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ミラ・ジョヴォヴィッチ:「今回のアリスは、異常に胸がデカいわよ」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ミラ・ジョヴォヴィッチ(右)、夫アンダーソン(左)、長女エヴァー(中央)(写真:アフロ)

ミラ・ジョヴォヴィッチが、「バイオハザード:ザ・ファイナル」で、またもやかっこいいスタントを披露する。アクション映画の経験はたっぷりあるジョヴォヴィッチだが、今回は特別な苦労があった。今月17日に41歳の誕生日を迎えた彼女は、第二子を生んですぐ、仕事に復帰したのである。

厳しい食事制限とワークアウトで体重を落とすのももちろんだが、母乳を与えながら撮影を行うのは、思っていた以上に大変だった。しかし、そんなこともまた、シリーズ最終章に、特別な思い出を加えてくれたと、ジョヴォヴィッチは振り返る。

1作目でポール・W・S・アンダーソン監督と組んだのは、リュック・ベッソンと離婚をしてシングルに戻っていた時。やがて、アンダーソン、長女エヴァーちゃんと3人で撮影現場に入ることが普通になってきたが、今作ではもうひとり家族が増えたほか、エヴァーちゃんとの初共演も果たしている。

L.A.でインタビューに応じてくれたジョヴォヴィッチは、「私たちの家族はゾンビが築いたの」と冗談を言って笑う。だが、彼らとも、彼女がずっと演じてきた主人公アリスとも、これでお別れだ。

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撮影開始が迫った頃、第二子の妊娠が発覚し、あなたとポールは、撮影延期を決めましたね。難しい決断でしたか?

ええ、難しかったわ。妊娠がわかったのは、ポールが撮影準備のために南アフリカに飛び立とうとしていた前日だったのよ。長女を妊娠した時、私はすごく太ったので、今度もそうだろうとわかっていた。スタントダブルを使うことはできるのだろうけど、自分のアクションを全部他人にやってもらうのは、嫌だったのよね。スペシャルエフェクトで私を普段と同じ体型に見せることも、可能ではある。でもそれはばかばかしすぎる。上手なスペシャルエフェクトは、何も手が施されていないように見えるものなの。つまり、多額のお金が使われても、私はあくまで普通に見えるだけで、映画が良く見えるわけではないということ。それはお金の無駄遣いというものでしょう。それに、高齢出産だし、何かあったら、私たちは絶対自分を許せないわ。どんな映画にも、そこまでの価値はない。

この妊娠はまったく予測していなかったのですか?

ええ、驚きだった。ふたりめは欲しかったのよ。でも、まずは長女エヴァーに100%を注ぎたかったから、すぐには生みたくなかったの。ここ数年、エヴァーに妹か弟が欲しいと言われていて、私たちもそうしたかったんだけど、35歳を過ぎると簡単にはいかなくて。長女と次女の間に年齢差ができたのは、良かったと思っている。エヴァーはやきもちも焼かないし、すごく良いお姉さんよ。赤ちゃんが泣いたら、可笑しな顔をしてみせて、赤ちゃんを笑わせたりしてくれるの。

出産後、すぐに体重を戻さなくてはいけなかったのですよね。

出産2ヶ月後に、私はまずローマで「Zoolander 2(日本未公開)」を撮影して、次に今作のために南アフリカに飛んだの。その間、すごく厳しい食事制限と、激しいワークアウトを行ったわ。ハードだったけど、私は結果を出してみせた。でも、現場では、母乳という新たな問題があったのよね。2時間ごとに胸が巨大になって、「みなさん、ごめんなさい!また時間だわ」という状況だったのよ。でも、ポールに、「もう本当に行かないと」と言うと、彼はいつも「今の状態でもう1ショット撮らせて」と言った(笑)。そういうわけで、今回のアリスは、いつもよりすごく胸がデカいのよ。

シーンによる違いは、観客にもわかるでしょうか?

絶対わかるわ。とくに私が逆さまになるアクションシーンがそれね。胸が顎にくっつくほど大きくなっているわよ。見ていて笑っちゃうわ。衣装係の人たちには、今回ずいぶん迷惑をかけちゃったけど。

今回、エヴァーちゃんが出演することになったのには、どんな経緯があったのでしょうか?

娘は、撮影現場で育った。「バイオハザード」だけでも、3作の現場を見ているのよ。エヴァーは、5歳の時から、自分は女優になるんだと言っていた。私は、「女優になりたいならオーディションを受けなきゃいけないわ。オーディションを受けるためには、まず字が読めないとね。オーディションでは脚本の一部を渡されるのよ」と言った。そうしたら彼女は一生懸命読み書きを勉強した。「もうオーディションを受けてもいい?」と言うから、「その前に演技のレッスンを受けたほうがいいわね」と言うと、「じゃあそれに行かせて!」と言ったわ。そのクラスで、彼女はめきめきと力を見せつけていったのよ。

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そして7歳の時、彼女は、この映画に出たいと言ったの。ポールは、良いだろうと言って、若い日の私の役をエヴァーにあげた。セリフのない小さな役よ。その映像が良かったので、ポールは彼女にレッドクイーンの役を試させてみようと言ったの。私は反対したわ。責任が重すぎるから。でも、本人がやりたがった。プロデューサーたちも、彼女のテスト映像を気に入ってくれた。それで彼女は正式に役を得たのよ。彼女は、この体験をとても喜んでいる。南アフリカから帰ってきてからも、「どんどんオーディションを受けたい。私はもう映画に出たんだから、プロなのよ」と、やる気と情熱を見せているわ。彼女には、持って生まれた才能がある。ディズニー映画やら、子供向けの番組は好きだけれど、あれらを見ていても、やりすぎだと彼女にはわかっているの。何がリアルで、何が自然か、彼女には直感的にわかる。ある時も、彼女は脚本を読んでいて、叫ぶべきところで、あえて小声で囁いた。それを見て、鳥肌が立ったわ。「ハーレイ・ジョエル・オスメント並みだわ!」と思った。

娘さんを子役スターにしてしまうことに、不安はありませんか?

私は、娘が愛することをやらせてあげたい。娘はそれを見つけたのよ。でも、注意しながら応援するわ。たとえば、学校を犠牲にしてテレビ番組をやらせたりはしない。学校は、絶対、普通に行かせる。夏休みの間に何かやるのなら賛成よ。子供は9時間しか仕事ができないとはいえ、それをやりつつ学校もこなすなんて、すごく大変なこと。彼女のやりたいことを支えつつも、そのせいで燃え尽きないようにしたい。

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映画はこれで終わってしまいますが、アリスがゲームの中で生きるようになってくれたらいいのにと思ったりしますか?

それは前からずっと思ってきたことよ。アリスがゲームにも出てくれたら素敵だわ。ポールがゲームとは違うキャラクターを出してきたのは、もっと自由が欲しかったからなの。ゲームに登場する、すでに多くに愛されているキャラクターだと、いろいろ制限があったりするから。(ゲームに出てくる)ジル・バレンタインやクレア・レッドフィールドより、アリスのほうがいろんなことをやらせられるのよ。

アリスはずっと悪と闘ってきました。あなた自身にとっての悪とは?

子供をふたりも生んだ今となっては、食べ物すべてね。子供を生んだ後は、美味しいものすべてが悪になる。幸せな気分にはさせてくれるけど、お尻に肉をつけるのよ。ハンバーガーやドーナツを食べたら、またジムに行かないとね(笑)。

「バイオハザード:ザ・ファイナル」は、23日(金・祝)全国公開。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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