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マイクロソフト音楽配信「Zune」完全終了:音楽はスマホで聴く時代にマイクロソフトは生き残れるのか

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

マイクロソフトは2015年11月15日で音楽配信サービス「Zune」を完全に終了することを発表した。

2006年にAppleの音楽端末「iPod」に対抗して、マイクロソフトからも音楽端末「Zune」が販売された。当時まだiPhoneもなかった頃で、マイクロソフトはAppleをライバル視していた。しかし実際にはAppleの「iPod」の方が圧倒的に人気が高く、世界中で販売されたことは周知の事実である。

(2006年にアメリカで販売されたマイクロソフトの「Zune」端末)
(2006年にアメリカで販売されたマイクロソフトの「Zune」端末)

「Zune」端末自体は2011年10月に開発、生産が終了していた。日本では「Zune」端末が販売されなかったことから、「Zune」は日本人にはほとんど馴染みのないサービスだが、アメリカでもほとんどの人が当時からiPodを利用していたため、「Zune」を知らないアメリカ人はたくさんいる。

今後「Zune」は、マイクロソフトが提供している音楽配信サービス「Groove」に統合される。以前は「Xbox Music」という名称で提供されており、2013年12月からは日本でもサービスを開始していたが、2015年7月に「Groove」と名称を変更して現在に至っている。

■競争厳しいスマホ向け音楽配信サービス市場

そして現在では、音楽は音楽端末からスマートフォンで聴く時代になってきた。「iPod」ですらAppleの売上全体の中では10%にも満たない。世界的にはAppleは「Apple Music」、Googleは「Google Play Music」などもスマートフォン向けの音楽配信サービスを開始しており、日本でもLINEやAWAなどのサービスが登場している。1人でいくつもの有料音楽配信サービスを利用するよりも、自分の好きなサービスだけをを利用している人が多いだろう。また無料なら利用するけど、有料なら聴かないという人も多い。スマートフォン向けの音楽配信サービスは世界中で非常に競争が激しい市場である。

マイクロソフトはAppleに対抗して2006年から音楽端末の販売と配信サービス「Zune」を行ってきたが、決して成功しているとは言えない。「Zune」から「Xbox Music」、そして「Groove」へとマイクロソフトの音楽配信サービスは変遷を辿ってきているが、現在の「Groove」が他の音楽配信サービスと比べて、大きな差別化や価格での優位性があるわけではない。世界中でこれだけたくさん存在している音楽配信サービスの中から「Groove」を選んでもらうためには広告宣伝などのマーケティング費用もかかるだろう。世界中の消費者にとってマイクロソフトのイメージは「パソコン」や「ビジネス向けのクラウド」であり、コンシューマー向けサービスのイメージが弱い。

「Zune」がひっそりとその幕を閉じたが、マイクロソフトにとってスマートフォン向け音楽配信サービスの未来は決して平坦なものではない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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