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ミーシャ・バートンに20万ドル(約2,000万円)支払い命令。映画の撮影開始時に現れず

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今年5月のミーシャ・バートン(写真:REX FEATURES/アフロ)

ミーシャ・バートンが、まだトラブルを起こし続けている。

アマゾンで今月25日に全米配信が始まるコメディ映画「Promoted」の監督ダニエル・リーフが、バートンを契約違反で訴訟、裁判所はバートンに20万ドル(約2,000万円)と利子の支払いを言い渡したのだ。今作の主演に決まっていたバートンは、2014年3月4日に撮影開始というスケジュールをしっかり言い渡されていたにも関わらず、その直前、勝手にヨーロッパ旅行に出かけてしまった。プロデューサーらは、撮影開始の前日に、バートンの母から「ミーシャはまだヨーロッパにいて、20日まで仕事に入れません」というメールをバ受け取っている。しかも、バートンは、ヨーロッパで遊びまわる様子を堂々とインスタグラムに上げていた。製作側は、当然激怒し、55万7,900ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしたというわけだ。

バートンは出演料を前払いしてもらっていた上、彼女が急遽出演しなくなったせいで、キャスティングをやり直すことになって撮影が遅延し、思いがけないコストがかかった。当時、製作側とバートンは示談で和解したが、バートンはその時の合意も守らなかったとリーフは主張している。

バートンが最近関わった訴訟沙汰は、これだけではない。バートンは、今年4月、自分が稼いだお金を盗用したとして、実の母を訴訟している。訴状で、バートンは、子供の頃から彼女のマネージャーを務めてきた母が、彼女の合意なく、780万ドルのビバリーヒルズの豪邸を購入したと主張。母と父は、自分がこの業界で仕事を始めてからというもの、ろくろく仕事を持たず、自分をATMのように使ってきたとも述べている。

さらに、その直前の3月には、コンテスト番組「Dancing with the Stars」に十分な準備をせずに出演し、審査員から「あれはタンゴじゃないよ。歩いているだけだよ」と酷評されるという出来事があった。

久々のメディアへの出演は、復活のチャンスにつながるかと思われていたが、逆効果となったわけである。

バートンはイギリス生まれ。5歳の時に家族とともにニューヨークに移住し、13歳で、「シックス・センス」(1999) に、死んだ女の子の役で出演した。大ブレイクは、2003年にフォックスチャンネルで放映が始まった「The O.C.」。南カリフォルニアのオレンジカウンティ(The O.C.)地区に住む裕福な高校生たちの生活を描くこのドラマは、初回放映時から若者を惹きつけ、バートンは一夜にして最もホットな若手女優となっている。

身長175センチで、すらりと長い脚をもつ、当時17歳だったバートンは、デザイナーたちからもちやほやされ、当時やはり注目されていたリンジー・ローハン、パリス・ヒルトン、ニコール・リッチーらとともに、トレンドセッターの代表となった。しかし、ほかの3人がそうだったように、バートンも夜遊びが激しく、いいかげんな仕事への姿勢にしびれを切らした「The O.C.」の製作陣は、彼女がほぼ主役であったにも関わらず、シリーズ途中で彼女が演じていたマリッサ・クーパーを殺すことに決め、彼女を番組から追い出した。

以後、彼女のキャリアは急降下。2007年には飲酒運転で逮捕され、車の中にはマリファナも見つかった。2年後には、自殺の傾向があるとして、精神病棟に入れられている。imdb.comを見ると、それ以後の彼女の出演作がいくつも挙げられているが、業界人ですら知らないものばかりである。

そんな状態にあるバートンを、今あえてなぜリーフが主演に起用したのかはわからない。バートンが仕事を必要としていたのは容易に想像できるが、せっかく得たのに無責任なことをしたという事実が明らかになった今、彼女の前途は、さらに多難になるであろう。

ところでかつて彼女とともにL.A.のナイトクラブを荒らしまくり、それぞれに警察のお世話になった仲間はどうしているかといえば、バートン同様30歳になったばかりのローハンは、今もゴシップネタを提供し続けている。年下のロシアの大富豪の息子と婚約したはいいが、彼にDVを受けていたらしく、最近そのことをイギリスのメディアに告白した(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160808-00060859/)。だが、その後も、婚約指輪をはめた姿がパパラッチされており、ロシアのテレビ局からインタビューをオファーされているとのことだ。ヒルトンは自分の名前を冠するビジネスを続けていて、最近も新しい香水「Gold Rush」を発売した。リッチーは2008年にミュージシャンのジョエル・マッデンとの間に長女を、翌年には長男を出産。2010年には正式に結婚し、今も幸せそうである。リッチーによる紹介で、キャメロン・ディアスはジョエルの双子の兄でバンド仲間のベンジーと出会い、昨年結婚した。結婚式には、グウィネス・パルトロウ、ドリュー・バリモア、ジェフリー・カッツェンバーグ、ジャッド・アパトーなどが出席している。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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