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「ワイスピ8」の現場でキャストが衝突。過去にも多数ある、カメラの後ろのいざこざ

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「ワイスピ」最新作の現場でヴィン・ディーゼルはドウェイン・ジョンソンと衝突(写真:ロイター/アフロ)

「来年4月、映画を見て、僕が本気で怒っているみたいだと思ったとしたら、それは正しいよ。」

「ワイルド・スピード」8作目を撮影中のドウェイン・ジョンソンが、共演者への不満を綴るコメントを、インスタグラムに投稿した。ジョンソンはまず、仕事熱心なクルー、スタジオ、女優たちを褒めた上で、「だが、共演男優たちは違う。しっかりした大人のプロとしてふるまう人もいるが、そうでない奴もいる。そして、そうじゃない奴は、臆病者で、どうせそのことに対して何もしないんだ」と続けている。

名指しはしていないものの、ヴィン・ディーゼルはそれが自分のことだとわかったようで、ディーゼルは、自分の出演シーンの最後の撮影が終わると、即座に現場を去っていったと報道されている。撮影は終わりに近づいているが、ジョンソンの撮影シーンは、まだ少し残っているようだ。

会社や学校と同じで、映画の撮影現場でも、時に、いざこざは起こる。いくつかの良く知られている例を挙げてみよう。

「チャーリーズ・エンジェル」(2000)ビル・マーレイvsルーシー・リュー

キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューでリメイクされた「チャーリーズ・エンジェル」で、マーレイはボスレーを演じた。彼がリューのことをあまり気に入っていないようなのは多くが感じていたが、ある日、撮影中、リューに対して「君は演技ができない」と言い、怒ったリューがマーレイを殴るという出来事が起きた。以後、ふたりは現場でずっと距離を置いている。マーレイは監督のマックGともうまくいかなかったようで、続編には出演しなかった。2003年の「チャーリーズ・エンジェル:フルスロットル」では、バーニー・マックがボスレーを演じている。

「トランスフォーマー/リベンジ」(2009)マイケル・ベイvsミーガン・フォックス

「トランスフォーマー」1作目でヒロインに抜擢され、無名女優から一躍“最もセクシーな女性”の代表になったミーガン・フォックス。しかし、2作目が公開されてまもない頃、フォックスは、インタビューで、「マイケル・ベイはヒトラーのようにふるまう。彼との仕事は悪夢だった」と語った。それを受けて、ベイの映画の常連クルー3人は、フォックスが、たびたび遅刻し、いつも不機嫌で、せりふも覚えず、クルーやキャストたちのパーティにも一度も顔を出さなかったと公開状で暴露。「トランスフォーマー」のプロデューサーであるスティーブン・スピルバーグは、3作目にフォックスを雇わないと決め、代わりにロージー・ハンティントン=ホワイトリーが新ヒロインに選ばれた。その2年後、共演のシャイア・ラブーフは、ベイの女性蔑視的な演出にフォックスは耐えられなかったのだと、彼女を弁護する発言をしている。

「バットマン フォーエヴァー」(1995)トミー・リー・ジョーンズvsジム・キャリー

ジョエル・シューマッカー監督、ヴァル・キルマー主演の「バットマン フォーエヴァー」が撮影された時、キャリーは「マスク」「ジム・キャリーはMr. ダマー」を立て続けにヒットさせ、勢いに乗っているところだった。しかし、ジョーンズは彼のことをあまり良く思っていなかったようだ。2年前のインタビューで、キャリーは、ジョーンズとの重要なシーンが撮影される前日、レストランで食事をしているジョーンズにキャリーが挨拶に行くと、ジョーンズに「僕は君が嫌いだ。本当に好きじゃない 」と言われたと、当時を振り返っている。その理由について、「Mr. ダマー」とジョーンズ主演の「タイ・カップ」が同じ週末に北米公開され、「タイ・カップ」がふるわなかったことが原因ではないかと、キャリーは分析している。

「きみに読む物語」(2004)ライアン・ゴズリングvsレイチェル・マクアダムス

この感動の恋愛映画で共演したのがきっかけで、ライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが私生活でもカップルになったのは、有名な話。だが、ニック・カサヴェテス監督によると、最初、ふたりはお互いのことが大嫌いだったらしい。撮影中のある日、ゴズリングは、大勢の人がいる現場で、「ニック、彼女を追い出してくれる?そして、カメラに映らないところで、別の女優に彼女のせりふを読ませてほしいんだけど。彼女とじゃ、できないよ」と言ったのだという。カサヴェテスとプロデューサーがふたりを部屋に連れていき、問題解決をさせようとすると、ふたりは怒鳴りあいのケンカを始めた。そこで吐き出したのが良かったのか、その後、撮影は比較的スムーズにいくようになったとのことだ。

「ビバリーヒルズ高校白書」「ビバリーヒルズ青春白書」(1990〜2000)シャナン・ドハティvsジェニー・ガース

90年代、ドラマで共演したシャナン・ドハティとの関係を、ジェニー・ガースは、自伝本の中で「マッチとガソリンのようだった」と表現している。ある日、撮影中、ガースは意地悪なドハティにスカートを引っ張られ、お尻が丸見えになってしまった。ガースは怒鳴りつけ、「外でやりあいましょう」と、彼女を駐車場に連れて行ったという。そこでのケンカは「まるで第三次世界大戦のようだった」らしいが、共演の男優ジェイソン・プリーストリーとルーク・ペリーが止めに入ってくれた。ドハティはほかにもいろいろ問題を起こし、主演だったにも関わらず、途中で番組を去ることになっている。長い年月がたった今、ふたりはすっかり仲直りしている。ドハティは現在、乳がんと闘病中だ。

「Anapolis(日本未公開)」(2006)ジェームズ・フランコvsタイリース・ギブソン

海軍士官学校の青年たちを描くジャスティン・リン監督の青春映画「Anapolis」でジェームズ・フランコと共演したタイリース・ギブソンは、「彼とはもう二度と一緒に仕事をしない。彼も同感だろう」と語っている。撮影中、フランコにずっと無礼な態度を取り続けられた上、ボクシングのシーンで本当に殴られたりもしたのが理由のようだ。フランコは、すべては役に浸りきっていたせいだと弁明。「タイリースに個人的な感情を持っていたわけじゃない。誤解が生まれただけだ」と語っている。

ほかに、「アイ・ラブ・トラブル」(1994) のジュリア・ロバーツとニック・ノルテ、「ロミオ&ジュリエット」(1996)のレオナルド・ディカプリオとクレア・デーンズ、「欲望のヴァージニア」(2012) のトム・ハーディとシャイア・ラブーフなども、折り合いが悪かったようである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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