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Uber、ピッツバーグの公道でついに「自動運転車」の走行実験へ:運転手のいらない世界へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(Uber)

配車アプリでお馴染みのUberがアメリカのピッツバーグの公道で、自動運転自動車の走行試験を行うことを明らかにした。Uberはスマホのアプリで近くにいる自動車を手配し、クレジットカードで支払いができる。アメリカや欧州だけでなく、東南アジアやインドでも多く利用されている。現在は運転手がいて、運転手がその自動車を運転しているが、今回は「自動運転車」の走行試験を公道で行う、つまり無人運転である。

2020年の「自動運転車」実用化を目指して

Uberは2015年2月にピッツバーグにあるカーネギーメロン大学と自動運転車の共同研究を開始、Advanced Technologies Center (ATC)の開設など積極的に自動運転車の開発準備を行っている。ピッツバーグは様々な道路、交通パターン、天候条件など走行試験を行うのに理想的な環境であることをUberはあげている。

Uberは今回の走行試験ではFordの「Fusion Hybrid」を使用する予定で、ピッツバーグの公道を走行をする予定だ。ついに公道での走行試験となる。同車にはセンサー、レーダー、レーザースキャナ、高解像度カメラを装備、また地図データの収集を行い自動運転を試験する。走行実験時には熟練ドライバーが運転席で運転を監視するとのことだ。今回の自動運転走行試験もUberのミッションである「あらゆるところで、誰もが利用できる安心・安全の輸送」を達成していくための一歩である。そしてUberでは2020年には自動運転車の実用化を目指しているようだ。

「運転手」のいらない時代へ

Uberによると全世界で年間130万人以上の人が自動車事故で死亡しており、そのうち94%が「ヒューマンエラー」だそうだ。Uberも「自動運転車」の導入によって、ヒューマンエラーによる事故が減少することを期待している。

運転手がいなくとも、自動車が走るというのは今ではまだSFのような話だが、UberだけでなくGoogleなども自動運転に注力している。着実に「自動運転車」の実現に向けた取組みが進んでいる。

さらに現在はUberでも運転手のいる車が迎えに来てくれるが、これからは無人の車が迎えに来てくれて、それに乗車して移動する時代がやってくるのだろう。そうなると産業構造と社会も大きく変わっていく。自動運転であればヒューマンエラーによる自動車事故も減少するとUberも述べているように、運転手が疲れているので運転できないという状況はなくなる。また人件費もかからなくなるので、物流コストや輸送コストの減少も期待できる。今までは行けなかった場所にも自動運転で行けるようになる。また「タクシーは高いからやめよう」と思っている人も気軽にタクシーでの移動ができるようになるだろう。また海外でタクシーに乗ってぼったくられるという心配もなくなるかもしれない。自動運転車が心配な人は運転手が運転する自動車に乗れば良い。他にもドライバー向けの深夜もやっている店の営業や自動車運転時の保険、自動車製造と販売など、運転に関連する周辺事業にも影響を与える。

変わる社会と産業構造

そしてそのような運転手がいらない社会が到来すると、運転手という職種に就く人も世界規模で大幅に減少していくことが想定される。かつて自動車が登場した時に、それまでの移送手段だった馬車に携わっていた運転手(御者)や馬車作りなど関連する仕事がなくなり、新たな仕事に就かざるを得なかった。自動運転車の登場によって同じことが起きるだろう。

これから将来、自動運転車が主流になると、今まで運転という仕事に携わっていた職種は大幅に減少していくだろうし、産業構造も社会も大きく変わっていく。そしてUberは2020年には自動運転の実用化を目指している。まだガイドラインの制定など法制面の整備や更なる開発や運用体制など実用化に向けては多くの取組みも必要だろうが、決して遠い未来の夢物語ではないのだろう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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