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リンジー・ローハン、30歳に。波乱万丈のこれまでを振り返る

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX FEATURES/アフロ)

アメリカ時間7月2日、リンジー・ローハンは30歳の誕生日を迎える。ここしばらくスクリーンから遠ざかっているが、最近もまた、英EU離脱がらみでお騒がせなツィートをしてはひんしゅくを買うなど、あいかわらず私生活の話題が絶えない人だ。現在、ロシア人大富豪の息子エゴール・タラバソフ(22)と交際しているローハンは、彼や友人と共に、30歳の誕生日をギリシャで祝う予定らしい。将来は、本を書き、子供も持ちたいと語っているローハンの、これまでの人生を振り返ってみる。

ディズニーの子役スターからティーンのファッションアイコンへ

3歳でモデル事務所と契約したローハンは、子供服ブランドのモデルを務めるほか、ピザハットやウェンディーズなどのCMに多数出演。ディズニーの「ファミリー・ゲーム/双子の天使」(98)で映画デビューを果たす。ひとり二役を演じた彼女の演技は、批評家から高い評価を受けた。次の「フォーチューン・クッキー」(03)もディズニーの若者向け映画。母(ジェイミー・リー・カーティス)と娘(ローハン)が入れ替わってしまうというコメディで、興行面でも批評面でも成功した。

2004年の「ミーン・ガールズ」で、ローハンは、大スターとしての地位を確実なものにする。ティナ・フェイが脚本を書いたこのブラックなハイスクールコメディは、女子高生たちの、やや意地悪で複雑な関係を描くもので、その後ずっと語り継がれている傑作だ。ローハンのほかに、当時ニューフェイスだったレイチェル・マクアダムスやアマンダ・セイフライドも出演している。この映画で、ローハンは、MTVムービー・アワードや、ティーン・チョイス・アワードなどを受賞した。

同じ年、ローハンは、初のアルバム「Speak」で歌手デビューを果たす。批評は芳しくなかったが、アルバムはアメリカだけで100万枚を売り上げた。

パパラッチから追いかけ回されるようになったローハンは、ファッションも注目されるように。ローハンが買ったというアイテムは、すぐにメディアに取り上げられ、どれもあっというまに売り切れた。彼女のヘアスタイル、メイクも常に女性誌の話題になり、パリス・ヒルトン、ニコール・リッチーらと並ぶトレンドセッターとなった。

摂食障害、アルコール依存症、ラジー賞

2005年春には、ローハンの激やせぶりが話題になる。6月に北米公開されたディズニー映画「ハービー/機械じかけのキューピッド」の記者会見では、「どんなダイエットをしたのですか」という質問が出て、ローハンのパブリシストがストップをかける場面もあった。ローハンはこの時、「みんな意地悪なことを聞いてくる」と、ちらりとこぼしてもいる。

翌年になって、ローハンは、自分が摂食障害に陥っていたことを明かしている。「ハービー〜」と、同年のロマンチックコメディ「Just My Luck(日本未公開)」(ちなみにお相手役は当時無名だったクリス・パインである)が、立て続けに、興行面でも批評面でもがっかりな結果に終わり、勢いづいていたローハンのキャリアは、初めて小さくつまづいた。この頃から夜遊びが激しくなり、パリス・ヒルトンとの仲違いや、ハードロック・カフェ創業者の息子ハリー・モートンとの交際など、次々にゴシップネタを提供するようになる。ゲイリー・マーシャル監督、ジェーン・フォンダ主演の「Georgia Rule(日本未公開)」(2007)の撮影中も、体調が悪く入院したことを理由に現場に現れないことがあったが、その前夜にナイトクラブで遊んでいたローハンを数々の人が目撃しており、プロデューサーは彼女に不満を訴える手紙を送っている。

