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Facebook「自殺防止ツール」を全世界で展開:自殺につながるような投稿への対応も重要に

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Facebookは2016年6月14日、自殺防止ツールを全世界で展開していくことを発表した。Facebookはアメリカでは2011年から「National Suicide Prevention Lifeline」と提携したり、2015年にはForefrontやSave.orgなどと提携して自殺防止ツールを提供してきた。今後はFacebookを提供している国においても、現地のパートナーとともに自殺防止ツールを展開していく。

全世界で毎年80万人以上が自殺

世界中のFacebook利用者が自殺や自傷を示唆するような投稿があった場合にホットラインに報告できるようになったり、ヘルプセンターでは自殺・自傷を考えているユーザーに対する対処法やノウハウが公開されている。またFacebookでは専門チームを設置して24時間対応できるようになる。ヘルプセンターは日本語化されているが、日本のホットラインの連絡先は2016年6月17日時点では「TELL Tokyo English Lifeline」へのリンクされている。ヘルプセンターでは「誰か信頼できる人に相談する」や「一息入れて、好きなことや自分に自信が持てることをする」などのアドバイスも書かれている。

警察庁によると日本では6年連続で自殺者は減少しているが、それでも2015年には1年間で23,971人が自殺している(内訳は男性が16,641人、女性が7,330人)。全世界ではWHO(世界保健機関)の調査によると、少し古いが2012年には80万人以上が自殺したと発表している。これは40秒ごとに1人の割合のようだ。自殺者が多いのはインド約258,075人、中国約120,730人、アメリカ43,361人、ロシア31,997人、日本29,442人、韓国17,908人、パキスタン13,377人と続いていた。

ネットにはいじめ、自殺につながる投稿も

Facebookは全世界で毎月16億人以上が利用している。世界規模でのスマホの急速な普及でモバイルでの利用も多く、世界中で老若男女に利用されている。中国ではFacebookは利用できないが、中国以外のほぼ全ての国でのコミュニケーションのプラットフォームとなっており、ニュースやお店のクーポン、情報などはFacebookで入手するという人が非常に多い。スマホで「とりあえずアクセスするのがFacebook」という人が多く、まさに世界中の人にとって「Facebookはスマホでのポータル」になっている。そのFacebookが「自殺防止ツール」を提供することによって自殺防止の一助になることが期待されている。

FacebookやTwitterのようなSNSには誰もがどのようなコンテンツでもアップできる。通報があれば削除されるが、一度インターネットにアップされてしまった情報はあっという間に拡散されてしまう。特にFacebookのようなSNSはシェアや「いいね」で友人や知人などへの拡散は速い。日本でも「ネットいじめ」という言葉が登場して長いが、ネットでの「言葉の暴力」が散乱している。また勝手にアップされた写真で苦しんでいる人も日本や世界中にたくさんいる。アメリカでは2013年にレイプされた15歳の少女の写真がネットに投稿されてしまい、それを苦に少女はFacebookに「もう生きていけない」とメッセージを残して自殺してしまった。

Facebookは自殺防止ツールを全世界で展開しようとしている。そこでは自殺をほのめかすような投稿をしている人を助けるノウハウやヘルプセンターを提供している。しかし自殺につながるような投稿への対応もそれと同時に重要になっている。自殺につながるようなネットでのいじめや投稿への対策はアメリカや日本だけでなく世界規模での課題であり、Facebookだけで解決できる問題ではない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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