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iPhone出荷減で減収減益のApple:中国の売上は春節(旧正月)シーズンなのに26%減

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Appleは2016年4月26日に2016年Q2(2016年1~3月期)の業績発表を行った。

売上高は前年同期比13%減の505億5,700万ドル(約6兆円)、純利益は23%減の105億1,600万ドル(約1.2兆円)と減収減益だった。

中国の売上、春節(旧正月)シーズンなのに26%減少

売上は前年同期比では日本だけが24%増で、それ以外の地域全てで売上が減少した。

Appleにとってはアメリカに次ぐ巨大市場である中華圏(中国、香港、台湾)は重要な市場だ。そして特に中国は1~3月期は、春節(旧正月)シーズンであり、通常であれば売上は大きく伸びる時期である。この時期に中国市場でのAppleの売上は26%減少しているが、他の中国メーカーは決してあまり減少はしていない。なおクリスマスシーズンである2016年Q1(10~12月期)と比べても中国での売上は32%減少している。

中国人の多くは「見栄を張るためにiPhoneを所有する」ことが多い。「なんとなくiPhoneを持つことがクール」という風潮が中国の都市部にはあり、富裕層にはiPhoneもほぼ普及しており、新製品が出るたびに購入する人が多かったが、そのような買い替えが進まなかったのではないだろうか。安い中国メーカーのスマホでも電話もWeChatもゲームもできるので、スマホは別にiPhoneである必要はないのだ。スマホがないと生活や仕事で困ることが多いが、iPhoneは生活必需品ではない。今までの中国市場がバブルだったのか、これから復活するのか、減少が続くのかは、今期だけで判断することは難しい。

▼地域別での売上高とシェアの推移

(Apple決算資料を元に作成)
(Apple決算資料を元に作成)

Appleに占めるiPhone割合が65%までに低下、iPhone依存から脱却できるか

またAppleの売上高505億5,700万ドルのうち、328億5,700万ドルがiPhoneで、Appleの売上高全体の65%を占めたが、iPhoneの出荷台数も初の減少となった。iPhoneの占める割合は2016年Q1(2015年10~12月期)は72%だったことから、Appleに占めるiPhone依存の構造が変わってきており、サービス(AppleCare、Apple Pay、ライセンス事業など)やその他製品(Apple TV、Apple Watch、Beats製品、iPod、アクセサリなど)が伸びてきている。

特にサービスの売上高は59億9,100万ドルで、Macの売上高(約51億ドル)を上回った。AppleもいつまでもiPhoneに依拠した「モノ作り」だけでなく、収益の構造転換が起ころうとしている。

▼製品別での出荷台数、売上高および売上高に占めるシェア

(Apple決算資料を元に作成)
(Apple決算資料を元に作成)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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