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グラブタクシー、競争激しいインドネシアの「オジェック(バイクタクシー)」市場に参入

佐藤仁学術研究員・著述家

東南アジア最大のタクシー配車アプリ「グラブタクシー」が2015年5月からインドネシアのジャカルタで「バイクタクシー(グラブバイク)」のサービスを開始した。「グラブタクシー」は2014年12月にソフトバンクが2 億 5,000 万ドル(約300 億円)出資して最大の株主になっている。孫社長の後継者に指名されたニケシュ・アローラ氏も注目している企業である。

グラブタクシーは2012年に創業され、マレーシアでのサービスを皮切りに、フィリピン、タイ、シンガポール、ベトナム、インドネシアでサービスを提供しており、数万人の運転手がタクシーの配車、予約を受け付けている。利用者はアプリからタクシーを予約でき、アプリはすでに440万ダウンロードされている。スマートフォンが急速に拡大している東南アジア6か国で440万ダウンロードは決して大きくないが、今後の成長の余地は大いにある。またシンガポールに研究開発センターも設立した。

■競争激しいインドネシアの「オジェック(バイクタクシー)」市場

今回、グラブタクシーがインドネシアで提供するのは車(タクシー)でなくバイクで人を運ぶ「バイクタクシー(グラブバイク)」だ。インドネシアでは「オジェック(OJEK)」と呼ばれる庶民の足である。グラブタクシーが提供する「バイクタクシー(グラブバイク)」は2014年に開始されたベトナムのホーチミン、ハノイについでジャカルタが3都市目である。

インドネシアには2010年からサービス提供している「バイクタクシー」の配車、予約アプリ「Go-Jek」がある。「Go-Jek」ではバイクタクシーでの人の輸送以外にも100万ルピア(約1万円)までの買い物をして届けてくれるサービス、企業へのケータリングや荷物の宅配(いわゆるバイク便)も提供している。

インドネシアのジャカルタは世界でも交通渋滞がひどい都市の1つである。自動車での移動では渋滞に巻き込まれて、もの凄く時間がかかる。遅刻の理由はほぼ、交通渋滞である。公共バスはあるが、混雑しているし、バスも渋滞に巻き込まれる。現在、MRTの建設が進められているが、交通渋滞がすぐに解決されることはない。

交通渋滞がひどいジャカルタでは、バイクが大人気である。老若男女、多くの人がバイクで移動している。渋滞に巻き込まれている自動車の隙間を潜り抜けながら、前へ前へとバイクを進めていっている。インドネシアで「オジェック」と呼ばれるバイクタクシーは庶民にとって非常にポピュラーな移動手段である。

ショッピングセンターやデパート、オフィス街の入り口や駐車場近辺には、客待ちをしている「オジェック(バイクタクシー)」が非常に多い。だいたい5,000ルピア(約50円)から乗れる。もちろん目的地までの距離、荷物の量、雨が降っているかいないか、時間などに応じて料金は異なり、乗る前に運転手と交渉する。観光都市でないジャカルタには観光客がほとんどいないから「オジェック(バイクタクシー)」でぼったくられることはほとんどない。オジェックの運転手はローカルごとの縄張りというかコミュニティみたいなものがあるので、悪いことをしようとはしない。

バイクがあまりにもポピュラーなジャカルタでは、個人のバイクを用いてバイト感覚でバイクタクシーをやっているインドネシア人もいる。仕事が終わった夜や週末に、自分のバイクに知人、友人などを乗せて目的地まで運んであげて、小遣い稼ぎをしているが、これはオジェックの運転手ではない。このような人らがたまに悪いことを犯すようだ。

このようにジャカルタでは「オジェック(バイクタクシー)」がすでに多く利用されている。スマートフォンのアプリで予約をしなくとも、その辺で「オジェック(バイクタクシー)」に乗れる。スマートフォンで予約して、バイクが来るのを待っている間に、別のオジェック(バイクタクシー)がたくさんやって来て、安い料金で連れて行ってくれる可能性が高い。

そして「Go-Jek」は2010年から「バイクタクシー」のサービスをジャカルタで提供しており、人の移送だけでなく買い物サービスからケータリング、バイク便もやっている。まだジャカルタで携帯電話やスマートフォンでオジェックを手配できる「Go-Jek」を知っている人は多くないだろう。

グラブバイクは競争激しいジャカルタの「オジェック(バイクタクシー)」市場へ後発の参入であることから、相当な差別化が求められる。自動車(タクシー)は大きさや種類が多いが、バイクの差別化はあまりない。さらにジャカルタには「バジャイ(オート三輪タクシー)」や「コパジャ(中型バス)」「ミクロレット(小型バス)」など多くの移送手段がたくさんある。

これからグラブタクシーのグラブバイクは交通渋滞が激しく、競争激しいジャカルタの「オジェック(バイクタクシー)」市場で戦っていかなければならない。

■日本人はジャカルタでは車での移動を

インドネシア語が出来ない、ジャカルタの道路がわからないと乗車は難しいから、日本人がジャカルタで「オジェック(バイクタクシー)」で移動するのはハードルが高い。

そしてジャカルタは暑いし、スコールが降ることも多く、郊外では道路が悪い、砂埃、ゴミや油の強烈な匂い。ヘルメットも他人が利用したものだから臭い。さらにバイクは事故も多いので日本人にはジャカルタでのバイクでの移動はお勧めしない。交通渋滞に巻き込まれるが信用できる運転手のいる自動車で移動した方がよい。

▼ジャカルタではバイクが市民の足であり、バイクタクシーは重要な移動手段である。

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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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