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マーク・ウォルバーグ一家のハンバーガー屋、NY支店が集団訴訟される

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
2011年の1号店オープン当時。左からドニー、アルマ(母)、ポール、マーク(写真:Splash/アフロ)

ハンバーガーチェーン“ウォルバーガーズ”のコニー・アイランド店に勤めていた元従業員5人が、この支店のマネジメントを相手に集団訴訟を起こした。彼らが訴えるところによると、店はしばしば時給を払わないまま残業を強要し、客からのチップを取り上げるなどの違法行為を行ってきたという。

ウォルバーガーズは、マーク・ウォルバーグと、兄で俳優のドニー、兄でシェフのポールの3人が創業した、家族経営のハンバーガー屋。この店の立ち上げの様子や、経営の裏話は、リアリティ番組として放映もされ、彼らの母や友人も登場する。

しかし、問題のコニー・アイランド店はフランチャイズで、直営ではなく、ウォルバーグ一家は訴訟の対象に含まれていない。今年3月、ドニーが、自分が主演するテレビドラマ「Blue Bloods」のキャストパーティをこの店で行った時も、店はドニーが置いていった3,000ドルのチップを奪ったということだ。今月初め、再びドニーがこの店でパーティを行った時、今回訴訟を起こした元従業員のひとりは、ドニーに、「この店ではいろいろ問題が起きています。あなたに知っていただきたいと思います」と耳打ちし、ドニーは「知っている」と答えたという。

この訴訟のニュースを受けて、ウォルバーガーズ本社は、「ウォルバーガーズは家族を大切にします。人に対して敬意をもち、平等に扱うのが、このブランドの精神です。この事実が明るみに出た今、私たちは(この支店を経営する会社)コニー・バーガーズに話を聞き、状況をより深く理解して、解決に向けてお手伝いしようとしています」と、声明を発表した。

ウォルバーグ一家の故郷であるマサチューセッツ州ボストン郊外に1号店をオープンして以来、ウォルバーガーズは急速に拡大し、現在、ニューヨーク州、ネバダ州、フロリダ州、ミシガン州、ペンシルバニア州、カナダのオンタリオ州などに支店を展開する。ドバイにも出店の話が進んでいて、マークが言うところによると、今年末までには28店舗に増えている予定だ。

マークはほかにもアルカリ性ウォーター“アクア・ハイドレート”やフィットネスサプリメント、商業用不動産など、さまざまなビジネスに手を出して成功しているのだが(彼のインタビューの場には必ずアクア・ハイドレートが置かれている)、ウォルバーガーズには特別な思いがあるようで、ここ数年は、彼をインタビューするたびに、必ずその話になる。撮影現場で、セットを組み直したりしているような待ち時間に、彼が携帯でビジネスを話し合う姿を見たし、取材や撮影で行く先々にウォルバーガーズがあれば、監督や共演者を連れて行ったり、まだない街でも、ウォルバーガーズ関係のビジネスをこなしてきたりもするようだ。昨年6月、ニューヨークで彼をインタビューした時には、「ちょうど昨日、ボストン空港出店の契約を結んだところだ」と語っていたし、今年6月、L.A.で会った時には、「L.A.支店のための最高のロケーションを見つけて、すぐ契約を結んでしまいたいんだよ。明日から別の街で『トランスフォーマー5』のロケに入らないといけないから、今日のうちに」と言い、インタビュー中に携帯が鳴ると、「ごめん、どうしても、これだけは取らせて」と謝りつつ、電話を受けている(だが、ちゃんと、その分、取材の時間は延長してくれた。)このロケーションは、妻と初めて出会った場所だそうで、なんとしてもそこに決めたいとのことだった。具体的にどこなのかも教えてくれたが、契約に至ったのかどうかはわからない。

リアリティ番組では、最初から、ポールが拡大には積極的でない様子が強調されてきている。それをマークとドニーが推し進めるのだが、マークによると、それも兄弟愛のせいとのことだ。「長い間、ポールは、一生懸命働いてきた。その結晶を味わわせてあげたいんだよ。それに、僕だって自分の名前を使っているんだ。兄が成功するとわかっていないかぎり、自分の名前を使うことは、絶対にしないさ」と、過去にマークは語った。9人きょうだいの一番下として育ち、現在は4人の子の父であるマークは、「このビジネスを僕らきょうだいの子供たちに残せるものとしても、しっかり築いていきたい」とも考えている。ブルーカラー出身というルーツを忘れない彼は、わが子にウォルバーガーズでテーブルの片付けやオーダー取りなどの仕事もさせるそうで、「僕はオーナーの息子なんだぞ、などという、偉そうな顔はさせない」とも語っている。

拡大につきもののつまずきが、今回、こんな形で起こってしまったわけだが、ウォルバーグ一家が直接受けるイメージダウンは、それほどないだろう。しかし、フランチャイズも使って経営を広げることの難しさは、今回のことであらためて学ばされたかもしれない。新たな問題を乗り越えて、彼は、ビジネスマンとしても、さらに成長していくのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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