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Uber、インドネシアでラマダン期間に食事配達サービス「UberBuka」提供

佐藤仁学術研究員・著述家

Uberは東京でもサービスを提供しているスマートフォンのアプリでタクシーの手配が可能なサービスである。

インドネシアでもUberは他国と同様にスマートフォンのアプリでタクシーの手配ができるサービスを展開しているが、インドネシアではまだUber知らない人が多い。インドネシアでのUberはUber X(小型車)は初乗り3,000ルピア(約30円)でUber Blackは初乗り7,000ルピア(約70円)である。インドネシアのタクシーといえば圧倒的にBlue Birdが有名である。初乗り料金はそのBlue Birdとほとんど変わらない。

またインドネシアでのUberはクレジットカードのみで支払が可能であるが、インドネシア人はクレジットカードを所有している人の方が少ない。Blue Birdのタクシーでもクレジットカードは利用できない。しかしタクシーは現金払いが当たり前のインドネシア人にとって、Uberのクレジットカード支払は面倒である。

そのインドネシアのUberが、ラマダン期間に、フードデリバリー(食事配達)サービス「UberBuka」のトライアルを始めた。

■ラマダン期間に提供する食事配達サービス「UberBuka」

先週からインドネシアではラマダンが始まり、7月中旬まで1か月間続く。インドネシアは世界で一番ムスリムが多い国である。ラマダン期間、ムスリムは日の出前にスフールという食事をとり、日の出から日没まで食べ物と飲み物を断つ。日没後に家族や友人が集まってイフタールと呼ばれる一日の断食の終わりの食事をする。

Uberが提供するフードデリバリー(食事配達)サービス「UberBuka」では、スマートフォンのアプリで、ユーザーは、Uberが提携している11のレストランから食事を選んで、それを日没後のイフタールの食事時に配達してもらうことが可能なサービスである。ラマダン期間中の月曜から金曜の夕方5時から8時までにジャカルタの中心地のみにデリバリーされる。食事はオーダーされてから10分以内に配達することを約束しているが、ラマダン期間の日没前の大渋滞で本当に注文されてから10分以内での配達は可能なのだろうか。

Uberでは2014年秋に「UberEats」という同様のフードデリバリーサービスをニューヨーク、ロスアンゼルス、シカゴ、トロント、バルセロナで始めたが、利用者はほとんどいない。Uberとしてはインドネシアではラマダン期間のみのトライアルと位置付けているので、2015年7月15日で終了予定である。

■Uberが狙うのは食事配達よりも、インドネシア在住の外国人?

インドネシアではUberをスマートフォンで手配しなくても、町中にBlue Birdのタクシーが走っており、さらに大渋滞のジャカルタではいつ車がくるかわからないので、人々の多くはOJEKと呼ばれる「バイクタクシー」を利用しており、そちらの方が大渋滞のジャカルタでは車よりも効率的で安上がりだから人気がある。インドネシアは車社会で車やバイクがないと移動ができないので、Uberにとっても成長は期待できるが、競争は非常に厳しい市場である。

Uberはいろいろと新たな試みでインドネシア市場に入り込んでいこうとしている。

しかし、Uberにとって一番良いのは英語ができる運転手を揃えて、ジャカルタに住んでいるインドネシア語のできない外国人をターゲットにタクシーの手配をするのが一番良いのではないだろうか。

Blue Birdタクシーは安全なので、外国人だからと言って、騙されて「ぼったくられる」問題はほとんどないが、多くの運転手は英語を話せないので、インドネシア語の出来ない外国人にとっては、タクシー乗車中の道案内や待機の依頼などで非常に面倒な思いをすることが多い。そしてインドネシアに住んでいる外国人はほとんど全員がクレジットカードを所有している。Uberがインドネシア市場で狙うべきは、ラマダン期間のムスリム向けのフードデリバリーサービスよりも、英語が出来る運転手の確保と、インドネシア在住の外国人への営業ではないだろうか。

インドネシアのUberでは乗車料金の20%がUberのコミッションで、残りが運転手の給料になる。英語ができる運転手にはもっと給料をあげるなど雇用の工夫をしないと、優秀な運転手も集まらないだろう。

▼ジャカルタにはBlue Birdタクシーが多く走っている。

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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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