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ブランジェリーナ離婚:ブラピ「子供を持って、自分は世界一の幸せ者だと感じるようになった」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
家族連れで世界を飛び回ってきたブラッド・ピット(写真:Splash/アフロ)

ブラッド・ピットと、児童虐待。

同じ文の中で聞くことなど想像できなかったこのふたつの言葉が、アンジェリーナ・ジョリーによる離婚申請で、今、結び付けられている。

最初の妻ジェニファー・アニストンと結婚していた時から父親になることを夢見ていたピットは、ジョリーと一緒に大家族を築き始めてから、本当に幸せに見えた。筆者は、過去に何度かピットをインタビューしているが、アニストンと結婚していた頃は、取材も守りの態勢で、私生活を語ることに慎重だったのに、ジョリーと一緒になってからはずっとのびのびとした態度になり、子供たちのことも、自分のほうからどんどん語るようになったという印象をもっている。ジョリーはもともと取材ごときで神経質になったりせず、なんでも堂々と答える人だった。ピットの変化は彼女の影響かもしれないし、単に歳を取り、スターとしてのキャリアも長くなって成熟したからかもしれない。いずれにしても、その都度、彼の言葉からは、子供たちへの愛が、しっかり伝わってきたのである。

たとえば、2011年のインタビューで、「あなたにとって人生の分岐点はどこだったと思いますか?」という質問に、彼は、「キリスト教の信仰を捨てた時と、父になった時」と答えている。さらに、「人生で一番誇りに思っていることは?」という問いにも、「僕の子供たちだ」と答えた。この時の取材は、メキシコのカンクンで行われたが、「ここにも僕は息子たちを連れてきているよ」と誇らしげに告白し、「子供を持ってから、自分は世界で一番幸せな人間だと感じるようになった。毎日だ。親だったらみんなそうだよね」と語っている。

アメリカのど真ん中の小さな街で育ち、20代になるまで飛行機に乗ったことがなかったというピットと違い、彼の6人の子供たちは、幼い頃からプライベートジェットで世界を飛び回り、5つ星ホテルにも泊まれば、逆に、ジョリーの国連の仕事で、極端に貧しい地域にも訪れてきている。しかし、他人に対して敬意をもって接しなさいという、自分が親に教えられたのとまったく同じことを教えているので、基本的にはそんなに変わらないと、この時ピットは語った。彼自身は俳優になるために大学を卒業間近で退学しているのだが、子供たちには大学を出て欲しいかと聞くと、そうでもないという。「それは本人次第だよ。本人が何に興味をもっているかによる。成長の過程で、僕は、できるだけいろいろなものを見せてあげたい。そして、自分で自分は何をやりたいのかを決めてほしいんだ。もしそれが俳優業だったのだとしたら、僕は応援するよ」。

大勢の子供に囲まれたうるさい生活も、彼が望んだことだと言わんばかりだった。「もちろん、大騒ぎになることはあるさ。クレイジーだよ。でも、僕はそれが好きなんだよね。静かになると、最初は、『ああ、静かになった。なんてすばらしいんだ!』と思う。でも、30分もたつと、あの騒がしさが恋しくなるんだよ。誰かと誰かがケンカをしていたり、誰かがパパを呼んだりしている。その喧騒が」。

カンヌで行われた別のインタビューでは、家族全員で世界を駆け回る生活をこなせるのはすべてジョリーのおかげと、彼女のことを大絶賛していた。

「ママは荷作りが大得意。天才だよ。彼女はすごく細かいところまで考えて計画するんだ。スーツケースを抱えて飛び回る生活を、僕らはかなり気に入っている。みんな、自分の物は自分で持つよ。何か忘れたら、それだけのこと。僕とアンジーは、常に、どちらかが家にいられるように仕事のスケジュールを組んでいる。家族がいつも一緒にいられることを、僕らはとても重視しているんだ」。

父になったことで、映画作りについての姿勢も良い意味で変わったとも、この時、彼は語っている。「わが子が将来、僕の映画を見た時に、なんらかの意味を見い出せる映画を作りたい。大人になり、僕らが実際に何をしていたのかが理解できるようになった時、彼らに、パパは僕たちの誇りだと思ってほしいんだ。だからといって、アクションやコメディはやらないということじゃないよ。そういうジャンルは子供にとって意味があるものだから。そういう映画を一緒に見ることで、親子の絆は強まる。とは言え、昔は無責任なキャラクターを演じるのをおもしろいと思ったりしたけれど、今はそうじゃないね。今は、子供たちに『パパはしっかりした大人だ』と思ってもらえることを重視する」。

そんなピットを、ジョリーも、ずっと「最高の父親」と呼び続けてきた。筆者が2014年4月に行ったインタビューで、「6人の子育てとキャリアをどうやりくりしているのですか?」と聞いた時、彼女は「私にはブラッドという最高のパートナーがいるわ。彼は父親として最高の人よ。子供たちのことを心から愛している。それに、私たちは、幸運にも、交代で働くことができる。世の中のほとんどの人は、両親とも、いつも働かなければいけない状況にある。私たちのほうが、ずっと楽なのよ」と答えている。

しかし、今、ジョリーは単独親権を求め、ピットを子供たちの日常生活から追い出そうとしている。この2年ほどの間に、何が変わったのか。それとも、本当は、問題はすでにその頃からあったのか。

今月14日に起こったとされるプライベートジェット内での事件(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160923-00062474/)の詳細については、ピットとジョリーが言い争いになり、長男マードックス君(15)がママをかばって間に入ったところ、ピットが彼に乗りかかることになったという続報が出てきた。ピットは意図的にマードックス君に危害を与えたわけではないと言っているが、ジョリーの見解は違うようだ。

ピットは共同親権を得るべく徹底して闘う姿勢で、過去に故マイケル・ジャクソン、チャーリー・シーン、エヴァ・ロンゴリア、ラッセル・シモンズらの依頼を受けた70歳のベテラン離婚弁護士ランス・スピーゲルを雇った。一方でジョリーは、ビリー・ボブ・ソーントンとの離婚の時に雇ったローラ・ワッサーに再び依頼している。ワッサーは、つい最近、ジョニー・デップとアンバー・ハードの離婚でデップ側の弁護をしたほか、ライアン・レイノルズ、アシュトン・カッチャー、キム・カーダシアン、クリスティーナ・アギレラなどの離婚を扱っている。

アメリカでは、相手に相当な問題があり、子供の身に危険を及ぼす心配があると判断されないかぎり、裁判所は共同親権を与えることを選ぶ。どうしても単独親権が欲しいなら、ジョリーは、ピットがいかにひどい父親かを証明する必要がある。世界を揺るがせたこの破局ニュースは、今後、どんな秘密を露呈していくことになるのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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