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豪シドニーでも「歩きスマホ」対策として道路に埋込み信号灯:これからの信号機の標準になるのか?

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

日本だけでなく世界各地で「歩きスマホ」による交通事故や衝突による怪我やトラブルが後を絶たない。歩きながらスマホを見ているため、視線も神経もスマホに集中していて、周囲に気が付きにくいから、自動車や歩行者と衝突してしまう。自動車や路面電車(トラム)と衝突したら死亡事故につながってしまい、実際に世界中で問題になっている。

ドイツでは既に「歩きスマホ」歩行者向けに道路に信号灯を埋込み

ドイツのバイエルン州のアウクスブルクでは2016年4月に、「歩きスマホ」歩行者のトラムへの接触防止を防ぐために、スマホに神経を向けて下を見てても、視界に入るように信号灯を道路に埋め込んだ。まずは試験的な取組みとのことだが「信号灯が赤であれば止まれ」とわかるので、「歩きスマホ」をしてても止まらなくてはならないとわかる。

いくら注意しても誰も「歩きスマホ」をやめないし、事故も減らないので、もはや発想の逆転である。ここまでやらないと「歩きスマホ」の事故はなくならないのだろう。

路面に埋め込まれた信号と通常の信号が混在(ドイツ)
路面に埋め込まれた信号と通常の信号が混在(ドイツ)
ドイツで試験導入された路面の信号灯。これからの世界標準?
ドイツで試験導入された路面の信号灯。これからの世界標準?

オーストラリアのシドニーでも「歩きスマホ」歩行者向けに道路に信号灯を埋込み

そしてオーストラリアのニューサウスウェールズ州のシドニーでも2016年6月に「歩きスマホ」対策に向けて道路に信号灯の埋込みのトライアルを実施することが明らかになった。トライアルはニューサウスウェールズ州が主導してシドニーの5か所で2016年12月から実施される予定。トライアルには、道路への信号灯埋め込み費用など25万オーストラリアドル(約2,000万円)投資する。ニューサウスウェールズ州では2015年には61人の歩行者が死亡し、2014年の2倍だった。

道路に信号灯埋込みが標準になるのか

「歩きスマホ」は視界が狭くなり、かつ神経がスマホに集中しているため、周囲での危機を察知してからの対応が遅くなるので非常に危険である。「歩きスマホ」はやらないのが一番安全である。ましてイヤホンをつけての「歩きスマホ」は、耳はイヤホン、目はスマホへ神経が集中しているので、目の前で起きている危機への対応ができなくなるので、一番危険である。「歩きスマホ」が危険なことを理解しておりながらも、世界的に「歩きスマホ」は減少するどころか、増加しており、それに伴う事故やトラブルも多発している。

ドイツだけでなくオーストラリアでも「歩きスマホ」歩行者のために、道路に信号灯を埋め込んで安全を確保しようとしている。これから世界中の道路では通常の信号機の他に、道路には「歩きスマホ」歩行者向けに信号灯が埋め込まれるのが標準になるかもしれない。

信号機が道路に埋め込まれていれば「歩きスマホ」をしていても、道路に埋め込まれた信号に気が付いてで立ち止まることができるようになり交通事故は減少するかもしれない。しかし、それ以外の道路や駅などでは「歩きスマホ」による衝突やトラブル、事故の危険は変わらない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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