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ライアン・レイノルズ、今日で40歳。劇的なカムバック、ふたりめの子供、「デッドプール」続編

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ライアン・レイノルズ夫妻には、つい最近ふたりめの子が生まれた(写真:REX FEATURES/アフロ)

ライアン・レイノルズが、米国時間の本日23日(日)、40歳になった。

この節目となる年、レイノルズには、人生を変えるすばらしい出来事が、すでにふたつ起こっている。ひとつめは、彼がプロデューサーと主演を兼任した「デッドプール」が爆発的にヒットしたこと。もうひとつは、妻ブレイク・ライヴリーとの間に、ふたりめの子供が誕生したことだ。

しかし、レイノルズはまた、この誕生日を、ちょっとした騒ぎの中で迎えてもいる。レイノルズと共に「デッドプール」を成功に導いたティム・ミラー監督が、レイノルズとの意見の衝突を理由に続編を降板したことが、米国時間22日に判明したのだ。以来、さまざまな意見がソーシャルメディアを飛び交っており、中にはレイノルズを非難するようなものも見られる。

レイノルズはカナダのバンクーバー生まれ。コメディ番組「Two Guys, a Girl and a Pizza Place」(1998-2001)、アクションコメディ映画「セイブ・ザ・ワールド」(2003)などで地道にキャリアを積み上げていった彼は、2008年、最もセクシーな女性と呼ばれるスカーレット・ヨハンソンと結婚し、世の男性から羨ましがられる存在となる。アクション超大作「グリーン・ランタン」(2011)の主役に選ばれ、自らも“最もセクシーな男性”の肩書きを手に入れて注目の人となるも、近年は出演作が立て続けに失敗。しかし、その間もずっと実現のために努力を注ぎ続けてきた情熱の一作「デッドプール」で、彼のキャリアは、新たな側面を迎えたのである。彼のここまでを、彼自身の発言と共に振り返ってみる。

コメディでスタート。「ウルヴァリン」で初めてデッドプール役に挑戦

テレビのコメディ番組「Two Guys, a Girl and a Pizza Place」にレギュラー出演したレイノルズは、映画のキャリアもコメディでスタートする。「Dick」(1999)、「Buying the Cow」(2002)、「Just Friends」(2005)など、当時の出演作の多くは日本未公開。主演作のロマンチックコメディ「Definitely, Maybe」(2008; 日本未公開)は批評家の評価も高く、2009年のサンドラ・ブロック主演作「あなたは私の婿になる」は、全世界で3億ドル以上を売り上げるという、ロマンチックコメディとしてはすばらしい成績を達成した。

「デンジャラス・ラン」(2012)のロケで南アフリカに行った時も、気づかれるとしたら「あなたは私の婿になる」の人としてだったと、後に彼は語っている。「僕はケープタウンで、ホテルではなく、普通のアパートで、ごく普通の人みたいに食品店で買い物をしたりしていたんだ。なのに、時々、道で声をかけられては、『あなたは私の婿になる』のDVDにサインしてくれと言われたりすることがあったよ。映画というものが世界の隅々までリーチしていることを、あらためて認識したね」(2012年のインタビューより)。

その間にも、レイノルズは、「ブレイド3」(2004) や、バイオレンスをお得意とするジョー・カナハン監督の「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(2008)に出演するなど、アクション映画の経験も積み重ねていく。2009年にはヒュー・ジャックマン主演の「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」でデッドプールを初めて演じるが、実は、デッドプールの独立した映画を作り、自分が主演する計画を彼が立てたのは、これより4年も前だった。彼はまた、「ウルヴァリン」でのデッドプールの描かれ方に不満だったことも公言している。

スカーレット・ヨハンソンと結婚。“最もセクシーな男”に選ばれる

2006年、男性誌「FHM」毎年恒例の「世界で最もセクシーな女性」で1位に選ばれたスカーレット・ヨハンソンは、ジャレド・レト、ジョシュ・ハートネットなどと交際歴があり、ベニチオ・デル・トロとも噂された、あこがれの美女だった。そんな彼女に初めて結婚を決意させたのが、レイノルズだ。

ふたりは2008年5月に婚約、同年9月には、マスコミに極秘でバンクーバーで結婚式を挙げる。当時、ヨハンソンは「アイアンマン2」でブラック・ウィドウ、レイノルズは「ウルヴァリン」でデッドプールを演じているところで、まさにスーパーヒーローカップルだった。しかし、レイノルズは、頑ななまでに、ヨハンソンに関することは絶対にインタビューで語らないという態度を貫いている。理由を聞くと、「公に向けて語ってしまうと、僕らの関係が安っぽくなってしまうから」と答えていた。

そして2010年には、レイノルズも、「People」誌の毎年恒例「生存する最もセクシーな男」で1位を獲得。この肩書きを得たことについて、当時、レイノルズはこのように語っている。

「セクシーじゃない男1位に選ばれるよりは、いいよね(笑)。まあ、ああいうのはどっちにしてもばかばかしいんだけどさ。もちろん、嫌な気はしないよ。僕の母はうれしかっただろうと思うし。でも、いろいろな要素が重なった結果なんだよ。もうすぐ映画が公開されるとか、そういうのが関係する。ずっと何もしていない人には、くれないものだよ」(2010年のインタビューより)。

その“もうすぐ公開される”彼の映画が、大型予算をかけた「グリーン・ランタン」だった。ニューオリンズのロケ地には、ヨハンソンも、時々、訪ねてきていたが、映画の公開を待たず、2010年12月、夫妻は離婚を決めた。

