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「ローグ・ワン」ディエゴ・ルナ:「この役のためには、一生をかけて準備してきた」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
Courtesy of LucasFilm Ltd

「今、どんな気分かって?最高だよ。僕は『スター・ウォーズ』の大ファンで、一生この役のための準備をしてきたようなものなんだ。」

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」で、ディエゴ・ルナが演じるのは、反乱軍のスパイ、キャシアン・アンドー。彼と仲間たちは、帝国軍が開発した究極の武器デス・スターの設計図を盗むべく、危険な旅に出る。

メキシコ生まれのルナは、これまで主に、「天国の口、終わりの楽園。」(2001)「ミルク」(2008)といった、アートハウス系映画で知られてきた。「ターミナル」(2004)や「エリジウム」(2013)のようなハリウッドのメジャースタジオ映画にも出ているが、「スター・ウォーズ」映画で準主役を演じるというのは、彼にとって、まるで新しい経験だった。

今から8週間ほど前、ビバリーヒルズのホテルでの取材に現れたルナは、「役をオファーされてから今日にわたる間には、興奮、恐怖、疲労、いろんなことを味わった」と告白している。「でも、この映画のことも、自分のことも、今、すごく誇りに感じているよ」と語る彼の表情は、純粋な喜びに輝いていた。

Courtesy of LucasFilm Ltd
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あなたと「スター・ウォーズ」の関係は、どんなものでしたか?

初めて「スター・ウォーズ」を見たのは、6歳の時だ。アニメ以外の映画を見たのは、あれが初めてだったと思う。少なくとも、僕が覚えているかぎりではそう。「漫画じゃないものを見るんだ!僕はもう赤ちゃんじゃないぞ」と感じたように思うよ。それは、従兄弟たちの仲間入りをさせてもらう手段でもあった。従兄弟たちの中で、僕は一番年下。みんなはもう「スター・ウォーズ」のファンだったから、僕もその話に入れてもらいたかったんだよね。去年のクリスマス、みんなで集まった時には、従兄弟たちからさんざん「ローグ・ワン」のことを聞かれたよ。僕は、「ずいぶん変わったなあ。昔は僕が、『ねえ僕も遊ばせて』、『ねえ僕にもこれ使わせて』とお願いする側だったのに」と、心の中で思っていた(笑)。

この役を演じる上で、一番難しかったのはどの部分でしたか?

プレッシャーを捨て、仕事に集中すること。ほかのことは忘れて、製作チームと一緒にこのストーリーを正しく語っていくことだけを考えないといけなかった。ソーシャルメディアや外の世界と距離を置いて、何を言われているか知らないようにしようと心がけたよ。「スター・ウォーズ」に関しては、みんながそれぞれの意見を持っている。「スター・ウォーズ」についてまったく知らないという人は、世界にそんなにたくさんはいない。撮影の時は、それが一番大変だったね。でも、撮り終えてしまった今は、すごく誇りに思っているし、興奮しているよ。ファンイベントにも出席したけれど、そこには大勢のファンが集まっていて、みんな少しでもこの映画について何かを見たいと切望していた。そして何か見るたびに大きな歓声が起こったんだ。あんな体験をしたのは、初めてだよ。いつもは逆なんだ。「(僕の出たこの映画の映像を)30秒だけでもいいから見てください!」「この映画、きっと気に入っていただけると思うんです!」と、こっちがお願いするのが普通。なのに、「ローグ・ワン」では、みんながドアをノックして、「何か見せてくれる?もういいよね?」と聞いてくるんだ。

Courtesy of LucasFilm Ltd
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脚本を初めて読んだ時、どんな感想を持ちましたか?

衝撃を受けたよ。僕らが生きる社会について語る、モダンなものだったからさ。「スター・ウォーズ」の世界に忠実でありつつも、現代について多くを語っている。でも、70年代の「スター・ウォーズ」もそうだったんだよね。「遠い昔、はるか彼方の銀河系で」というから、いろんなことについて触れるのが許されるんだよ。

Courtesy of LucasFilm Ltd
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今作には、若い人たちのためのすばらしいメッセージがある。自分の手で変化を起こそうということは、そのひとつ。ここに出てくるヒーローたちは、僕らみたいな人たち。その人たちが、力を合わせるんだ。ひとりでは難しいかもしれないけれど、同じ志をもつ人たちと力を合わせれば、大きな動きを作り出せるかもしれない。普通の人たちが、普通じゃないことをする。変化は、そういうふうに生まれるんだ。

ハリウッド映画の多様性の欠如については最近厳しく批判されてきていますが、今作のキャストは多様性に満ちていますよね。

それが、僕らの生きる世界だからさ。世界は、いろんな人種やいろんな文化で構成されている。この映画は、それを反映している。僕はむしろ、変わっていっているのは観客の側だと思うんだ。今日の観客が、自分たちの見たいような映画を求めているんだよ。それはつまり、自分たちの世界を受け入れるような映画。観客は、そういうメッセージを発信している。ルーカス・フィルムと(同社プレジデントの)キャスリーン・ケネディは、その声に耳を傾け、行動に出た。今作に関わらせてもらえたことを、僕は強い誇りに思っているよ。今の世の中で「ローグ・ワン」が存在する理由は、たしかにあるんだ。70年代、最初の「スター・ウォーズ」が出てきた時に、存在する意義があったのと同じようにね。

Courtesy of LucasFilm Ltd
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「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」は16日(金)全国公開。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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