ユダヤ人CEOザッカーバーグ『Facebookはムスリムをいつでも歓迎、平和で安心な世界を』
アメリカで共和党のトランプ氏が2015年12月7日、カリフォルニア州での銃撃事件を受けて「ムスリムはアメリカへの入国を完全に拒否すべきだ」と発言して物議を醸している。さらにトランプ支持者らがその発言を擁護しており、現在でもアメリカ国内で問題になっている。
そのようなアメリカ国内の状況に反応してか、FacebookのザッカーバーグCEOは2015年12月9日に自身のFacebookページで、ムスリムの支持を世界に訴えた。フランスでのテロやその後のムスリム憎悪が世界にはまだあるが、Facebookというコミュニティはムスリムを拒否しないで、歓迎すると述べた。そしてFacebookのCEOとして、ムスリムの権利を守るために戦っていき、平和で安心できるコミュニティを提供していくことを約束した。
■ユダヤ人CEOとしてのザッカーバーグ
そしてザッカーバーグCEOは、自分自身も「ユダヤ人として、両親は全てのコミュニティに対する攻撃に立ち向かっていくことを教えてくれた。たとえその攻撃が自分に向けられたものでなかったとしても、誰かの自由に対する攻撃は、いつか全ての人を傷つけることになる」と述べた。
ユダヤ人は長い歴史の中で常に迫害を受けてきた。ナチスが台頭した第二次大戦時には周辺の欧州諸国やアメリカからも入国を拒否された経験を持っている。ザッカーバーグ氏は、現在のムスリムの難民らにかつて迫害されたユダヤ人の姿を見ているのかもしれない。今でもムスリムに対する差別発言やそれを擁護する意見が多いというアメリカや世界の悪しき兆候は、ユダヤ人にとっても危険な兆候である。
特にアメリカは第二次大戦時、欧州からのホロコースト犠牲者であるユダヤ人難民の受け入れを拒否していたし、反ユダヤ主義も根強かった。今でもユダヤ人に対する偏見が残っている。人種差別主義が蔓延っている国では、反ユダヤ主義がいつ再興するかわからないという不安を常にユダヤ人は持っている。ユダヤ人はトランプ氏の人種差別主義的な発言にはセンシティブになるのだ。いつまたユダヤ人に迫害や差別、排斥の矛先が向かってくるかもしれないという不安を抱えており、常に自分の身は自分で守っていく必要があるのだ。そのような歴史と社会的背景から、ザッカーバーグ氏も幼い頃からユダヤ人として両親から「全てのコミュニティに対する攻撃に立ち向かっていく」ことを教えられていたのだろう。
■ホロコーストを繰り返さないためにメディア産業に注力するユダヤ人
現在のアメリカにおいてユダヤ系はメディアやエンターテイメント分野に強い。Facebookは現在世界最大のメディアである。他にはシンクタンク、大学、金融にも強い。ユダヤ人はこれらの産業が大衆の世論形成に大きな影響力を発揮することを理解しているのだ。すなわち反ユダヤ主義のような人種差別発言に追従するのも、メディアの流布する情報を享受して信じるのも、同じ大衆であることを知っている。そしてユダヤ人はホロコーストを繰り返さないためにそれらの分野において影響力を及ぼそうとアメリカや全世界でずっと努力を続けている。
そしてザッカーバーグ氏はコメントの最後に「我々は希望を失ってはいけない。一緒に立ち上がり、お互いの良いところを見つめていこう。そうすれば全ての人にとって良い世界を創ることができる」と締めくくっている。
■情報通信技術もプラットフォームも本来は中立的
Facebookは全世界で15億人以上の人が利用している。インターネットの発達とスマートフォンの普及、ソーシャルメディアの発展によって、日常生活のコミュニケーションのツールやインフラとなった。ムスリムであれユダヤ人であれ、日本人であれアメリカ人であれ、Facebookという巨大プラットフォームを通じて誰もが簡単に自分の意見を述べる、情報発信を行えるようになった。
但し、インタ―ネットやスマートフォンなどの情報通信技術もFacebookというソーシャルメディアというプラットフォーム自体は、政治的に中立である。武装組織や個人が宣伝する暴力的なメッセージを改変もしないし、誇張もしない。情報通信技術は、それを利用する者の意図のよって政治的な意味が変わるだけなのだ。
▼ザッカーバーグCEOのコメント全文