「グリーン・ランタン」の失敗、ブレイク・ライヴリーとの再婚

2億ドルの予算をかけ、2011年6月、夏のアクション娯楽大作として公開された「グリーン・ランタン」は、北米興行収入1億1,600万ドルという、期待を下回る結果に終わる。批評家の評価も最悪で、rottentomatoes.comによると、褒めたのはたった26%だった。シリーズ化を視野に入れていたが、この結果を受けて、次はなくなる。

2ヶ月後に公開された主演コメディ「The Change-Up」も、rottentomatoesの結果は25%で、北米興収は、ぱっとしない3,700万ドル。デンゼル・ワシントン主演の「デンジャラス・ラン」(2012)は良かったが、翌年のアクション映画「ゴースト・エージェント/R.I.P.D.」(2013)は、北米7位デビューで、rottentomatoesは13%。この頃になると、「ライアン・レイノルズは過大評価されていたのか」という声が、業界内で聞こえるようになる。

人が自分に対するいろいろな意見を持っていることについて、レイノルズ本人は、2013年のインタビューで、「もちろん、それを辛く感じることはあるよ。でも、いちいち気にしてはいられない。良いことでも、悪いことでも、全部ナンセンスと思わなくては。『この批評はすごく良いよ』と言われても、僕は、『いいよ、読みたくない』と言う。良いものがあるということは、どこかに悪いものもあるということだから」と答えている。

だが、「グリーン・ランタン」のおかげで、良いこともあった。同作品で共演したブレイク・ライヴリーと、映画の公開後に交際を始め、2012年9月に結婚、2014年12月には、長女が誕生するのである。ライヴリーは5人きょうだいの、レイノルズは4人きょうだいの末っ子。大家族を持ちたいという共通の未来図を抱いているだけでなく、ライヴリーの趣味は料理で、腕はプロ級だ。「僕は料理が大の苦手。好きだというフリもしないよ」と、過去のインタビューで話していたレイノルズは、理想の妻を見つけたのである。

一方、彼にとって情熱の作品「デッドプール」も、あと少しで実現するかどうかというところまで来ていた。しかし、スーパーヒーロー映画は、より多くの人に見てもらえることが大前提なため、過激なせりふを含むR指定の映画にしたいというレイノルズとミラー監督は、なかなかスタジオからのゴーサインをもらえないでいた。だが、ある時、映画のテスト映像がネット上に流出。それに対するファンの熱狂的な反応を見て、スタジオは、スーパーヒーロー映画にしてはかなり低予算の5,800万ドルで作るということを条件に、ゴーサインを出す(テスト映像は、ミラーが意図的に流出したと見られている)。彼があまりに「デッドプール」に没頭しているため、ライヴリーに、「あなたはデッドプールとも結婚しているのね」とよく笑われたと、完成後、レイノルズは告白している。

見事なカムバック、「デッドプール2」の行方

レイノルズの努力は、最高の形で実を結んだ。バレンタインデーという、スーパーヒーロー映画にはおよそふさわしくない週末に公開された「デッドプール」は、全世界で7億8,600万ドルを売り上げ、R指定映画としては史上最高記録を打ち立てる。Rottentomatoesでも84%と、批評家受けも良く、お金を使わずに効果を上げるクリエイティブなマーケティング戦略にも関わったレイノルズは、尊敬を集めた。

「ファンには気に入ってもらえるだろうとわかっていた。でも、ここまで成功するとは僕も思わなかったよ」と、今年4月のインタビューで、レイノルズはうれしそうに語っている。実現までには長い年月がかかったが、「25年もプロとして演技をやってきたし、時間がかかったおかげでかえって良かったということも時にはあるものだと、今の僕はわかっている。やりたい時に実現しなかったとしても、希望をもってがんばり続けなきゃいけないんだ」(今年4月のインタビューより)。

ミラーを監督に選んだのもレイノルズ自身で、レイノルズは、「6年前、20人ほどの監督に会った。もっと経験豊かな人もいたが、ティムに会って、この人だと思ったんだ。彼は、デッドプールのどこが特別なのかを理解していた。それに、ティムは、1ドルかけたものを10ドルに見せてくれたよ。予算の低い今作で、それはとてもありがたかった」と、彼のことを褒めていた。

レイノルズとミラーは、1作目の公開前から2作目の準備を進めてきたが、結局、ミラーは降板。Thewrap.comが伝えるところによると、ミラーが続編をもっとスタイリッシュなビジュアルをもつものにしたがったのに対し、レイノルズは下品なジョークを多く含む、コメディの要素を強く押し出すものにしたがったとのことだ。キャスティング面でも意見の相違があり、スタジオが最終的に主演俳優であるレイノルズの味方をしたことで、ミラーが出ていくことになった。

20世紀フォックスは、今年4月のシネマコンで、レイノルズ主演、ミラー監督による「デッドプール」続編を2017年に公開すると、正式発表している。降板を受けて、ミラーは、やはりフォックスが製作する別の作品「Influx」を監督することになりそうな気配だ。1作目の脚本を書いたレット・リースとポール・ワーニックは続投する。

4月のインタビューで、レイノルズは、「デッドプール以上に僕に向いている役はない。できるものなら、あと50年、デッドプールを演じ続けていきたいよ」と夢を語っていた。50年は極端だとしても、できるかぎり長く続けていきたいというのは、本音だろう。それはすべて、2作目が1作目以上に、いや、少なくとも同じくらい成功するかどうかにかかっている。それはまた、ライアン・レイノルズが今日始めたばかりの40代という時期を、大きく定義するものになっていくのだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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