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インドネシア:新たな教育ツールとしてのオンライン学習サービス『Quipper Video』

佐藤仁学術研究員・著述家

リクルートマーケティングパートナーズと海外子会社Quipper Limited社は2015年8月27日、インドネシアでオンライン学習動画サービス「Quipper Video」を開始したと発表した。

Quipperは、2010年にイギリスで創業された教育ITベンチャー企業で、インドネシア・フィリピン・メキシコ・日本・イギリス・トルコ・タイ・ロシアの世界8カ国に展開している。 2013年からインドネシア・フィリピン等を中心に、オンラインラーニングプラットフォーム『Quipper School』をグローバルで展開し、生徒の学習・先生の宿題管理・問題作成・チュータリングなどのサポートをしてきた。2015年4月からリクルートマーケティングパートナーズ傘下に入った。

同社の調査によると、インドネシアにいる約400万人の高校生のうち、75%が経済的・地域的な理由で民間教育、いわゆる学習塾や家庭教師を受けることができない教育環境格差が存在している。この課題を解消するために、日本では2人に1人の受験生が利用しているオンライン学習動画サービス「受験サプリ」の動画授業ノウハウを活用した本サービスを提供する。

高校の授業内や放課後の補習などに利用可能となっており、英語、数学、インドネシア語、理科、社会の全5教科10科目の授業動画200本(200時間分)を配信している。動画は随時追加していく予定。価格は1か月で20万ルピア(約1,700円)、6カ月間で35万ルピア(約2,970円)、12か月で50万ルピア(約4,240円)を予定しているが変更の可能性もある。個人での利用のほかにも高校での一括導入なども検討されている。

■インドネシアで求められているのは英語の勉強

インドネシアにはたしかにまだ高校に行けない生徒や大学に進学できない人はたくさんいる。地方からジャカルタに働きに来ている若者も学校には行ってない人が多い。

高校に行けなくて10代から働いている人や経済的な理由で大学には行けない彼らが勉強して大学に行きたいのかどうかはわからない。大学に進学するにはお金がかかる。授業料の奨学金があったとしても生活費などいろいろとお金がかかる。オンライン学習動画を活用して勉強しても、大学に進学できるかどうかはまた別の問題だ。

最近のインドネシアは大学を卒業しても就職できない若者も多くいる。大学に行ってなくても英語ができると結構いい仕事に就けることがある。例えばドライバーでも英語ができるインドネシア人は、インドネシアに住んでいるインドネシア語のできない外国人に重宝されて、いい給料がもらえるし、ホテルなどでも就業機会がある。外国人がインドネシア語を覚えて、ドライバーに道案内するのは非常に大変だ。

大学を卒業していても英語ができないインドネシア人が結構多いのだ。たとえ大学には進学できなくとも、オンライン学習動画を活用して英語の学習だけでも徹底してやっておけば、少なくとも貧困スパイラルからは抜け出せる可能性がある。

もちろん上述のように「Quipper Video」では英語だけでなく数学、インドネシア語、理科、社会も多くの教材を揃えている。全ての教科を万遍なく学習することが一番望ましい。

ジャカルタの高校生
ジャカルタの高校生
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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