Facebook、衛星通信を用いて「巨大市場サブサハラアフリカ」で無料インターネット提供へ
Facebookは2015年10月、フランスの衛星通信会社Eutelsat Communicationsと提携して、サブサハラアフリカ地域において無料でインターネットアクセスを提供していくことを明らかにした。両社はイスラエルの衛星通信会社Spacecomと複数年契約をしており、同社の衛星「AMOS-6」を利用して2016年中にサブサハラアフリカ14か国で無料でインターネットに接続できる環境を提供していく。
サブサハラアフリカのような広大で人口密度が小さい地域では基地局や鉄塔といった地上設備を充実させるよりも、衛星通信を用いた方がコスト・カバレッジ・容量の面で効果的である。
■「Internet.org」の一環で
Facebookは今回の取組みは同社が積極的に推進している「Internet.org」の取組みの一環としている。これはインターネットに接続できる環境にない世界の約50億人の人々にもインターネットにアクセスを実現させる取組で、2014年7月から開始され、現在ではアフリカやインド、アジア諸国で導入されている。「Internet.org」は現地の通信事業者と提携して提供されており、インターネットへアクセスするデータ通信が無料でFacebookやGoogle検索、Wikipediaの他に天気予報や生活情報サイト、求人情報、妊婦や女性向けサイトなど約60の生活に密着したサイトにアクセスができる。2015年9月から「Free Basics by Facebook」とも呼ばれている。
■人口8億5,000万人以上のサブサハラアフリカ地域は巨大市場
Facebookへの月間アクティブ利用者数約14億9,000万人のうち、アジア太平洋地域が4億9,600万人、その他の地域(欧米、アジア太平洋以外)が4億7,100万人と全体の65%を占めている。新興国を中心に着実に利用者が増加している。しかし一方で、地域別の収入を見てみると、北米では1人当たりの収入が9.3ドル、欧州では3.36ドルに対して、アジア太平洋地域は1.29ドル、その他の地域(欧米、アジア太平洋以外)は0.90ドルしかない。Facebookの売上のうち74.4%が欧米からの収入である。
今回Facebookが衛星通信で無料インターネットアクセスを提供するサブサハラアフリカ地域だけでアフリカ全人口の約83%で8億5,000万人以上の人が住んでいる。携帯電話はだいぶ普及してきたが、まだインターネットにはアクセスできない人もたくさんいる。つまりFacebookとしても無視できない巨大な市場である。
Facebookのビジネスモデルは広告収入であり、同社の売上の95%以上が広告に依拠している。広告収入のためには、まずインターネットに接続しアクセスしてもらう必要がある。そのためにインフラが整備されることは同社の収入にとっての基盤の確立として、とても重要である。
「Internet.org」を始めとするFacebookの新興国でのインターネット接続に向けた取組みは、「Facebookの慈善活動のように見える」がサブサハラアフリカのような「新興国でのインターネット接続」はそれら地域でのFacebook利用者の拡大と、そこからの広告収入増加に向けた重要な礎である。
まずはインフラが整備されないとFacebookも利用できない。それでもインターネットに接続できるようになることで、サブサハラアフリカ地域の人々の世界は大きく広がり、生活や仕事のチャンスも増加することからFacebookの取組みには期待されている。