも動いた。

2年連続で演技部門候補者20人が全員白人だったことを受けての授賞式のボイコット運動が起こる中、理事会は来週早々にも改善策を練るための会議をもつと報道されていたが、西海岸時間21日(木)に緊急会議が開かれ、22日昼に、新しいルールが発表された。

アカデミーの目標は、2012年の時点で94%が白人、76%が男性、平均年齢63歳だった会員構成を是正すること。“白すぎる”オスカーの原因はアカデミーにとどまらず、ハリウッド業界全体に根付くものだが、映画芸術科学アカデミーの会長シェリル・ブーン・アイザックは、「アカデミーは、業界全体が追いつくのを待つのではなく、自らリードしていきます。理事会と投票に関するこれらの新しい方策は、すぐに影響を与え、私たちの会員構成を大きく変えていくでしょう」と声明を発表している。アカデミーの目標は、2020年までに、女性とマイノリティの会員数を2倍にすること。そのために考え出された主な変更事項は:

事実上、もう引退している会員は投票権を失うかもしれない

現在と同じく、これからも会員は永久会員だが、新しいルールのもと、投票権は10年単位で更新されることになった。この10年の間に活動を行ってきた人は、次の10年も更新される。更新を3回繰り返すと、永久投票権が得られる。このルールはすでに引退していて、長い間仕事をしていない、昔からの会員にも適用される。これらの仕事をしていない会員は、投票権に関するほかの基準を満たすことで、投票権を確保することができるが、ほかの基準も満たさない場合は、投票権を失う。この新ルールは、来月28日のアカデミー賞授賞式の投票には適用されない。

既存の方法以外の形で新会員を募る

新会員を入れるに当たって、伝統的に、アカデミーは、現在の会員が誰かを推薦し、検討の結果、招待するという方法を取ってきた。この方法は継続させるが、そのほかに、より幅広い顔ぶれの、優れた人物を、世界規模で積極的に探し、声をかけるという入会方法を取り入れる。

理事会の議席を3人増やし、その枠に新会員を当てる

現在51人の理事会の枠を3人増やし、そこには新会員を3年の条件で入れる。そうすることで、新会員は、すぐに、アカデミーの重要な決定に自分の声を反映させていくことができ、アカデミーは、次のリーダーを発掘していくことができる。

会員の偏りの是正に取り組んできたアイザックは、昨年も、エマ・ストーンなど若手、またケビン・ハートなど黒人を含む322人を新会員に招待している。しかし、全部で6,261人の会員数においては効力がなかったことは、今月のノミネーション結果が、明らかに示した。やはりアカデミーが現実の世界とずれていることが批判された1970年、当時アカデミー会長だったグレゴリー・ペックは、何年も活動をしていない335人の会員から、投票権を奪うという改革を起こしている。しかし、同じことをやれば、年配の会員から大きな反発が出るのは間違いなく、事実上無理だろうと思われていたが、アイザックらは、3回の更新で永久投票権を得られるという、新しい案を思いついたというわけだ。また、現会員の推薦がない人も入れる道を作ったことで、多様な人々を連れてくることが、ずっとやりやすくなるだろう。

アカデミーが、即座に、これらの前向きな改革を行ったことで、ボイコット運動が鎮まるかどうかは、今すぐにはわからない。古くからの会員から不満も出ることも、安易に予測される。アイザックらは、まだまだ厳しい状況に立たされているのだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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