ドイツPEGIDAのバッハマン氏、Facebookで「反ムスリム発言」を投稿で約120万円の罰金
ドイツでは2015年だけで110万人以上の難民・移民がドイツに流入しており、大きな社会問題となっている。2015年大晦日には、ケルンで若い男性集団が女性たちを取り囲んで金品強奪や性的暴行事件が650件以上も発生、被害に遭ったと警察に届け出た女性は600人以上に達した。加害者には難民申請者が多いことから、大聖堂でお馴染みのケルンの街で新年を祝うためのお祭りが、ドイツ史上に名を残すような大事件になり、ドイツでの難民や移民に対する反対運動も激化してきた。
PEGIDAのバッハマン氏、Facebookへの「反ムスリム」の投稿で罰金
特にシリア、アフガニスタンからの難民が急増しており、難民や移民の多くはムスリムである。ドイツでは2014年から「西欧のイスラム化に反対する欧州愛国主義者」(ドイツ語で「Patriotische Europaer gegen die Islamisierung des Abendlandes」略称:PEGIDA、ペギーダ)らがドイツ各地でデモ活動を積極的に行っており、そのような団体に対する反対運動も繰り返されている。
そして、2016年5月、PEGIDAのリーダーであるルッツ・バッハマン氏が2014年10月にFacebookで投稿した「反ムスリムな内容」が人種主義的であるということで、9,600ユーロ(約120万円)の罰金が課せられることをドイツの裁判所は明らかにした。バッハマン氏はムスリムの移民をFacebookで「家畜」や「くず」などと罵っていた(現在ではそれらの発言は削除されている)。バッハマン氏は「反ムスリム」発言だけでなく2015年1月には「ヒトラーに扮した写真」をFacebookにアップして物議を醸している。
反ユダヤ主義そのものはドイツやヒトラーが発明したものではなく、中世以来ヨーロッパに広く根付いている暗部の1つであり、現在でも残っている。そしてその矛先が今度はムスリムに向かうことを懸念している人も多い。
日常生活の不安や不満もネットで拡散
それでもドイツでは増加する移民に対する日常生活での不安や不満からPEGIDAの支持者は増加しているようだ。バッハマン氏だけでなく一般市民もFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアには投稿しなくとも心の中では、バッハマン氏の発言に同調している人は多いらしい。現在ではインターネットやSNSの発展とスマホの普及によって、誰もが簡単に情報発信、拡散を行えるようになった。PEGIDAも積極的にSNSを活用してデモのお知らせや意見表明など情報発信を行っている。それらの投稿に同調する人も多く、さらにFacebookの特徴である「いいね」や「シェア」であっという間に拡散されていく。多い時には数万人がPEGIDAのデモ行進に集まるそうだ。そしてデモの写真も多くSNSにはアップされている。
ドイツ政府は2015年12月にはFacebook、Google、Twitterにおいてヘイトスピーチを発見した場合「できる限り24時間以内に削除する」ことを各社に要請した。各社は書き込みの内容を確認してヘイトスピーチと判断したら24時間以内に削除することが求められている。ドイツでは、ヘイトスピーチは刑法上の犯罪で、最長で禁錮3年の実刑が科せられる。
ただバッハマン氏の「反ムスリム発言」のように明らかに敵意があり、ヘイトスピーチとわかるような投稿だけではない。移民や難民が急増しているドイツでは、PEGIDAの活動には関与しなくとも「移民増による治安の悪化に対する懸念」や「自分たちの仕事を新たに来た移民や難民に奪われるのではないかという不安」を持っている人も多い。ヘイトスピーチの意識がなくとも「移民に対する日常の不安、怒り、不満」をSNSやネットに書き込み、それらに同調する人も多いだろう。「日常の不安、怒り、不満」は表現の自由の領域かもしれない。そのような日常生活の些細な想いを発した発言・言論の効果を査定するのは困難だろう。
▼PEGIDAの活動を報じる動画