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Googleの画像検索でトランプ氏の著作を検索するとヒトラー「我が闘争」も関連サーチで登場

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2015年12月上旬、アメリカの共和党大統領候補のドナルドトランプ氏の著書「Crippled America: How to Make America Great Again」(2015年11月発行)を画像検索すると、関連書籍としてヒトラーの「Mein Kampf(我が闘争)」が画像検索の左上に表示されるということで、欧米では大きな話題になっていた。しかも左上でトランプ氏の著書よりも「我が闘争」の方が目立っていた。但し、ヒトラーの著書「Mein Kampf(我が闘争)」をGoogleの画像検索で検索しても、トランプ氏の著書は表示されなかった。

トランプ氏の著書を検索すると左上にヒトラーの「我が闘争」(2015年12月時点)
トランプ氏の著書を検索すると左上にヒトラーの「我が闘争」(2015年12月時点)

■トランプ氏の発言とナチス

トランプ氏は2015年12月7日に、カリフォルニア州での銃撃事件を受けて「ムスリムはアメリカへの入国を完全に拒否すべきだ」と発言して物議を醸したばかりだった。その直後にトランプ氏の著作を検索するとヒトラーの「我が闘争」が登場するということで、さらに大きな話題になった。

ヒトラーは言うまでもなく第二次大戦時にユダヤ人やジプシーを迫害し、大量に虐殺したナチスの党首だ。そして人種差別こそがヒトラーとナチスのイデオロギーの核心だった。その後、人種差別はナチスの政策となり、イデオロギーは二の次になってしまった。人種差別から始まりナチスの政策となったユダヤ人絶滅「最終解決」という恐ろしい論理の暴走を許すことになった。そのことから、トランプ氏の発言にはアメリカだけでなく、世界中がセンシティブになっている。特にアメリカは第二次大戦時には欧州からのユダヤ難民の受け入れを拒否していたし、現在でも反ユダヤ主義が残っている。しかもムスリム入国拒否の発言以降もトランプ氏の支持率は落ちてないと、非常に複雑な思いである。

■技術自体は政治的には中立

しかもトランプ氏の発言を受けて、GoogleのCEOサンダーピチャイ氏は12月12日に自身のブログで「私たちはアメリカと世界中にいるムスリムや他のマイノリティのコミュニティを支援する」(Let’s not let fear defeat our values. We must support Muslim and other minority communities in the US and around the world.)と述べていたことから、いろいろな憶測を呼んだ。

Googleの画像検索のアルゴリズムは明らかにされていないが、トランプ氏の著書を検索した人がヒトラーの著書を検索したり購入していることが多かったのだろう。それでトランプ氏の著書を検索したら、ヒトラーの著書も関連として表示されてきただけだろう。検索であれ人工知能であれ、これらの技術自体は、政治的には基本的には中立である。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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