Yahoo!ニュース

L.A.生まれの男友達が生んだ、100% Made in L.A.の香り

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
アンディ・ベネディッツさん(左)とマット・アンドリューズさん

グローバル化が進み、ひとつの商品を作るのに遠い国の労働が関わるのが常識となった今、L.A.生まれの男性ふたりが、100%L.A.のライフスタイルとインテリアのブランドを立ち上げた。

ブランドの名は、PLTNC。プラトニックの略で、ふたりが友達であることも、この名前を選んだ理由のひとつだ。アンディ・ベヌディッツさんは、カメラマンを経て、バーニーズ・ニューヨークのウィンドウディスプレイ・デザイナーを務めた人。マット・アンドリューズさんは、グラフィック・デザイナーや、コマーシャルのアニメーターを経験している。ビジュアルデザインの世界で活躍したふたりだが、自分たちが手がける商品として最初に選んだのは、おもしろいことに、香りだった。

画像

「香りは、ビジュアルとは違った言語。目で見えるものより、受け手のイマジネーションが、さらに要求される。それに、ビジュアルなものは、暗いところでは見えないけれども、香りは語りかけてくるよね」と、マットさんは香りの魅力を語る。

アンディさんは、バーニーズ勤務中に、質の高い香りに目覚めた。

「若い頃、ディスカウントショップの、化学物質とプラスチック製品を扱うフロアでバイトをして、そういう臭いが大嫌いになった。だから、人工的なものが混じっている香りは嫌い。でも、バーニーズではいつも素敵な香りに囲まれていて、楽しかったんだ」(アンディさん。)

彼らが生み出した最初の香りは、“ローズ・オード”と“フォレスト・フロア”の2種類。キャンドルとインセンスは、タンブラーからパッケージの箱まで、すべてL.A.で作られている。それは、ふたりが最初から重視していたことだ。

「全部を自分たちの手で作ることはできないが、全部の側面に自分たちで関わっているという付加価値を加えたかった。中国にオーダーしたら、誰が、どんなふうに作ったのか、わからないよね」とマットさん。しかし、不動産や人件費の高いL.A.では、当然コストが高くなる。始まったばかりの会社で、大量のオーダーができないため、ひとつあたりのコストはなおさら高い。最初の見積もりが出てきた時は、最も大事なキャンドルを入れずして、箱とタンブラーだけで1個分の予算をオーバーするような金額だった。だが、探した末に、L.A.で、少し安く引き受けてくれる箱の会社を見つけたという。

「自分たちの持っているお金の範囲で、自分たちの望むものにできるだけ近づけるのは、興味深いチャレンジだったよ」(マットさん。)

画像

インセンス・ホルダーやトレイ、ラベルも洗練されている。インセンスは、トラバーチン型のホルダーに、横から突き刺し、ストライプ柄のトレイの上に乗せるユニークなデザイン。モノクロとミニマリズムは、マットさんが昔から愛するところだ。現在は、新しいデザインのホルダーのほか、次の商品としてインテリアとして置くオブジェクトや、壁にかけるタペストリーなどを考案中。いずれは、家具も作りたいなど、夢は尽きない。

「これまでに僕がやってきたことは、コンピュータの中で作ることで、実際に触れられるものではなかった。人が実際に触れられるものを創造したいという気持ちが、僕の中に昔からあったんだ」(マットさん。)

「ウィンドウディスプレイも、2、3週間で変わってしまい、一度取り壊されたら、二度と使われることはないしね」(アンディさん。)

アイデアはいくらでも出てきて、「むしろ忘れてしまわないようにするのが大変」(マットさん)なほど。だが、焦ることなく、自分たちが本当に好きな物しか作らないというポリシーは、ずっと貫いていくつもりだ。ハリウッド映画がますますジョージアやルイジアナで撮影され、L.A.デザイナーの服がメキシコで製造される中、この小さなスタジオから、生粋のL.A.ブランドが育っていこうとしている。

画像

pltnc.com

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事