アディダス、Runtasticを買収:フィットネスアプリバブル は不振のゴルフ事業を補えるか
スポーツメーカー、アディダスは2015年8月、フィットネスアプリやウェアラブル端末などを提供するオーストリアのRuntasticを2億2,000万ユーロ(約300億円)で買収した。世界1位のスポーツメーカーのナイキや急成長しているアンダーアーマーが先行しているフィットネスアプリ分野を強化していく。
2009年に設立されたRuntastic はGPSフィットネストラッキングアプリなどが有名で、全世界で7,000万人ユーザーがいる。日本では2014年12月にNTTドコモから「Runtastic for docomo」の提供をしている。
■ゴルフ事業が不振のアディダス:2015年Q2はゴルフ売上高26%減少
アディダスは2015年8月6日、同年第2四半期(2015年4〜6月)の業績発表を行った。売上高は前年同期比15%増の39億1,000万ユーロ(約5,316億円)で純利益は1.4%増の1億4,600万ユーロ(約199億円)だった。地域別では北米が0.5%増と小さいものの、中華圏が19.3%増、西欧が12%増と大きく成長している。
アディダスはこのように増収増益で絶好調に見えるが、その中でもゴルフ事業の売上高は前年同期比で26%減少と苦しんでいる。CEOのヘルベルト・ハイナー氏はゴルフ事業の「将来的な選択肢」を検討するとコメントし、投資銀行への売却など示唆した。
■「フィットネスアプリ」バブル
今回アディダスはRuntasticを2億2,000万ユーロ(約300億円)で買収した。アディダスの3か月分の純利益が1億4,600万ユーロ(約199億円)だから、それよりも遥かに高い金額である。
スポーツメーカーとしてライバルのナイキは約10年前からAppleと一緒にフィットネスアプリの提供を行ってきた。またアンダーアーマーは2015年2月に「MyFitnessPal」を4億7,500万ドル(約560億円)で、また「Endomondo」を8,500万ドル(約100億円)で買収しておりフィットネスアプリ分野に注力している。
ウェアラブル端末は2014年には2,640万ドル(約32億円)の市場規模だったが、2015年には7,210万ドル(約87億円)まで成長すると調査会社IDCは予測している。たしかにここ数年でウェアラブル端末をつけてフィットネスアプリで健康管理をしている人は全世界で増加している。ユーザーとしてはゴルフよりも気軽にできて、お金もかからないだろう。アディダスとしてもこの波に乗っておかなければならない。
ウェアラブル端末の普及に伴い、フィットネスアプリもたくさん登場してきた。しかしユーザーとしても1人でそんなにたくさんのフィットネスアプリは使わない。そしてどのアプリでも出来る機能はほとんど同じである。さらに現在のウェアラブル端末とフィットネスアプリはブームで使い始めた人たちは、いつまで使い続けてくれるのだろうか。気軽に始められてお金もゴルフのようにかからないということは、飽きてしまったら簡単にやめてしまう。ゴルフは多額のお金をかけて長く続ける人が多い。
スポーツメーカーは多額のコストをかけてフィットネスアプリを買収しているが、将来どのアプリが生き残っているのだろうか。