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BlackBerry、年間500万台販売されなかったらスマートフォン事業から撤退か

佐藤仁学術研究員・著述家

BlackBerryのCEO、ジョン・チェン氏は2015年10月、サンフランシスコで開催されたイベント「Code/Mobile 2015」で、「年間で500万台のスマートフォンが販売できなかったら、スマートフォン事業から撤退するかもしれない」ことを示唆した。

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■2010年には1年間で4,700万台以上販売していた

BlackBerryが2015年第2四半期の3か月間で販売したスマートフォンは全世界で約80万台。単純に4倍しても320万台だから目標の年間500万台は相当にチャレンジングな数字であり、黒字達成には必要な数字とのことである。

かつてBlackBerryはアメリカやインドネシアで人気が高かった。調査会社Gartnerによると、2009年には1年間で3,400万台以上販売しており、iPhoneやAndroidよりも多かった。2010年には1年間で4,700万台以上販売していた。しかしその後のAndroidスマートフォンの急速な成長とiPhoneの台頭で、BlackBerryの存在感はかなり小さくなってしまった。Appleが2014年の1年間で販売した端末が約1億9,000万台、もはやBlackBerryに逆転する余地は全くない。

(2009年、2010年のスマホOSシェア:Gartner発表資料を元に作成)
(2009年、2010年のスマホOSシェア:Gartner発表資料を元に作成)

BlackBerryは2015年9月にAndroid OSを搭載したスマートフォンの開発を進めていることを明らかにした。しかしAndroidスマートフォンは新興国の新興メーカーからも格安で大量のスマートフォンが出荷されており、競争は非常に激しい市場である。

500万台の数字を達成すればいいという訳ではない。利益を出さなくてはならない。低価格なスマートフォン端末は薄利多売で、利益率が良くない。BlackBerryの端末の平均販売価格(ASP)は240ドルである。利益を出すためにはハイエンドな端末が売れる必要がある。ハイエンド市場もiPhoneやサムスンなど競合が多く、見通しは決して明るくない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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