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BlackBerry初のAndroidスマホ「Priv」アメリカで予約開始、699ドルで売れるのか

佐藤仁学術研究員・著述家
販売前から溺れているようにしか見えない (BlackBerry)

BlackBerryは2015年10月23日、同社として初となるAndroidを搭載したスマートフォン「BlackBerry Priv」をアメリカ国内で予約受付を開始した。同社は2015年9月の業績発表時に、BlackBerry初のAndroidスマートフォンをリリースすることを明らかにしていたことはここでも伝えた

■予約で699ドル、販売価格749ドルの超高価端末

「BlackBerry Priv」の販売価格は749ドル(約90,000円)だが、今回の予約販売で購入した場合は699ドル(約84,000円)である。150ドル値引きされ11月6日から出荷される予定。アメリカ国内のみでの販売で、スライドキーボード付きやプライバシー保護などセキュリティ機能を重視しているが、アメリカのスマートフォン市場でも相当に高い端末だ。個人では「すぐに買いたい」という気持ちになる価格ではない。企業などでのビジネスユースをターゲットにしているのだろうが、現在ではビジネスユースでもiPhoneやサムスンの端末などが多くなっており、BlackBerryがかつてのようにビジネスシーンで利用される端末として復活できるのだろうか。

■年間500万台のスマートフォン販売されなかったらスマートフォン事業から撤退か

BlackBerryのCEO、ジョン・チェン氏は2015年10月、サンフランシスコで開催されたイベント「Code/Mobile 2015」で、「年間で500万台のスマートフォンが販売できなかったら、スマートフォン事業から撤退するかもしれない」ことを示唆したことは以前にもお伝えした

BlackBerryが2015年第2四半期の3か月間で販売したスマートフォンは全世界で約80万台。単純に4倍しても320万台だから目標の年間500万台は相当にチャレンジングな数字である。

販売前から既に溺れて倒れているようにしか見えない。BlackBerryのサイトより
販売前から既に溺れて倒れているようにしか見えない。BlackBerryのサイトより

2009年~2010年頃まではアメリカ、カナダ、インドネシアなどでBlackBerryの人気は高かった。かつてBlackBerryの端末が人気があったのは、「BBM(BlackBerry Messenger)」が利用できたという要因が大きい。

しかし、現在では多くのスマートフォンが登場し「WhatsApp」や「LINE」などのメッセンジャーアプリは大量に出てきてしまい、BBMを利用する必要性がなくなってきてしまった。またアメリカでは現在スマートフォンを利用している人の多くがパケットや音声通話、SMS(ショートメッセージ)がセットになった定額料金のパッケージプランに加入して利用していることが多いので、SMSの使用料などを気にしていないで利用していることもBBMの利用頻度を低下させているだろう。

超高価なBlackBerry初のAndroidスマートフォン「BlackBerry Priv」が、BlackBerryの目標である年間500万台のスマートフォン出荷に大きく寄与するとも考えにくい。さらにアメリカ国内で「BlackBerry Priv」に対応している通信事業者はAT&TとT-Mobile USのみであり、Verizon、Sprint、US Cellularでは対応してないことも普及の足かせになりかねない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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