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マレーシアのレストラン「Wi-Fi はありません。レストランではスマホを忘れて食事を楽しもう!」

佐藤仁学術研究員・著述家

マレーシアの首都クアラルンプールにあるイタリア料理レストラン「Antonio」がちょっとした話題になっている。

そのイタリア料理レストランには「無料Wi-Fi」がないのだ。

「Antonioにいる間は、ただ会話を楽しんでね」と書かれている。2012年2月の地元の新聞記事で「マレーシア人はスマホ中毒になっており、家族で食事中にもほとんど会話がないことが問題になっている」ことを引用している。さらに、最後にはこう書かれている。

「Talk.Laugh.Eat.Enjoy(話して、笑って、食べて、楽しもう)」

レストランで食事中には会話を楽しんで、食べるという、考えてみれば、当たり前のことである。

(クアラルンプールのレストランAntonioでのWi-Fiに関する注意書き)
(クアラルンプールのレストランAntonioでのWi-Fiに関する注意書き)

■あらゆるところで無料Wi-Fiが利用できるマレーシア

マレーシアでは、レストラン、コーヒーショップ、ファーストフードだけでなく、デパートやショップ、大学など多くの場所で無料Wi-Fiが利用できる。多くの人がレストランやコーヒーショップにはWi-Fiを利用してインターネットにアクセスしに行くと言っても過言でないくらいだ。

(マレーシアのバーガーキングでは簡単に無料Wi-Fiが利用可能で若者に人気がある)
(マレーシアのバーガーキングでは簡単に無料Wi-Fiが利用可能で若者に人気がある)

そして店舗でも、お客様獲得のために無料Wi-Fiを提供しており、無料Wi-Fiが設置されているのが当然のようになっている店が多い。そして多くの人が、そのような店でスマートフォンでインターネットにアクセスしながら、スマートフォンの画面を見つめながら食事をしている。家族や友人同士で来ても、それぞれがスマートフォンをいじっていて、会話がないというのはよくある光景だ。

だから、イタリア料理レストランでWi-Fiがないことが逆にニュースになるのだ。Wi-Fiがないレストランでも友人や家族で来て、スマートフォンの画面を見つめている人も多い。これはマレーシアだけの話ではないだろう。日本でも世界の多くの国で見かける光景である。

1人で行くファーストフードやコーヒーショップではスマートフォンの画面を見つめているのも仕方ないだろうが、家族や友人との食事の時くらいは、家族や友人との会話を楽しみながら食事に集中したいものである。

そしてスマートフォンは汚い。スマートフォンを触った手で、パンなどを手で取って食べない方がよい。次は「スマホを触った汚い手を洗ってから食事をしてね!」という注意書きが世界中で登場してくるかもしれない。

(クアラルンプールのモスクでも無料Wi-Fiが利用可能)
(クアラルンプールのモスクでも無料Wi-Fiが利用可能)
(クアラルンプールのギャラリーでも無料Wi-Fiが利用可能)
(クアラルンプールのギャラリーでも無料Wi-Fiが利用可能)

▲マレーシアではレストランやショップ以外でも多くの場所で無料でWi-Fiへのアクセスができる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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