2007年、ローハンは、アルコール依存症の更生施設に入所。そのせいで、撮影中の主演作「I Know Who Killed Me(日本未公開)」の製作は中断された。その年の5月には飲酒運転で逮捕され、再び依存症更生施設に入ることに。ローハンは、次の映画「Poor Things」に主演が決まっていたが、役を失うことになる。7月には、薬物またはアルコールの影響を受けた状態で無免許運転し、コカインも所持していたことから、再び逮捕。同じ月、「I Know Who Killed Me」が北米公開されたが、映画は酷評され、ローハンは、最悪の映画や演技に対して送られるラジー賞にノミネートされた。逮捕を受けてローハンは3度目の更生施設入りをする。

“保険をかけられない”女優、度重なる逮捕、大胆ヌード写真公開

ハリウッドでは映画の撮影前に必ず保険をかけなければならないが、ローハンは、映画に出演契約をしても、依存症や逮捕のせいできちんと契約を果たせない事例が続きすぎたことで、どこの保険会社にも嫌がられる存在になり、事実上、雇えない女優になってしまった。2009年にはコメディ映画「Labor Pains(日本未公開)」に主演を果たすが、劇場用として製作されたにも関わらず、結局はテレビ放映となる。2010年5月には、保護観察処分中の約束を破り、またもや刑務所入り。さらに2011年2月には、L.A.のショップでジュエリーを万引きし、またもや刑務所入りを命じられた。その年の12月には、大胆なヌードで「Playboy」誌の表紙を飾り、話題を集めている。

翌年には、ニューヨークで、二度逮捕される。一度目は歩行者に当て逃げした容疑。二度目は、ナイトクラブで女性客に暴力をふるった容疑だ。実刑を免れるため、ローハンは90日間の更生施設入所に同意した。

これら数々のトラブルの間に、ローハンは、ロバート・ロドリゲス監督の「マチェーテ」(2010)、「Scary Movie 5(日本未公開)」(2013) に小さな役で出演。低予算のインディーズ映画「ザ・ハリウッド」(2013)では主演とプロデューサーを兼任したが、北米での売上はたった4万9,000ドルで、ローハンはラジー賞にノミネートされた。テレビでは、2時間ドラマ「Liz & Dick」(2012)でエリザベス・テイラーを演じたほか、2014年には、彼女が人生を立て直す様子を描くドキュメンタリーシリーズ「Lindsay」が、オプラ・ウィンフニーのチャンネルで放映されている。また、ロンドンで、デビッド・マメットの舞台劇「Speed-the-Plow」に出演した。現在、ローハンは、主にロンドンを拠点としている。

彼女が思い描くこれから。本の出版、子供、映画出

30歳の誕生日を前に、ローハンは、「Vanity Fair」のメールでのインタビューに応じている(記事全文はここで読める:http://www.vanityfair.com/style/2016/06/lindsay-lohan-turning-30-interview)。これからやりたいこととして、ローハンは、「映画に出ること、本を書くこと、自分のチャリティを立ち上げること、子供たちのために多くのことをすること、そしてもしかしたら、自分でも子供をもつこと」を挙げた。本は、どうやって障害を乗り越えるべきかを語るものになるようだが、自伝本になるのか、セルフヘルプ本になるのかは、この記事ではわからない。「自分の人生で後悔していることは」という質問に対しては、「後悔、というのはないかな。やり直すことはできないんだし。でも、やり直せるのであれば、もっと母の言うことを聞いて、故郷のニューヨークにもっと早く戻り、友達を賢く選ぶと思う」と述べている。今、何を一番楽しんでいるかという質問には、「旅行、いろいろな経験をすること、特別な相手と愛を分かち合うこと、瞑想、良い人たちと良い時間を過ごすこと、家族と時間を過ごすこと」と答えた。

ローハンは最近、「The Shadow Within」というタイトルのインディーズ映画を撮り終えているようだ。監督や共演者は全員ほぼ無名で、公開がどうなるのかは、わからない。しかし彼女は、30歳になったところ。人生はまだまだ長く、持って生まれた才能を最大限に活かしきれるかどうかは、本人次第だ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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