Yahoo!ニュース

ジョニデ離婚:アンバー側「お金は目的じゃない」「被害届を出さなかったのはジョニーへの思いやり」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
28日(土、)弁護士とのミーティング後、友人と外を歩くアンバー・ハード(写真:Splash/アフロ)

ジョニー・デップの友人による「ジョニーはアンバーにはめられた」という証言記事が話題になったのを受けて(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160531-00058297/、)今度はアンバー・ハード側が反撃した。

ハードの弁護士らは、米西海岸時間31日(火、)メディアに向けて声明を発表。その中で、弁護士らは、ハードが21日(土)にデップから暴力を受けたことへの被害届を出さなかったのは、「ジョニーのキャリアを思いやってのことだった」と弁明した。また、遅まきながら被害届を出したとも述べ、そんな行動に出ざるをえなくなったのは、「ジョニーのチームのせいだ」と責めている。彼女の目的がお金だというのも誤解だと主張、「アンバーは被害者だ。アンバーはヒーローだ」という言葉で、声明を締めくくっている。

声明の全文は以下のとおり。

最初にアンバーがL.A.警察に被害届を出さなかったことで、彼女の沈黙は、ジョニーのチームによって利用されることになってしまいました。アンバーが警察に届け出を出さなかったのは、自分のプライバシーとジョニーのキャリアを守るためだったのです。

ジョニーのチームのせいで、アンバーは、事実関係を正しくするために、L.A.警察に届け出を出さざるをえなくなりました。彼女は、メディアに溢れている、意地悪な虚偽の責め立てに耐え続けることができないのです。アンバーは、何年も、ジョニーによる肉体的、精神的な暴力に苦しんできたのです。

家庭内暴力において、加害者側が、悪いのは被害者であるように仕向けるのは、よくあることです。アンバーも、ほかの多くのDVの被害者のように、すでに苦しめられている自分よりも、苦しめている人のほうが傷つかないようにということを、まず考えたのです。

5月21日の出来事の後、人々は彼女という人間に対して嘘の意見を言い、攻撃してきました。アンバーは、もうそれに耐えられません。今回の届け出により、警察が、その夜とそれ以前について、正確かつ完全な捜査をしてくれることをアンバーは望んでいます。それがなされ、真実が明らかになれば、アンバーの言っていることは疑いの余地がないものだとわかるでしょう。そして、ジョニーが本当に必要としている治療を受けてくれることにつながることも望みます。

ほかの人がL.A.警察に通告をしましたが、アンバーは、最初から、このことをできるだけ公にしたくないと願ってきました。L.A.警察は、ジョニーのせいでめちゃめちゃになった家と、彼女が顔に受けたケガを目にしました。私たちは23日(月)の終わりになって離婚申請をしましたが、その夜、「アリス・イン・ワンダーランド2」のプレミアに出席しているジョニーに告知を届けることはしませんでした。(筆者注:カリフォルニアでは、夫婦の一方が離婚を裁判所に申請し、その後、もう一方に、第三者を使ってその告知を手渡す。告知を受けた側が30日以内に応答しない場合、申請したほうは、ひとりで離婚手続きを進められる。)

翌朝、私たちは、ジョニーのチームに、このことをメディアに知られないようにしたいと、はっきり伝えました。そして、ジョニーが海外に行くことがわかっていたので、それまでDVのための接近禁止令を申請するのを待ちました。

私たちは、正しい道を選んだのです。残念なことに、ジョニーのチームはただちにメディアに知らせ、アンバーの人柄を残酷な形で攻撃し始めました。アンバーは、DVの被害者にすぎません。彼女の行動は、いっさい、お金を目的としたものではありません。アンバーは勇敢で、経済的に独立した女性です。ジョニーを取り囲む弁護士や代理人に対して正しいことをやってみせることで、彼女は、彼女の信念を見せているのです。

家庭裁判所は、匿名の人がソーシャルメディアに書いた間違った情報に左右されたりしません。アンバーは被害者です。アンバーはヒーローです。

この声明には、いくつか矛盾がある。ひとつには、L.A.警察が、「ふたりの刑事が駆けつけた時、家の中は散らかっておらず、ケガがあるかどうかをじっくりと見たが、見当たらなかった」という主張を通していること。TMZ.comによると、それについてハードの側は、「L.A.警察は、ケガを見落としたか、ジョニーを守るために嘘をついている」と言っているとのことだ。

もうひとつ、「経済的に独立している」「お金が目的ではない」というが、彼女は、離婚申請するにあたって、デップから配偶者サポートを要求している。それも、離婚の成立までには時間がかかるため、成立するまでの間の一時的配偶者サポートとして、月5万ドル(約550万円)を要求しているのである。一時的サポートとしてそれだけ欲しいと言っているということは、離婚調停の話し合いでも、その金額を基準にして本格的な配偶者サポートを要求するつもりでいると想像される。

デップは、ハードとの結婚前に、アメリカの金持ちの間では常識とされているprenupこと婚前契約を交わしていない(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160527-00058122/。)これがない場合、基本的に、カリフォルニア州法のもとでは、結婚中に得た財産は、平等に分けられることになる。「Forbes」によると、2015年にデップは3,000万ドル(約33億円)を稼いでいる。配偶者サポートを払うことを命令するかどうか、また金額はいくらかを決めるにあたって、裁判所はさまざまなことを考慮するが、大きな判断材料は、結婚していた期間の長さと、その結婚により、配偶者の収入が減ることになったかどうかだ。ハードの場合は15ヶ月しか結婚しておらず、デップとの結婚のせいで知名度が上がり、収入増加にはつながったかもしれないが、減ることにつながったとは考えづらい。デップは裁判所に対し、ハードの配偶者サポート要求を却下するよう、要求している。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事