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米露中に次いで4か国目、そして民間として世界初の月面着陸を目指すイスラエルのSpaceIL

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

イスラエルのSpaceILは2015年10月7日、2017年後半にSpaceXのFalcon 9ロケットを打ち上げ、2017年12月31日までににロケットの月面軟着陸を行うことを明らかにした。月面着陸に成功したらアメリカ、ロシア、中国に次いで4か国目となる。また民間では世界初となる。発表の記者会見にはイスラエルのルーベン・リブリン大統領も参加してSpaceILの偉業を讃えた。

SpaceILが計画している月面探査機
SpaceILが計画している月面探査機

SpaceILが「Google Lunar XPRIZE(GLXP)」において有力候補に挙がった。Googleがスポンサーを務める「Google Lunar XPRIZE(GLXP)」では民間企業や団体で月にロケットを飛ばして月面に着陸して、月面を少なくとも500mの調査を行って、月面の様子を撮影して地上に送ることを条件に賞金を最大2,000万ドル(約24億円)を出している。「Google Lunar XPRIZE(GLXP)」は民間初の月面着陸を目指して2007年9月から開催されているが、今まで民間企業、団体で月に行ったことはない。月面着陸に成功したら賞金3,000万ドル(約36億円)が出る。

SpaceILは2010年末に3人のエンジニアによってイスラエルで設立された非政府組織である。約30人の正職員と多くのボランティアがイスラエル初の月面着陸に向けて働いている。Adelson FoundationやKahn Foundationなどイスラエルの財団からの資金協力、多くの民間企業やイスラエル宇宙局、テクニオン・イスラエル工科大学などからの技術協力を受けて開発を進めている。一般市民からの募金による資金支援も受けている。

イスラエルは国家としても宇宙開発に積極的に取り組んできた。イスラエルのロケットは、打ち上げ失敗時にアラブ諸国とのトラブルを回避するために地球の自転とは反対、西側に向けて発射されることは有名な話である。軍事的にも宇宙はイスラエルにとって非常に重要な空間であるが、まだ月面着陸は果たしていない。SpaceILは、記者会見で「新しい宇宙での競争が始まった」とコメントしている。SpaceILがイスラエル初、かつ民間としては世界で初めての月面着陸および月面探査になることに注目が集まっている。

SpaceIL

Google Lunar XPRIZE(GLXP)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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