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国連WFP:世界初の飢餓撲滅アプリ「シェア・ザ・ミール」2万人へ1年分の給食を届ける、当初目標を達成

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

国連の食糧支援機関、国連WFP(World Food Programme)は2015年11月12日からスマートフォンのアプリ「シェア・ザ・ミール(ShareTheMeal)」を全世界で公開した。このアプリを使えば、スマートフォンからワンタップで、シリア難民の子供達に食事を届けることができる。世界初の飢餓撲滅アプリである。

40万人が協力し400万食をシリア難民の子どもへ

そのアプリは公開1か月後には300万食をシリア難民に届け、さらに公開から2ヶ月の2016年1月、「ヨルダンで避難生活を送るシリア難民の子ども2万人へ1年分の給食を届ける」という当初の目標をあっという間に達成した。

「シェア・ザ・ミール」は2015年11月に全世界で公開された。世界中でスマートフォンからアプリをダウンロードして、国連WFPの特定の活動に60円から寄付を行うことができる。緊急支援活動において、1日分相当の食事と栄養を届けるのに必要な費用の世界平均が60円となっている。これまでに全世界で40万人が協力し、400万食相当の食事を届けることができた。

「シェア・ザ・ミール」プロジェクトの創設者の一人、セバスチャン・ストリッカーは「『シェア・ザ・ミール』の全世界公開からたったの2ヶ月ですが、その成果には大いに励まされています。 世界中のスマートフォンユーザーが、飢餓のない世界を目指す、わたし達の取り組みに賛同し行動しています」とコメントしている。

「シェア・ザ・ミール」は iOSとAndroidで利用可能。Googleは「シェア・ザ・ミール」を2015年のベストアプリの1つに挙げている。

次の目標はシリア人の母子や妊婦の栄養支援に向けた資金集め

次の目標としては、 紛争で荒廃したシリアの町ホムスに住むシリア人の母子や妊婦の栄養支援に向けた資金集めを始める。

シリア国内のマダヤ、フア、ケフラヤなど包囲下の町の人々が栄養不足に苦しんでいる。弱い立場に置かれているシリア人に対して栄養支援を行うことはとても重要であり「シェア・ザ・ミール」の次の目標は、 妊婦、 授乳中の母親や乳幼児が肉や乳製品、野菜や果物など様々な食糧を買い、栄養状態を改善できるようにすることを掲げている。

5年間におよぶシリア内戦のなかで、特に激しい戦場となったホムスの町は、その大部分が破壊された。現在のホムスは停戦状態にあるが、ホムスに住む人々は多くの支援を必要としている。特に無収入や収入の限られている国内避難民の妊婦や授乳中の女性達は栄養不足の危機に直面している。

具体的には、ホムスにあるオーウン配給所で、妊婦、授乳中の母親や乳幼児2,000人以上に対し、1年間の支援を行うための資金を集める。 母親たちは、センターで国連WFPから食糧引換券を受け取り、それで新鮮な食品を購入することで、バラエティに富んだ食事を摂ることができるようになる。妊娠してから子どもが生まれ、2歳に達するまでの命の最初の1,000日間の栄養状態が良好であることが、心身の発達のために非常に重要であることがわかっている。

アディンカ・バデジョ国連WFPシリア副事務所長は「妊娠中や授乳中の栄養は非常に重要です。 母子に栄養豊富な食べ物を提供することによって、 最も弱い立場に置かれている子ども達へこれ以上の苦しみが及ぶことを防ぐことができます」と述べている。

シェア・ザ・ミール

▼国連WFPでは「シェア・ザ・ミール」への協力を呼びかけて「50セントで何ができるのか?」を問いかける動画を公開している。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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