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Twitter:広告売上の63%がアメリカ、ユーザーが拡大する米国外市場で求められる収入基盤

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Twitterは2015年7月28日、2015年第2四半期(2015年4〜6月)の決算を発表した。売上高は前年同期比61%増の5億200万ドル。ただし、研究開発費などが嵩んで、純損失(赤字)は1億3,700万ドルで、前年同期の1億4,500万ドルから赤字が縮小した。

■収入の90%が広告収入で、そのうち88%がモバイル広告

Twitterの売上高のうち90%は、広告収入である。今期は前年同期比63%増の4億5,200万ドルで、そのうち88%をモバイル広告だった。クリスマスシーズンで売上が増加する2014年Q4の売上が4億7,900万ドルだったことから、今期の5億200万ドルはかなり大きく売上を伸ばした。

▼Twitterの売上高の推移および広告収入とその他の比率

(Twitter発表資料を元に作成)
(Twitter発表資料を元に作成)

■広告売上全体の約63%はアクティブユーザー6,600万人のアメリカ市場から

月間アクティブユーザー(MAU)は全世界で前年同期から15%増の3億1,600万人。微増である。Facebookのアクティブユーザー数が全世界で14億人以上と考えると、同様に知名度の高いTwitterのアクティブユーザー数の伸びは鈍化している。

全世界のほとんどの人がTwitterにはモバイルでアクセスしており、モバイルからのアクセスはMAU全体の約80%を占めている。

月間アクティブユーザー(MAU)は全世界で3億1,600万人のうちアメリカが6,600万人で、ほとんど大きな伸びはない。アメリカ市場はTwitter以外にもコミュニケーション、情報発信のツールは多数利用者が存在しており、今後もアメリカ市場においてTwitterの利用者が急激に増加することは期待できない。

そしてアメリカの6,600万人のTwitterユーザーがTwitterの広告収入の63%を稼いでいるのだ。地域別の広告売上高を見ると、アメリカでの売上高が前年同期比53%増の3億2,100万ドル、アメリカ国外での広告売上高は同78%増の1億8,100万ドルだった。国外市場も大きく伸びているものの、広告売上高に占めるアメリカ市場の比率は63.3%と非常に大きい。

▼広告収入の地域別推移

(Twitter発表資料を元に作成)
(Twitter発表資料を元に作成)

▼アクティブユーザー数の地域別推移

(Twitter発表資料を元に作成)
(Twitter発表資料を元に作成)

■増加する米国外市場でのユーザーと広告収入増に向けた取組み:香港・シンガポールに事務所、インドで新サービス

Twitterの広告収入はアクティブユーザーが全体の20%のアメリカ市場が大半を占めており、同社の収入を支えている構造となっている。そしてアメリカ市場でのTwitterユーザー数は6,600万人でほぼ横ばいである。Twitterにとって、今後も拡大してくるアメリカ国外のユーザーからの広告収入は非常に重要になってくる。

Twitterは2015年3月には香港に事務所を開設した。Twitterへのアクセスが遮断されている「中国本土への進出に向けた足がかり」という分析が多いが、たとえ中国でTwitterへのアクセスが許可されたとしても、中国市場では既に中国人は新浪が提供している「微博(Weibo)」が大人気である。Twitterとしては中国市場でTwitterのユーザーを獲得するよりも、グローバル規模に展開を進めている中国企業からのTwitterへの広告出稿が重要な狙いであろう。

またTwitterは2015年6月にはシンガポールに地域本部を新設した。アジア太平洋地域での販売、マーケティング、イノベーションの拠点として急成長しているアジア地域のテコ入れを行った。

さらに2015年1月にはインドのモバイル広告企業ジップダイヤルを買収した。同社はインドで「ユーザーが特定の電話番号に電話をしてつながる前に切ると、プロモーションの電話が折り返しかかってきたり、テキストメッセージを送られてくるサービス」を提供している。ユーザーは興味のある企業や商品があった場合、その特定の番号に電話をかけて、すぐに切るからユーザーは通話料がかからない。そして企業は、電話をかけてくれたユーザーに対して広告配信などができる。日本では想像しにくいがインドのような新興国では「ワン切り」が非常に多いので、市場環境に合わせたサービスとなっている。

Twitterは鈍化ながらもユーザー数は伸びており、売上も増加しているが赤字である。Twitterの収益構造は90%以上が広告収入であり、この構造はすぐには変わらない。これから大きくユーザー数の伸びが期待できないアメリカ市場からの売上にいつまでも依拠してはいられない。ユーザー数が拡大しているアメリカ国外市場での収益基盤を早期に固めておく必要があるだろう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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