パナソニックの自律搬送ロボット、シンガポールの病院で稼働:やってくるロボットの時代と変わる産業構造
パナソニック アジアパシフィックは2015年7月、シンガポールのチャンギ総合病院において同病院の新棟の拡張を受けパナソニックが開発した自律搬送ロボット「HOSPI」の導入範囲を拡大したことを発表した。2013年10月に販売された病院内の薬剤および検体などを自律搬送するロボット「HOSPI」が海外で導入されるのは初めてのことである。
シンガポールは「スマート国家」を目指すことを政府の方針としており、1,000床超のチャンギ総合病院では2015年2月より「HOSPI」の本格導入に向け共同で実証実験を行ってきた。
チャンギ総合病院は新棟を開設したため入院患者が増加し、さらに誤配のリスクを未然に防ぐことが必要な医療品や検体、カルテ等の搬送を確実に行う事を目的に同ロボットの可動範囲を拡大する。また「HOSPI」は自動搬送であるため、24時間稼働が可能で、人員の不足や、人の手を必要とする医療活動により多くの人員を振り分けることができる。
チャンギ総合病院のアシスタントCEOであるセリーナ・シャー氏は「スタッフが高齢化する中、施設の規模が拡大し、移動距離が伸びつつある課題に対して“HOSPI”はシンプルで現実的な形で、院内の人手と時間の節約に貢献します。こうした自律ロボット技術の採用で、人的リソースの最適化と生産性の改善が可能になりました」とコメントしている。
■やってくるロボットの時代
ロボットの多くは現実の利用シーンの中に登場してきている。最近はパナソニックだけでなく、ソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」など、ロボットへの注目と期待が高く、国内外の多くの企業が参入している。
もはやロボットなしでは仕事、生活ができない時代が近づいてきている。これから将来、ロボットはもっと日常生活の中において、たくさん活躍するだろう。今まで、人間がやっていた仕事の多くをロボットが代替してくれる時代になる。この流れは止まらない。人間は人間にしかできないことをやればよい時代になる。
■変わる産業構造
そしてロボットの登場によって、今まで人間がやっていた多くの仕事と産業はなくなっていく。同時に新たな仕事、産業も生まれてくる。
かつて自動車が登場した時に、馬車を作っていた人、馬の世話をしていて人、馬車を操る御者の仕事は大きく減少したが、新たに自動車や石油、道路建設などの産業が勃興してきた。ロボットの登場は、それと同じくらいのインパクトがある。
ロボットの登場によって、「自分の仕事や所属している業種が無くなるのではないか」と危惧している人は、早いうちにロボット時代に、自分は何ができるのかを見越しておくといい。
■ロボット時代に重要な世界規模での雇用確保
今回、パナソニックのロボットは、「スマート国家」を目指しているシンガポールで導入された。周辺諸国からの出稼ぎ労働者がやっている多くの仕事もロボットに代替されていくだろう。日本や先進国は少子高齢化で労働力が不足していることからロボットの登場は経済に貢献することになるが、世界規模ではアジア、アフリカを中心に人口は爆発的に増加している。
全世界の労働力と雇用はロボット時代においても確保されるのだろうか。ロボットによって雇用を奪われる新興国、貧困国の労働者の受け皿も考えておかないといけない。世界中の多くの犯罪および暴動やテロは仕事がない若者によって引き起こされている。
搬送物の取り出しにはIDカードによる照合が必要なので、搬送物に対する「いたずら」や盗難、損傷等を防ぐセキュリティ機能を備えている。無線LANを備えることで、エレベータの到着信号を受信して自動乗降を可能とし、分散した各施設への搬送できる。
また、病院内マップデータがプログラムされて、各種センサーを装備しているため、障害物や車いすで移動する患者などを自動的に避けて走行する。HOSPIはコントロールセンターの管理によって病院内のどこにいるか、常時その位置の把握と記録ができる。
HOSPIの本体サイズは630×725×1,386mm(幅×奥行き×高さ)、重量は170kg、内蔵の鉛蓄電池により約9時間の連続運転が可能。フル充電時間は約4.5時間。移動速度は最大1m/秒。約20kgの荷物を運ぶことができ、薬剤トレー6段相当の荷物を搬送できる。