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ザッカーバーグCEO、国連総会で演説・インドのモディ首相と対談:新興国へ拡大したいFacebook

佐藤仁学術研究員・著述家
インドのモディ首相と会談するスーツ姿のFacebookザッカーバーグCEO(写真:ロイター/アフロ)

ここ数日、FacebookのザッカーバーグCEOがスーツにネクタイである。トレードマークのTシャツでない。

■国連総会での演説:ONEと連携して「世界中でインターネット接続へ」

FacebookのザッカーバーグCEOは2015年9月26日、国連総会において「持続可能な開発(Sustainable Development)」を支援していくスピーチを行い、今後も国連と協力しながら難民キャンプでのインターネット接続の支援を行っていくことを明らかにした。ザッカーバーグCEOは自身のFacebookの投稿で2020年までにビル・ゲイツ夫妻やボノらが設立した貧困救済のNPOのONEと提携して世界中でインターネットを接続させていくことをコメントした。世界にはまだ40億人以上がインターネットに接続されていない。

■インドのモディ首相と会談、「Digital India」支援

またザッカーバーグCEOはインドのモディ首相とも会談を行った。インドのモディ首相もFacebookで多くの情報発信をしており、3,000万人以上のフォロワーがいる。50分にも及ぶイベントで、多くのことが話された。中国では利用できないFacebookにとって12億人以上の人口をかかえるインドはとても重要な市場である。

ザッカーバーグCEOは、インド政府がインドでのデジタル化を推進している「Digital India」を支援していくことを明らかにした。そしてザッカーバーグCEOのFacebookのプロフィール写真をインドの国旗をイメージした模様に変更した。

■Facebookにとっても重要な「世界中でのインターネット接続」

Facebookでは2014年7月から「Internet.org」というサービスを提供しているこれはインターネットに接続できる環境にない世界の約50億人の人々を対象にした取組みである。インターネットへアクセスするデータ通信が無料でFacebookやGoogle検索、Wikipediaの他に天気予報や生活情報サイト、求人情報、妊婦や女性向けサイトなど、生活に密着したサイトにアクセスが可能である。「Internet.org」は新興国の通信事業者と提携して提供されている。また「Internet.org」は2015年9月に「Free Basics」と名前を変えると報じられていた。

Facebookへの月間アクティブ利用者数約14億9,000万人のうち、アジア太平洋地域が4億9,600万人、その他の地域(欧米、アジア太平洋以外)が4億7,100万人と全体の65%を占めている。新興国を中心に着実に利用者が増加している。しかし一方で、地域別の収入を見てみると、北米では1人当たりの収入が9.3ドル、欧州では3.36ドルに対して、アジア太平洋地域は1.29ドル、その他の地域(欧米、アジア太平洋以外)は0.90ドルしかない。Facebookの売上のうち74.4%が欧米からの収入である。

Facebookのビジネスモデルは広告収入であり、同社の売上の95%以上が広告に依拠している。広告収入のためには、まずインターネットに接続しアクセスしてもらう必要がある。そのためにインフラが整備されることは同社の収入にとっての基盤の確立として、とても重要である。

「Internet.org」を始めとするFacebookの新興国でのインターネット接続に向けた取組みは、「Facebookの慈善活動のように見える」が「新興国でのインターネット接続」はそれら地域でのFacebook利用者の拡大と、そこからの広告収入増加に向けた重要な礎である。

まずはインフラが整備されないとFacebookも利用できない。それでもインターネットに接続できるようになることで、新興国の人々の世界は大きく広がり、生活や仕事のチャンスも増加することからFacebookの取組みには期待されている。

「Internet.org」を提供している主要な国と通信事業者
「Internet.org」を提供している主要な国と通信事業者
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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