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「スター・トレック」のスールーはゲイ。夫と娘もいることが最新作で明らかに

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
スールーを演じるジョン・チョー(写真:REX FEATURES/アフロ)

「スター・トレック」のヒカル・スールーには、夫と娘がいた。最新作「スター・トレック BEYOND」にはそんな展開が用意されていることを、スールーを演じるジョン・チョーが、オーストラリアの「Herald Sun」に対して明かした。

しかし、決してストーリーの大事な部分というわけではなく、あくまでさらりと出てくるらしい。「たいしたことじゃないんだというそのアプローチは、良いと思ったよ。人類が、そっちの方向に向かっていることを僕は望むから。個人の嗜好についてとやかく言わないという方向に」と、チョーは語っている。

ジョン・チョーとゾーイ・サルダナ
ジョン・チョーとゾーイ・サルダナ

チョーによると、このアイデアは、監督のジャスティン・リンと、今作では脚本家も兼任するサイモン・ペグが、60年代のオリジナルテレビ版「宇宙大作戦」でスールーを演じたジョージ・タケイに敬意を表する意味で考え出したことらしい。「スター・トレック」生誕50周年を迎える今年、リンとペグは、時代は変わったのだということも表現したかったようだ。

この報道が出た後、「USA TODAY」は、チョーのパブリシストに連絡をし、彼の語ったことに間違いはないと確認している。パラマウントは、映画をまだ見ていない観客に内容を語ることをリンが好まないという理由で、ノーコメントを通している。

タケイが最後に「スター・トレック」に出たのは、1991年の「スター・トレックVI/未知の世界」。その間、タケイは、ゲイであることをオープンにはしていなかった。カミングアウトしたのは2015年。その後、カリフォルニアで同性婚が合法となり、タケイは長年のパートナーと結婚をしている。

LGBTコミュニティのために熱心な活動を続けるタケイは、最近、GLAAD(中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟)から、LGBTの正しい描かれ方のために貢献したメディア業界人に対して送られるヴィト・ルッソ賞を授与された。受賞スピーチで、タケイは、「ゲイであることを隠しながらL.A.で成長していた子供時代、僕が映画やテレビで見た、あるいはラジオで聞いた、ゲイやレズビアンの人々は、みんなマンガのように描かれていました。笑うべき存在、かわいそうだと同情すべき存在として。あるいは忌み嫌う対象として。メディアは、僕らの人間性を全部奪い取って、ただのステレオタイプにしてしまったのです。当時のメディアは、魂を握りつぶすモンスターでした。しかし、GLAADはメディアにスマートにアプローチし、問題提起をすることで、大きな変革を与えてくれたのです」と、GLAADの活動を賞賛している。

スポックを演じるザッカリー・クイント(左)
スポックを演じるザッカリー・クイント(左)

J・J・エイブラムスによるリブート版の「スター・トレック」でスポックを演じてきたザッカリー・クイントは、1作目が公開された2年後の2011年10 月、カミングアウトした。ゲイであることを公にした理由として、クイントは、その1ヶ月前に起きた14歳の男の子の自殺を挙げている。その少年は、自分がバイセクシュアルであることをオープンにし、自分と同じような立場にいる若い人たちを励ましていたが、いじめのせいで死に追いやられた。「公にせずしてゲイとして生きていては、完全な平等を達成するための活動に、十分な貢献ができないと思った」と、当時クイントは語っている。クイントとパートナーでモデルのマイルズ・マクミランは、昨年、マンハッタンのコンドミニアムを一緒に購入し、同居生活をしている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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