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ジョニデ離婚:ところでアンバー・ハードは何に出ていた人なのか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX FEATURES/アフロ)

ジョニー・デップ(52)との離婚騒動で連日話題を提供しているアンバー・ハード(30)だが、彼女のことを、デップの妻としてしか知らない人が、おそらくほとんどなのではないかと思う。ほかに何か知っているとしたら、彼女に女性との恋愛遍歴があることくらいで、どの作品でどんな役をやっていたかと聞かれても、答えられない人のほうが多いのではないだろうか。日本だけでなく、実はアメリカでも、状況はほぼ同じだ。出演した映画やテレビは結構あり、中には主役級のものもあるのだが、なぜかあまりヒットに恵まれてきていないせいである。

ピーター・バーグ監督の「プライド 栄光への絆」(2004)に小さな役で出演して映画デビューを果たしたハードは、その後いくつかのテレビや映画の端役を得て、ホラー映画「All the Boys Love Mandy Lane」(2006)で、初の主役を得た。映画は2006年のトロント映画祭でプレミアされ、2007年の北米公開が予定されていたが、配給にまつわるごたごたのせいで、7年後の2013年10月に、ようやくVODと限定劇場公開に至っている。日本では未公開だ。2008年の「Never Back Down(日本未公開)」は、2,000万ドルの予算で作られ、北米公開は2,400万ドルと、まずまずの結果に終わった。同年のコメディ「Pineapple Express(日本未公開)」は北米で8,700万ドルを売り上げ、成功したが、彼女の出演シーンは少なく、ヒットはあくまでセス・ローゲン、ジェームズ・フランコ、ダニー・マクブライドのおかげと言える。

そんな彼女に大ブレイクの可能性が訪れたのは、2011年だった。この年2月、彼女は、ニコラス・ケイジ主演のアクション映画「ドライブ・アングリー3D」に準主役で出演し、10月にはジョニー・デップ主演の「ラム・ダイアリー」でデップの恋のお相手を務めたのである。さらに、秋に放映開始になるテレビドラマ「Playboy Club」にも、主役級で出演したのだ。

だが、「ドライブ・アングリー」は北米公開週末に9位デビューというがっかりの結果に終わり、5,000万ドルの製作予算に対して、北米興収はわずか1,000万ドルだった。「ラム・ダイアリー」も、製作費は4,500万ドル、北米興収は1,300万ドルの大赤字。「Playboy Club」は、メジャーネットワークのNBCが大規模な宣伝展開をかけ、鳴り物入りで放映開始した新ドラマだったが、たった3回放映されただけで打ち切りとなっている。

2013年の「マチェーテ・キルズ」も、北米興収わずか800万ドルという大失敗に。翌年の「ラストミッション」はまあまあで、昨年の「マジック・マイクXXL」も、1作目の半分程度の興収に落ち着いている。昨年秋北米公開の「リリーのすべて」は、アリシア・ヴィキャンデルがオスカー助演女優賞に輝き、エディ・レッドメインも主演男優部門にノミネートされるなど注目されたが、ハードの出演シーンは短い。

しかし、その間も、「Maxim」「FHM」など米男性誌の“セクシーな女性”ランキングで常に上位に君臨してきており、一部の男性の間で人気があったのはたしかだ。打ち切りになった「Playboy Club」には、26歳の時に、あのうさぎの耳としっぽをつけ、胸の谷間を見せて登場したし、ほとんど誰も見ていないとはいえ、「マチェーテ・キルズ」でもセクシーさを強調した役で出ているのだから、これは決して驚きではない。

「Playboy Club」の彼女(左。)Matt Dinerstein/NBC
「Playboy Club」の彼女(左。)Matt Dinerstein/NBC

だが、一方では、そういったイメージを裏切るようなことを言ってみせたりするのである。筆者も「ドライブ・アングリー」「ラム・ダイアリー」「リリーのすべて」の公開時に彼女をインタビューしているが、ポーセリンを被せた不自然なほど白い歯に真っ赤な口紅、体の線を見せるワンピース、といういでたちでやってきたかと思うと、子供の頃から父とハンティングをしてきたから銃を撃つなんてなんともないとか、愛車は68年のマスタング・クープだとか、農場仕事は得意だなどという、男勝りな側面を強調する発言をしている。

そのギャップがまた、男心をくすぐるのかもしれない。ハードに心を惹かれた理由として、デップは昨年11月、E!チャンネルに対し、「彼女にはいろんな意味でつながりを感じたが、一番は、彼女がブルース音楽に詳しいことだった。誰も知らないような、古いブルースの曲を僕が演奏すると、彼女はそれを知っていたんだよ」と述べている。さらに、「彼女はすごく良く本を読んでいるんだ」とも付け足した。

この離婚に関するゴシップが、彼女のイメージやキャリアにどんな影響を与えることになるのかは、まだわからない。彼女の次回作は、彼女のキャリアで最大規模となる「アクアマン。」DCコミックのスーパーヒーロー映画で、彼女は準主役のメラを演じることが決まったのである。公開予定は2018年夏。その前に来年公開の「ジャスティス・リーグ」に同じ役でちらりと登場するが、本格的に自分の映画が公開されるまでには、この離婚劇がとっくに片付き、人が忘れてくれていることを、ハードは期待しているだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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