LINEもトップシェアを狙う:群雄割拠のインドネシアのメッセンジャーアプリ市場
LINEは2015年7月30日、2015年第2四半期(4~6月期)の業績を発表した。売上高は前年同期比37%増の278億円。月間アクティブユーザー数は全世界で約2億1,100万人となった。
■LINEのグローバル展開:インドネシアへの注力を宣言
グローバルにおけるユーザー数および月間アクティブユーザー数は引き続き増加しているとのことで、LINEの出澤社長は、以下のようにコメントした。
2015年の戦略キーワードの1つである「グローバル展開」については、徹底したローカライズにより、各国ごとに着実にトップシェアを獲得していくことに注力しており、なかでも注力地域であるアジア地域では特にインドネシアにおいて成果を出していきます。引き続き、インドネシアでのトップシェア獲得のための活動を行いつつ、インドネシアで習得した海外におけるユーザー獲得ノウハウの応用や、軽量版LINE「LINE Lite」の提供などにより新たな地域でのシェア獲得を推し進め、グローバル展開をさらに加速していきます。(LINEリリースより)
■群雄割拠のインドネシアのメッセンジャーアプリ市場
日本ではメッセンジャーアプリはLINEが主流であるが、海外では1人の人が複数のメッセンジャーアプリを利用していることが多い。LINEはたしかにインドネシアで人気が非常に高いが、LINE以外にもWeChat、FacebookのMessenger、WhatsApp、Kakaoなども多く利用されている。相手に応じてそれぞれのメッセンジャーアプリを使い分けている。
インドネシアではスマートフォンの普及に伴って、多くのメッセンジャーアプリが利用されてきている。ジャカルタでは若者のほとんどがスマートフォンを利用しており、そしていくつものメッセンジャーアプリを楽しんでいる。最近ではFacebookのMessengerの利用者が急速に増えており、今までLINEを利用していた人がMessengerで送信をしてくることもよくある。
メッセンジャーアプリで出来ることは、アプリ間での無料通話、テキスト、写真などの共有であり、ユーザーから見ると「メッセンジャーアプリはどれであっても基本的には同じ」という印象が非常に強くなってきてしまっている。
インドネシアでは多くのメッセンジャーアプリがトップシェアを狙って、テレビやビルボードでの宣伝やキャンペーンを行いユーザー獲得と利用促進に躍起になっている。
▼LINEのキャラクターが描かれているユニフォームを着たジャカルタの携帯電話ショップでスタッフ。LINEのキャラクターはインドネシアでも大人気だ。
■お金を払ってでもスタンプやゲームを欲しいと思わせられるか
インドネシアではLINEのキャラクターがかわいいことから、そのスタンプに人気があり、若者らにいっきに拡大していった。しかし、最近では多くのメッセンジャーアプリでも似たようなスタンプが登場してきていることから大きな差別化にはなっていない。
メッセンジャーアプリは、そのアプリを利用している人同士は無料で通話、テキスト、写真などの共有が可能である。つまりメッセージでは収入にはならない。メッセンジャーアプリで集めたユーザーがスタンプを購入したり、ゲーム課金でお金を使わせるように誘導する必要がある。インドネシア人は「無料ならいくらでも使うが、お金を払ってまでも使わない」という人が非常に多い。しかし「本当に欲しいものや必要なものには出し惜しみなくお金を払う」ので、メッセンジャーアプリ各社が提供するスタンプやゲーム、音楽などが、ユーザーにとって本当に欲しいと思わせる必要があるだろう。
またユーザー数が少なくなってしまっては広告配信のプラットフォームとしての価値も下がることからユーザーをメッセンジャーアプリに惹きつけておき、アクティブユーザーを維持する必要がある。
■移り気なインドネシア人は新しいものが大好き
インドネシア人は移り気で新しいものが大好きである。かつてインドネシアではアメリカに次いで世界で2番目にBlackBerryが大人気だった。その背景にはBlackBerryの提供するメッセンジャーの人気もあったが、現在ではBlackBerryの端末を新規で購入する人が激減した。中古端末でもBlackBerryはほとんど売れなくなってきており、スマートフォンはAndroidのスマートフォンに取って代わられた。
メッセンジャーアプリもかつてはWhatsAppの人気も高かった。たしかに今でもWhasAppの利用者も多いが、それでも台頭しているWeChatやMessengerの勢いの陰に隠れてしまっている。
インドネシアのメッセンジャーアプリ市場は非常に競争が激しく「一寸先は闇」である。現在LINEの人気が高いインドネシアにおいて、早いうちに収益の基盤を確保する必要があるだろう。そしてそれはインドネシア市場だけでなく日本国内や他の海外市場でも同じことだ。