ミャンマー政府、選挙に向けてFacebookへ協力を打診:偽情報や扇動コメントは削除できるのか
ミャンマーでは2015年11月8日に総選挙が予定されている。2011年3月の民政移管後、初の総選挙であり、約6,200人が立候補申請しているなど国際的にも注目を集めている。
ミャンマー政府は総選挙に備えて、選挙運動時に暴動を煽るような書き込みを削除していくことでFacebookに協力を依頼したと報じられた。
ミャンマーではかつて通信事業者がMPT一社独占状態だったが、TelenorとOoredooが進出し、格安のプランを提供するようになり競争が激化した。そして多くのミャンマー人がスマートフォンや携帯電話を利用するようになり、それに伴ってFacebookやTwitterといったソーシャルメディアやWhatsAppやMessengerなどメッセンジャーアプリの利用も拡大した。現在、人口約5,300万人のミャンマーではFacebook利用者が約500万人いるとのこと。
スマートフォンとFacebookやTwitterのようなソーシャルメディアの登場によって、一般の個人が簡単に情報発信ができるようになったミャンマーでは政府は「不正確な偽の情報を発信したり」、「暴動を煽るような投稿」を懸念しており、それらを削除するようにFacebookに協力を求めているとのことだ。
ミャンマー政府がFacebookにこのような投稿削除の依頼を申し出たのは初めてのこと。
『決して、表現の自由を制限するものではなく、あくまでもヘイトスピーチ防止や対立している陣営への暴動を防ぐことが目的である』とYe Htut情報省大臣は説明している。
一方で、ミャンマーICT開発機構のHtaike Htaike Aung氏は『政府とFacebookがどのように協力していくのかよくわからない。どの情報ならFacebookに投稿してよくて、どの情報は投稿してはいけないのかを誰がどのように判断するのだろうか』と懸念を表明している。
■ネットで投稿された情報の削除依頼は非現実的:それよりも国民の情報リテラシー養成
実際にはFacebookに投稿された選挙の情報を全てトレースして、削除していくようなことは難しいであろう。たとえFacebookで削除されたとしても、他にもTwitterやブログ、WhatsApp、LINE、WeChatのようなメッセンジャーの他に、従来の音声通話、ショートメッセージ(SMS)など「情報発信と拡散の手段となるプラットフォーム」はいくらでも存在している。
それら全ての提供事業者と協力してまで、偽の情報や暴動を煽るようなコメントを削除していくことは不可能であり、かえって国民の不信を招きかねない。
そのような情報の削除依頼を検討するよりも、いっきにスマートフォンや携帯電話が普及し、インターネットに誰もがアクセスできるようになった。ミャンマーはもはやかつてのような時代に戻ることはできない。あらゆる情報が氾濫している中では「どの情報が正しくて、どの情報は不適切か」、「呼びかけのコメントにすぐに扇動されない」ことを冷静に判断するよう国民を促すことの方が重要であろう。