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Google:売上の9割は広告、好調なモバイルと動画〜「YouTube Red」は収益構造を変えるか

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Alphabetは2015年10月22日、傘下のGoogleの2015年第3四半期(7〜9月)の決算を発表した。Alphabet設立後としては初めてとなるGoogleの業績発表である。

■売上の9割は広告収入、好調なモバイルとYouTube

第3四半期の連結売上高は前年同期比13%増の186億7,500万ドル。純利益は同45%増の39億7,900万ドル。営業利益は同26%増の47億800万ドルと2015年第3四半期も絶好調だった。広告収入は同11%増の167億8,100万ドルで、当期もいつものようにGoogleの収入のうち90%を広告が占めている。特に、モバイル検索が大幅な伸びを見せたこと、YouTubeとプログラマティック広告も好調だった。Googleのサンダー・ピチャイCEOも引き続きモバイル広告収入の拡大には積極的に取り込んでいくことを表明している。

(AlphabetおよびGoogle発表資料を元に作成)
(AlphabetおよびGoogle発表資料を元に作成)

■YouTubeも広告なしの有料サービス「YouTube Red」提供開始

Google Playのアプリやハードウェア、Google for Workなどのプロダクトなど広告以外からの収入は11%増の18億9,400万ドルだが、売上高全体に占める割合は10%である。

Google傘下のYouTubeは業績発表前日の2015年10月21日に「YouTube Red」を発表した。Googleにとって「YouTube Red」は広告以外の新たなサブスクリプション収入の基盤になるかもしれないサービスだ。

「YouTube Red」は広告が表示、配信されないで月額9.99ドルでYouTubeのコンテンツを視聴できる新サービスだ。2015年10月28日からアメリカで提供開始し、他地域でも、すぐに提供するように準備している。他にもYouTubeの動画を端末にダウンロードしてオフラインで視聴できる。端末にダウンロードしたコンテンツは30日間視聴可能。2016年からは「YouTube Red」の会員のみが視聴できる特別番組、オリジナルムービーの提供を予定している。また音楽サービス「Google Play Music」の会員であれば「YouTube Red」の機能は全て利用できる(「YouTube Red」の会員も「Google Play Music」を利用できる)。「Google Play Music」は2015年9月から日本でも利用できるようになった。

もちろん無料のYouTubeはこれからも提供され、そちらは従来と同様に広告が表示される。

■「YouTube Red」はGoogleの収益構造を変えるか

「YouTube Red」は月額9.99ドルのみでYouTubeの動画だけでなく、音楽も楽しめることからApple MusicやSpotifyなど音楽のみを提供しているサービスへ影響を与える可能性はある。一方で有料動画サービスもNetflixなどの台頭で競争が激しくなってきている。Netflixはアメリカで4,318万人が利用している。

YouTubeは2015年でサービス開始10年を迎えた。YouTubeには世界中で月間10億人が訪れるが、「広告もあるが無料」の提供形態に慣れている。YouTubeには1分間に約300時間分の動画がアップロードされている。75 か国、61 の言語にローカライズされており全世界での1 日あたりの動画視聴時間は数億時間、視聴回数は数十億回である。平均視聴時間は昨年比50%増の40分以上とのこと。

YouTubeは利用者の基盤は確立されている。果たしてどれだけの人が有料版の「YouTube Red」を利用するであろうか。つまり、どれだけの人が「広告非表示を希望しているのか」、あるいは「オリジナルコンテンツを視聴したいと思っているのか」が示される。「YouTube Red」はGoogleにとって広告収入以外の売上の拡大、すなわちGoogleの収益構造を変える可能性を秘めている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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